無料記事)株式投資は企業の応援にならない? 投資のススメ⑥
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と言ってもね。埋めたリンクは踏まれないわけですよ、ええ。
なので、ちょっと要約しつつ、引用します。
こんな感じです。シリーズの見出しだけ並べておきます。
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②平均値のワナ
③富はバカみたいに偏る
④20万円のスマホは高いか
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今回は予告通り、上の引用で太線にした「『投資で企業を応援』なんて欺瞞」がテーマです。
「株式投資は企業の応援になんてならない」問題
本題に入ります。
この主張、簡単にまとめるとこういう理屈ですよね。
投資を始めたAさんが「応援するぞ!」とトヨタ自動車株を買う。
でも、その株は前からトヨタ株を持ってたBさんから買っている。
Aさんがいくらで買おうと、トヨタには1円も入らない。
そもそもトヨタはウン兆円のキャッシュを持っているから、資金需要などない。
この仕組みは他の銘柄でも同じで、例外は新しい株式を発行する形の資金調達(エクイティ・ファイナンスといいます)だけ。
2023年のエクイティの調達額は年間1兆3000億円くらい。
一方、東証プライム市場の株式売買代金は年間940兆円くらい。
つまり株式市場は、メルカリみたいに株式を転売しあっているだけ。
あなたの「応援するぞ!」は、企業には届かない。
えーっと。
「これ、本当に説明しないと、ダメ?」という気分ですが、順番に。
まず、この構図というか、お金の流れは、合ってます。
変なのは、結論というか、評価の部分ですね。
あなたがトヨタの株を買うことは、トヨタの応援にちゃんとなります。
なぜなら、あなたの「買い」は(ほんのちょっとでしょうが)トヨタの株価を押し上げるからです。株価が下がるのにブレーキをかける、と言ってもいい。
株価は大事
そうすると、はい、こう反論されますよね。
「トヨタの株価が上がっても、トヨタには1円も入らない」
これも、合ってます。お金の流れは。でも、また、評価がおかしい。
株価が高いことは、企業に明確にメリットがあります。
分かりやすいのは、エクイティ・ファイナンス。株価が高いときにやると、お金をたくさん調達できる。
そうすると、はい、こう反論されますよね。
「トヨタはキャッシュが山ほどあるから、調達ニーズはない」
そうかもしれません。
たとえそうだとしても、「応援!」のおかげでちょっと高めにキープできることは、メリットがある。
たとえば、M&A。企業買収。
極端なケースを考えると分かりやすいです。
トヨタの時価総額(全株買ったらいくらか=トヨタの値段)は今、52兆円くらいです。増えたなー。前は30兆円ってイメージがあったな。
さて、それが仮に1兆円になったら、どうなりますか。秒で誰かが買い占めますよね。壮絶な買収合戦が始まるのは必至。
逆に時価総額が5000兆円だったら、どうか。GAFAMを全部買収して、ついでに日本の全上場企業も傘下に収められそう。全部トヨタグループ。実際にはいろいろあって難しいのは承知の助。思考実験ですからね。
株式は「買収通貨」でもあるので、株価の高い・安いは、M&A市場での攻守両面に影響するわけです。
いまどき買収がきわめて大事な成長戦略のパーツなのは説明不要ですよね。
ついでに付け足すと。
ストックオプションみたいな株価連動型の報酬体系を入れている企業だと、株価が上がれば社員のモチベも上がります。やりすぎで意味不明な高報酬になるのは別の問題。
借金する時の信用にもプラスですね。平時はそんなのはレアケースですけど、株価が下がると信用不安になって銀行がお金を貸してくれない、なんてのは1990年代後半から2000年代前半の不良債権グズグズ時代には普通にありました。
株式投資はただの転売?
次は「ただの転売じゃん」について。
まず、はい、その通りです。
だって、それが流通市場(セカンダリーマーケット)の機能ですから。
これがなかったら、普通の人は株式投資なんてできないですよね。買えないし、無理して買っても換金できない。
株式市場での売買のしやすさを「流動性」と呼びます。売買が活発だと「流動性が高い」、あまり売り買いがないと「流動性が低い」といいます。
あなたがトヨタ株を買うことは、2つの面で流動性に影響を与えて、トヨタを応援することにつながります。
まず「買い手」になること。
当然、向こう側には「売り手」がいる。あなたは売りたい人の相手になってあげた、つまり流動性をつけてあげたわけです。
その結果はちゃんと売買高として記録される。「トヨタの株は流動性があるな」と認識される。
一般に、流動性が高い株式ほど、ちゃんとした株価が付きます。流動性が低いと、思った価格で換金できないリスクが高まるので、それだけで株価は割り引かれるから。
2番目は、これが大きいのですが、「応援団」として安定株主になることで、株価が高く維持されやすくなります。流動性が下がるほど売りが出ないのは困りますが、「そうそう売りを出さない株主がいる」は株価にプラスです。株式市場の需給で株価は決まりますからね。
投資は「売り」「買い」に目が向かいがちですけど、一番期間が長いアクションは「保有」です。ただ、持っている。
そんな「ただ、持っている」投資家の層が分厚くなれば、なかなか売りが出てこないから、株価は高くなりやすい。
あなたが長期で株式を保有するのは、ちゃんと企業の応援になる。
「投資に参加する」ことの意味
もういいかな、とも思いますが、こんな反論が残っているかもしれません。
「応援って言ってもせいぜい老後の備えなんだからいつか売るでしょ?」
うん、そうでしょうね。孫子の代に残す余裕がなければ。
疲れてきたし、「だから、何?」で終わらせたいけど、丁寧に書きます。
5年後か、10年後か、30年後か、半世紀後か。
いつかはわかりませんけど、応援している株を売る時が来るかもしれない。
でも、その投資期間の間、ここまでに書いたような「持って応援」を続けた事実は変わりありません。
そして、あなたが売った株は、誰かが買います。
その誰かは、新しい世代の「トヨタを応援しよう」な投資家かもしれない。そうじゃないかもしれないけど、そうかもしれない。
何が言いたいかと言うと、投資家って王蟲みたいなもんなんです。
全にして個、個にして全。
個々の投資家は孤立しているようでいて、全部、繋がっている。
意味不明ですね、すいません。
これは私のイメージなんですが、「投資」という行為は、市場経済の中で投資マネーを回すという営みに参加することです。
王蟲みたいに綺麗に意思統一はできていない。というか、するべきではない。個々の多様な欲望と思惑が「見えざる手」を駆動するエネルギーだから、モノカルチャーはよろしくない。みんな違って、みんないい。
でも「投資というゲームに参加した方が自分の人生も世の中もうまく回りそうだ」という共通認識は、ある。はず。
すべての市場参加者がそうだ、とは言いませんし、そうであるべきでもない。一山当ててやるぜ、という人もいないと、マーケットは回らない。
そんな中で、あなたは「この会社を応援しよう」と選択をする。
あるいは愛想が尽きて、別の会社に乗り換えることだってある。
でも「投資」という共同作業の中には、自分のお金をとどめる。
王蟲の一頭であることは、やめない。
そして、いつか年を取り、そこからお金を引き出す日がくる。
その時、長年、投資という人類共同プロジェクトに貢献した報酬=リターンを受け取る。
そのリターンを使って、余生を送り、いつかこの世を去る。
でも、その後も、マーケットは残り、強い企業も残り、投資という営みは次の世代に引き継がれる。
ちょっと綺麗ごと過ぎますかね。
でも、そういうことだと思いますよ。
人間は死ぬけど、企業と「バトンをつなぐ株主」は死なない。
ちょっと飛躍しますが、だから、インデックス投資だって「応援」になるんです。個別株投資とは役割は違います。でも、それは王蟲としての任務を果たしている。
この問題は一度、ファイナルアンサーを書いておきたかったので、スッキリしました。みなさんもスッキリしたかは不明ですが。
スッキリしたか不明なのに、厚かましいお願いを最後に。
オススメ&拡散、よろしくお願いします!
次回は最後に書いた「インデックス投資と王蟲」について書きます。
乞うご期待!
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