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Amazonとメルカリの「見えざる手」で、本は浮世を駆け巡る

価格は、需要と供給のバランスで決まる。
そんな市場原理の基礎と、その先に見える「本は天下の回りモノ」という現実について、つらつらと。

まずはこちらを。

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200円割れから700円超えまで、ビットコインのごとく乱高下を繰り返す、ボロ株のようなチャート、何を隠そう、『おカネの教室』の中古価格の軌跡である。
Chromeの拡張機能keepaで誰でも見られます。

発売以来だと、右肩下がりでさらにボロ株感が高まる。

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株ならPBRが余裕で1倍を割り込んでいそうなチャートだ。
オレンジの線は「新品定価」で、発売半年ぐらいでこれを超える「上ヒゲ」があるのは、Amazon総合1位に躍り出る騒動で一時的に在庫が払底したため。

さてここで、Amazonのトップ画面の価格部分を見てみよう。

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単行本定価の下に「¥672円より70中古品」とある。
keepaのチャートは、ここに表示される出品中の中古の「最低価格」を拾うらしい。チャートを再掲する。

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「中古の値段って、需要と供給で乱高下するんだな」という解釈は、部分的には正しい。

でも、実態はもうちょっと複雑で、面白い。

こちらをご覧ください。

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これはトップ画面から「中古品」をクリックして開く画面だ。
安い順にソートしてあるのに、「最安値」は672円ではない。
この表は「送料込み」の順番に並んでいるのだ。
計算してみると、上から4つはすべて総額972円で横並びだ。
「同一価格なら届くのが早い方が上にくる」という並べ方になっているようだ。
5番目以降もおおむね1000円前後の値がついている。

ここから分かるのは、価格の収斂という市場機能の一面だ。
出品者は「相場」を見て『おカネの教室』の価格を決めているのだろう。

この送料込みベースの中古価格は、発売当初は1300~1400円くらいだった。
3年たって1000円程度ってのは我ながら立派なものだと思うが、そのキープ力の一因は「爆発的に売れていない」からだろう。
5万部程度では、出品が爆発的に増えないのだ。
超がつくようなベストセラーは3~5年もすれば「1円」に張り付く。
一方、送料はたいてい300円程度かかるので、そうなると「本を買う」というよりも「本を送ってもらう」のにお金を払う状態になる。

チャートを再々掲します。

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このチャートで「200円」といった安値を付けているときに出品リストを見てみると、「本体200円+送料500円」で出来上がり700円ぐらいが相場になっている。
そんな「レンジの下限」あたりに価格が下がっている間は、この赤丸の数字、中古の出品数が跳ね上がる。

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『おカネの教室』の場合、出品数は70~80が平常値で、50~60だと少なめ。100を超えたことはほぼない。
出品数が90に接近するにつれ、500円、300円、200円とチャートが切り下がっていく。

この「出品数&中古価格」と、Amazonランキングの間には、ゆるい逆相関関係がある。
『おカネの教室』の最近の順位はおおむね7000~2万位くらい。
出品数が減ると5000位くらいまで上がり、低価格の出品が増えると3万位くらいに下がる。とてもわかりやすい。

日々、エゴサするたびに、「ちゃんと市場原理が働いていることだなぁ」と感心するとともに、その裏の「本は天下の回りモノ」的な世界を想像して、喜んでいる。

今のランキングの位置取りだと、新品の『おカネの教室』は、Amazonで1日1冊売れるかどうか、といった感じだろうと思う。
調子が良いと1日数冊売れて、ひょいっと順位が上がる。

出品数の増減から推察するに、中古はその数倍の「動き」があるはずだ。
たまに見ると、メルカリでもよく動いている。

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価格帯はAmazonとあまり変わらない。ちゃんと裁定が働いている。

中古が売れても当然、印税は入ってこないけれど、私はこの投稿で書いたような考えの持ち主なので、「ぐるぐる回ってるなー」と嬉しくなる。

新品の販売だけじゃなく、中古市場の「見えざる手」で、本はちゃんと読みたい人のところに届く。
気に入ってもらえれば「そこ」にとどまり、そうでなければ、「次の人」のところに流れていく。

大変結構なことだな、と思うわけです。

追記(2022年8月)
最近、「ほぼ日」で露出が増えたおかげで『おカネの教室』の中古在庫がけっこう動いた。
中古の出品数が70ぐらいから30程度まで減少。3年目で1000円程度だった「送料込み中古価格」は1200~1300円程度まで戻っている。下のグラフの通り、5年目にしてなかなかの持ち直し。
グルグル回ってます。愉快です。

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