小さなティール 組織 〜贈りあいと共感でなりたつチームの作り方(最終回)
刃を研ぐ – 立ち止まってふりかえる
全6回に分けて投稿を予定している、会社や地域の中のあなたの小さなチームにおける地に足のついた運営論としての「ティール 組織」のお話。最終回の第六回目では、ティール 組織が正しく導入されているかどうかを定期的に自己確認するための問いを取り扱います。感想お待ちしています。
導入は穏健に行なわれているだろうか
ティール組織が、会社や組織、人の批判・評論の道具にならないように願っています。「ありのままの他者」を受け入れていくことは、「ありのままを自分」を受け入れていくことにつながるのです。チームの外部秩序を尊重して受け入れ、個人として結果を出すことであなたの影響力を広げてください。そして、縁あってチームを委ねられた時に、あなたのやれる範囲で本手引きを活用して、導入を行なってください。とある高校の若き先生(廃校予定の公立高校です)にこの手引きを見せた時に、「これは学校の先生たちのチームがやっていることそのものだ。自分の学校のことだと思った」と言われました。このようにティール組織の芽は、伝統的組織の中にこそ眠っていることが多いのです。
レジリエンス(回復力)は育まれているだろうか
ティール組織では、マニュアルや手順に頼る代わりに、互いに関係するメンバの仕事を理解しあっておくことによって、場合によっては突然発生するチームメンバの増減に備えます。明確なゴールをリーダが設定しないために、各自が内的な動機づけを持って効果的に創造性を発揮するには、現在の状況をある程度、肌で感じられるようにしておく必要があります(無論、先が見通せるかどうかは各メンバの状況によって差があり、欠けた部分は互いの信頼関係を醸成することで補っていきますが、限度があります)。このように、ティール組織では、いままでのやり方が解決していた問題を他の方法で解決できるようにしてありますが、自分のチームの状況でそれが有効に機能するか確かめる事は大切です。
安心が育まれているだろうか
すでに論じているように、効果的なチームに欠かせない要素がありのままの自分の状態を率直にリーダや他のメンバに打ち明けることができる心理的な安心感です。ティール組織であるかどうかよりも、心理的な安心感が実際にあるかどうかに、チームの成功がかかっています。心理的安心感を醸成するためのリソースを用いるなどして、実態として心理的な安心感がチームの中に育まれているかどうかをよく確認するようにしましょう。ティール組織のやり方を導入したからといって、安心してよく話し合える関係になれるわけではありません。安心してよく話し合える風土を醸成するためには、リーダーはもちろんのこと、全メンバの献身的な貢献と勇気が欠かせません。
高い責任感が育まれているだろうか
心理的な安心を前提に、効果的なチームに欠かせない要素が、メンバ一人ひとりが持つプロジェクトに対する高い責任感です。しかし、心理的な安心がなければ、高い責任感は大きな不安となってメンバを恐縮させてしまうだけです。実現するのが難しい難題やワクワクするような夢に対して、メンバが不安感を抱くことなく、楽しんで語り合い、取り組むことができているでしょうか。取り組むべき課題が多すぎても、チームの心が発散してしまうようです。ともに困る中で課題を絞り込み、メンバの気持ちがフォーカスできるようにすることも重要です。難題や夢に対して積極的に参加したいと思うような、貢献感や自分自身にとっての意義を各メンバが感じているかどうかも確認するとよいでしょう。
効果的かつ定期的に省察できているだろうか
今まで述べてきたような確認や探求のための時間を、時々振り返ってそれぞれのメンバが取ることは大切なことです。表面的な1時間程度のふりかえりではなく、時には2、3日かけたチーム全員参加のふりかえりが意味を持つこともあるかもしれません。週に1日はゆっくりと一人で考え事をする日だと定めている事例もあります。じっくり共感することと同じように、チーム全体ではなく、必要なメンバで集まっての振り返りも効果的でしょう。じっくり深く話せるのは通常2、3人での対話だからです。チームの実情にそった、ふりかえりの頻度と長さ、単位や内容を、試行錯誤を経て、経験の中から調整できるようになっていくとよいでしょう。
勇気や愛情、親切や喜びが育まれているだろうか。
勇気や愛情、親切や喜びといった要素は職場でだけでなく、友人同士や家族同士でさえ、語り合うのが難しい話題です。けれども、述べてきた通り、勇気や愛情、親切や喜びこそがチームが効果的に機能するための鍵なのです。温かな雰囲気を醸成し、ありのままの自分やメンバを受け入れあうことで心理的な安心感を育みあうために。そして、高い責任感を持ちながらも、失敗を笑い合って幸せに働くことのできる自由で創造的なチームづくりのために。直接、語りあわずとも、重要なのが当然であるとの気づきや感覚をチームの中で育んでいけるようにありたいものです。魅力的なチームが生まれ、原体験が共有されることで、長い時間をかけ、いつしか大きな調和とやさしさが世界に広がることでしょう。
後記
愛とは、なんでしょうか。信じること、見守ること、寛容。親切。私は「ともに弱くされる」という言葉が好きです。ともに弱くされ、それでも、自分の本分を全うしようとする人の不器用さや無様さ、挫折や苦悩、怒りや悲しみ、絶望そして祈り。それは本当に美しくて人に勇気と暖かさを与えてくれます。「ともに弱くされる」ということは、「ともになんとか辻褄を合わせていこう」ということです。ありのままの私たちをなんとかやりくりして。本当の「いかしあうつながり」というのは、たぶん、そうやってできてくるのだと思います。
人や人と人との間にある問題を解決しようとしないことも大切かもしれません。解決する事でなく、問題だらけであることを順調だと考えて、苦労を粗末にせずに問題を味わう姿勢が大切なのかもしれません。「べてるの家」の書籍群はきっとティール組織の考え方を補完してくれるでしょう。私自身はクリスチャンであることに随分と助けられました。
「ティール組織」は、技術であって、あなたの愛の代わりになってくれるものではありません。苦労もなくなることはないでしょう。それでも、あなたのチームの苦労の質をよりよいものにしてくれるための助けにはなってくれると考えています。共に深めていきましょう。あなたのフィードバックをお待ちしています。
挿絵の引用元: