【ダイエット薬ではない!】防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)は虚弱な人に使うとヤバい!

防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)は、体内にこもった熱や毒素を排出し、汗をかかせたり便を通じて熱を下すために用いられる漢方薬です。この処方は、脾肺実熱証と呼ばれる、脾臓や肺に実熱(過剰な熱)がこもっている状態に使用します。主に便秘やむくみを伴う肥満、皮膚疾患などに適応されますが、非常に強力な薬であり、実証の方(体力があり、熱や余分なものが体にこもっている状態)のみに使用され、虚証の方(体力が弱く、冷えや不足がある状態)には適しません。

防風通聖散の構成生薬とその作用・科名

  1. 発汗・解表作用の生薬

    • 防風(ぼうふう): セリ科
      → 発汗を促し、風寒を発散させます。外部からの邪気を体外に追い出す役割があります。

    • 荊芥(けいがい): シソ科
      → 発汗・解表作用を持ち、風寒や風熱を取り除きます。

    • 麻黄(まおう): マオウ科
      → 強力な発汗作用があり、体内の水分や熱を汗として排出します。喘息や咳にも有効です。

    • 生姜(しょうきょう): ショウガ科
      → 体を温め、発汗を促進します。胃腸を温め、消化を助ける働きもあります。

    • 薄荷(はっか): シソ科
      → 清涼感を与え、発汗を助けます。また、精神を安定させる作用もあります。

    • 連翹(れんぎょう): モクセイ科
      → 解毒作用があり、炎症を抑えるのに有効です。

  2. 清熱・解毒作用の生薬

    • 山梔子(さんしし): アカネ科
      → 熱を冷まし、肝臓の炎症を鎮めます。尿を促して毒素を排出します。

    • 黄芩(おうごん): シソ科
      → 強力な清熱作用を持ち、炎症や感染を鎮めます。特に肺や胃の熱を取るのに効果があります。

    • 石膏(せっこう): 鉱物(硫酸カルシウム)
      → 強力な清熱作用があり、熱を冷まし、喉の腫れや痛みを和らげます。

    • 桔梗(ききょう): キキョウ科
      → 咳を鎮め、痰を除去します。喉の炎症を和らげる作用もあります。

  3. 活血作用の生薬

    • 当帰(とうき): セリ科
      → 血の流れを良くし、血行を促進します。特に女性の健康に効果的です。

    • 川芎(せんきゅう): セリ科
      → 血行を良くし、痛みを和らげます。頭痛や生理不順に用いられます。

    • 芍薬(しゃくやく): ボタン科
      → 血を補い、筋肉のけいれんを抑えます。血行を良くし、痛みを和らげます。

  4. 利水作用の生薬

    • 白朮(びゃくじゅつ): キク科
      → 水分代謝を改善し、むくみを取ります。胃腸を元気にする作用もあります。

    • 滑石(かっせき): 鉱物(含水ケイ酸マグネシウム)
      → 利尿作用があり、体内の余分な水分を排出します。熱を冷ます効果もあります。

  5. 瀉下作用の生薬

    • 大黄(だいおう): タデ科
      → 強力な下剤作用があり、腸を刺激して便通を促します。熱を冷まし、解毒作用もあります。

    • 芒硝(ぼうしょう): 鉱物(硫酸ナトリウム)
      → 便を柔らかくし、下剤として作用します。便秘を解消し、体内の毒素を排出します。

  6. 緩和作用の生薬

    • 甘草(かんぞう): マメ科
      → 他の生薬の作用を調和し、副作用を和らげます。特に、大黄や芒硝による腹痛を軽減します。

防風通聖散の主な作用と効果

  1. 発汗・解表作用
    麻黄、防風、生姜などが体を温めて発汗を促し、外邪を体外に排出します。これにより、体内の余分な熱が取り除かれます。冷えからくる風邪や、熱がこもった状態を改善します。

  2. 清熱・解毒作用
    山梔子、黄芩、石膏などが体内の熱を鎮め、炎症を抑えます。これらは、特に体内の臓器にこもった熱を冷ますのに効果的です。皮膚の炎症や腫れにも有効です。

  3. 活血作用
    当帰、川芎、芍薬が血液の流れを良くし、滞った血を巡らせます。これにより、体の各部分への血液供給が改善されます。女性の健康や、血行不良が原因の症状に用いられます。

  4. 利水作用
    白朮、滑石が体内の余分な水分を排出し、むくみを解消します。これらは水分代謝を整えるため、体が軽く感じられるようになります。

  5. 瀉下作用
    大黄、芒硝が腸の働きを促進し、便通をスムーズにします。体内に溜まった熱や毒素を便として排出し、体を浄化します。

  6. 緩和作用
    甘草が全体のバランスを取り、他の生薬の強い作用を和らげます。大黄や芒硝による胃腸の負担を軽減し、穏やかに作用します。

適応症と具体的な使用例

  1. 便秘を伴う実熱症: 防風通聖散は、体内に熱がこもり便秘がちで、体が重だるい場合に効果を発揮します。特に、汗が出にくくて体の中に熱が溜まっているときに使用されます。

  2. むくみと肥満: 水分代謝が悪く、むくみがある場合にも使用されます。むくみを解消し、体内の老廃物を排出することで、スッキリとした感覚を得られます。肥満に対する使用は、実熱による体重増加に限られます。

  3. 皮膚疾患: 熱や炎症による皮膚トラブル(ニキビや湿疹など)にも効果があります。体内の熱毒を排出し、皮膚の炎症を鎮めます。

使用上の注意とアドバイス

  1. 虚証の方には不適: 防風通聖散は非常に強い薬なので、体力がない方、冷え性の方、胃腸が弱い方には適していません。これらの方が使用すると、体力を消耗し、逆に症状が悪化する可能性があります。

  2. 陽虚の方は要注意: 冷えがある陽虚体質の人が使用すると、体がさらに冷えてしまい、体調を崩すことがあります。実熱が原因でない場合は使用を避けてください。

  3. 短期使用が基本: 防風通聖散は、便秘や熱を取り除くための即効性のある薬ですので、長期間の使用は避けましょう。長期使用は胃腸に負担をかける可能性があります。

  4. 肥満薬としての使用に注意: 一部ではダイエット薬として使われることがありますが、体質に合わない場合は健康を害することがあります。特に虚弱体質の方が使用するのは危険です。

防風通聖散の使用のポイント

  • 肥満や便秘に効果があるが、慎重に使用すること

  • 体力がある実証の人にのみ適用

  • 体が冷えている場合は使用しない

防風通聖散は、体内にこもった余分な熱や毒素をしっかりと排出することで症状を改善する強力な漢方薬ですが、使用には十分な注意が必要です。適切に使えば非常に効果的ですが、不適切に使うと体調を崩す恐れがあります。
※ダイエット薬として販売している医者がいますが、非常にグレーだと個人的には感じております。

いいなと思ったら応援しよう!