【事例】貧血で氷をぼりぼり食べる事象
こちらは下記のツイートを参考に記事を書きました。
子供がやたら氷を食べる。毎日ボリボリ食う。頭痛と目眩を訴えるし貧血では?と血液検査したらかなり重度の貧血と判明。現在、鉄剤を毎日飲んでいて数値もよくなりつつあるんだけど気がついたら氷をまったく食べなくなってた。氷をやたら食う=貧血、は迷信かと思ってたけど案外真実なのかもしれない。
— 深爪 (@fukazume_taro) December 21, 2024
このツイートに関連する「氷を欲すること」と「貧血(中医学では血虚と関連)」について解説します。
1. 氷を欲する現象の背景
この現象は、西洋医学では「異食症(pica)」の一種として知られています。特に貧血、特に鉄欠乏性貧血が関与する場合、氷を欲する傾向が見られることが多いです。鉄欠乏性貧血の患者が氷を食べたがる理由について、次の仮説が挙げられています:
鉄欠乏が神経伝達や感覚の異常を引き起こす:鉄の欠乏が舌や口腔の感覚異常(灼熱感や痛み)を引き起こし、冷たい氷が一時的にそれを和らげる。
精神的な満足感:氷を食べることでストレス軽減や注意の集中感が得られる場合があります。
2. 中医学の視点で考える
中医学では、「氷を欲する」という現象を以下のように解釈できます:
血虚の基本
血虚(中医学での貧血に相当)は、血液が不足し、臓腑や組織への栄養供給が足りなくなる状態です。
血虚では、「熱の感覚」が現れることがあります。この熱は必ずしも全身的なものではなく、「虚熱(体が弱り、熱っぽく感じる)」のような状態を指します。
氷を欲する理由
虚熱の鎮静
血虚により、肝血(肝の機能を支える血液)が不足すると、肝陽が過剰に昂ぶる傾向があります。これにより熱っぽさや頭痛、めまいなどの症状が出やすくなり、冷たいものを欲することで虚熱を抑えようとします。
胃熱の関連
氷を欲するのは、中焦(消化器系)の熱が絡む場合もあります。血虚によって胃陰(胃の津液)が不足し、内熱が生じると、冷たいもので熱を冷まそうとする行動が出ます。
脾の弱り(脾虚)と冷えへの対処
血虚の背景にはしばしば脾虚(消化吸収の低下)があり、脾胃の働きが弱いと内熱が生じることがあります。この内熱を冷やすため、氷を欲する場合があります。
3. 氷を食べなくなる理由
鉄剤などで貧血(血虚)が改善すると、血液の巡りや臓腑のバランスが回復し、虚熱が収まります。その結果、体が氷を求める必要がなくなります。
4. 中医学の治療アプローチ
もしこのような患者が中医学的治療を希望する場合、次のような治療方針が考えられます:
血を補う:四物湯や帰脾湯など、補血を目的とした処方を用いる。
脾を補う:健脾薬を併用し、消化吸収機能を整える。
陰を養う:陰虚熱を抑える処方(例:六味地黄丸)を組み合わせる。
まとめ
氷を欲する理由は、中医学的には「血虚に伴う虚熱」を冷やそうとする身体の自然な反応として解釈できます。血液が補われることでバランスが整い、症状が消失する点は、中医学と西洋医学が一致する興味深い現象と言えるでしょう。