【生理の体調不良改善】中医婦人科学
月経周期は、女性の体調やホルモンバランスに深く関わり、月経期、卵胞期、排卵期、黄体期という4つの時期に分かれます。それぞれの時期には特有のトラブルが発生することがあり、適切な養生や治療が求められます。
1. 月経期の特徴と対処法
月経期は、月経が始まる日から数日間続き、子宮内膜が剥がれ落ちることで経血として体外に排出されます。この期間に起こりやすいトラブルとして、月経痛、子宮周辺の炎症、吐き気や眠気などが挙げられます。
月経痛
月経痛は多くの女性が抱える悩みで、程度は人それぞれ異なりますが、激しい痛みがある場合は日常生活にも支障をきたします。痛みの原因は様々で、例えば気の流れが滞っていることや体の冷えが関与しています。気が滞ることで痛みが生じるケースでは、気を巡らせて滞りを取り除くための漢方や適切なマッサージが推奨されることが多いです。また、体が冷えることで血流が悪くなり、痛みが増す場合には、体を温めることや温性の食材、薬草が効果的とされています。
子宮周辺の炎症
月経期にはホルモン変化が生じるため、免疫力が低下する傾向があります。そのため、感染症にかかりやすくなり、膣炎やカンジダ感染が見られることもあります。特に月経前後にかゆみを感じる場合は、膣の健康を保つための対策が求められます。漢方では、炎症を取り除くための処方が豊富に用意されており、具体的には「竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)」などが代表的です。竜胆瀉肝湯は、体内の湿熱を取り除き、痰の排出を促す働きがあり、炎症を鎮める効果が期待されています。
免疫力向上のための補助
月経期の免疫低下には「衛益顆粒(えいえきかりゅう)」と呼ばれる漢方も活用されます。この製剤にはシベリア霊芝などの成分が含まれ、免疫力をサポートして病原菌から体を守る助けをします。
2. 卵胞期の特徴と対処法
卵胞期は、月経が終了してから排卵までの期間を指します。エストロゲン(卵胞ホルモン)が多く分泌され、卵胞が育っていく大切な時期であり、一般的に女性が最も体調の良いとされる時期です。この時期は、ホルモンバランスが整っているため、心身ともに安定しやすく、トラブルが少ないと考えられます。また、新陳代謝が活発になり、肌の調子も良くなる傾向があります。この時期を活かして、栄養バランスの取れた食事を心がけたり、適度な運動やリラックスを楽しんだりすることで、心身の調子を整えると良いでしょう。
3. 排卵期の特徴と対処法
排卵期は、卵胞ホルモン(エストロゲン)がピークを迎え、脳から排卵を促すホルモンが分泌され、卵子が排出される時期です。排卵期に見られるトラブルには、排卵痛や排卵出血が含まれます。
排卵痛
排卵痛は、卵子が卵巣から飛び出す際に卵巣膜が刺激されることで生じる痛みです。通常は軽い痛みに留まりますが、人によっては強い痛みを感じることもあります。排卵痛が気になる場合には、安静にすることが効果的であり、また、温かい飲み物やハーブティーを摂ることで体をリラックスさせると良いでしょう。
排卵出血
一部の女性は、排卵期に少量の出血を経験することがあります。排卵によってホルモンの急激な変化が起こり、出血が見られることがあるため、少量であれば大きな問題にはなりませんが、出血量が多い場合や頻繁に起こる場合は医師の診断を受けることが望ましいです。
4. 黄体期の特徴と対処法
黄体期は、排卵後から次の月経が始まるまでの期間で、黄体ホルモン(プロゲステロン)が多く分泌される時期です。このホルモンは体温を上げる作用があり、基礎体温が高温期に入ることで知られています。この時期に起こりやすいトラブルには、体重の増加、むくみ、精神の不安定さ、肌トラブルなどがあります。
体重の増加とむくみ
黄体ホルモンは水分を体内に留める性質があり、そのため体重が増加したり、体がむくんだりしやすくなります。このむくみは、黄体ホルモンが水分保持を促進するためで、特に手足や顔に浮腫が現れることが多いです。むくみが気になる場合は、塩分を控えたり、利尿作用のある食材(例えば、きゅうりや冬瓜など)を摂取すると効果的です。また、軽い運動やストレッチを取り入れることで、体内の水分循環が改善され、むくみが緩和されることがあります。
※梅雨の食養生の所でやりましたが、黄体期には湿の貯まる食事は避けたほうが良いですね。
精神の不安定さ
黄体期には、精神面でも不安定になりやすく、イライラしたり気分が落ち込みやすくなります。これは、黄体ホルモンが脳に影響を及ぼし、感情のコントロールが難しくなることが原因です。中医学では、イライラや情緒不安定を緩和するために「加味逍遙散(かみしょうようさん)」や「逍遥散(しょうようさん)」といった漢方薬が用いられます。これらの漢方薬は、心身をリラックスさせ、気の巡りを良くする効果があるとされています。
肌トラブル
黄体ホルモンの影響で皮脂分泌が増加し、ニキビや吹き出物が出やすくなることも黄体期の特徴です。このような肌トラブルには、皮脂コントロールに役立つ食事やスキンケアを行うと良いでしょう。また、便通が悪くなると体内に老廃物が溜まり、肌トラブルが増えることがあるため、食物繊維や水分を十分に摂ることも大切です。
月経周期に伴うトラブルとその対処法
女性の月経周期における不調やトラブルには、中医学的な対処が非常に有効です。例えば、月経痛や生理前のイライラが強い場合は、漢方薬がよく用いられます。中でも「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」は、生理痛や血行不良を改善する効果が期待される処方で、温め効果があるため冷え性の改善にも役立ちます。また、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」は、補血や活血をサポートし、血行を促進するため、月経に伴う様々なトラブルの改善に利用されます。
病院での対処法と中医学的な視点
婦人科を受診した場合、西洋医学ではホルモン剤(ピル)が一般的な選択肢として挙げられます。ピルにはホルモンの分泌を調整する作用があり、月経痛やPMS(生理前症候群)の症状緩和に用いられます。しかし、ピルに抵抗がある場合や自然な対処を望む方も多く、中医学的な対処法が注目されています。中医学では、体質や症状に応じた個別の処方が行われ、漢方薬の選択肢が多い点が特徴です。
中医学のアプローチ
中医学では、月経周期を陰陽のバランスで捉え、それぞれの時期に合わせた養生法を実践します。例えば、月経期には体を温める食材や薬草を使って血行を促し、卵胞期や排卵期には栄養を補給して体調を整えます。黄体期には、体内の余分な水分を排出する食材や、気の巡りを良くするアロマや漢方薬を利用して、心身の調和を保つことを重視しています。
これらの知識を用いることで、月経周期に応じた適切な養生や漢方の活用が可能となり、女性の体に寄り添った自然な健康管理が実現されます。