【茯苓飲と五苓散の違い】漢方薬 方剤学
茯苓飲と五苓散はどちらも中医学で用いられる処方ですが、それぞれ適応する症状や作用の焦点が異なります。以下にその違いを詳しく説明します。
1. 茯苓飲
組成:
茯苓、半夏、白朮、人参、生姜、甘草
主な作用:
胃腸の調整と痰湿の除去
茯苓飲は主に脾胃虚弱による症状、特に胃腸の機能低下や痰湿の蓄積による不快感に対応します。
適応する症状:
脾胃虚弱に伴う悪心、嘔吐
食欲不振、消化不良
痰湿による胃部の不快感
持続的な吐き気、唾液の分泌が多い
特徴:
胃腸を調整する処方で、脾胃を補う力が強く、消化機能をサポートします。
吐き気や嘔吐がメインであり、消化器系の虚弱に重点を置いています。
2. 五苓散
組成:
茯苓、猪苓、沢瀉、白朮、桂枝
主な作用:
水湿代謝の調整と利尿作用
五苓散は体内の水分代謝を改善し、水分の停滞による不調を解消することに重点を置きます。
適応する症状:
体内に余分な水分がたまることで生じる症状(湿邪)
むくみ(浮腫)
排尿障害(尿が出にくい)
めまい、吐き気
頭痛、喉の渇き、口渇
特徴:
利水滲湿(余分な水分を体外に排出する)の力が強い処方です。
特に体内に水分が過剰に溜まっているときに使用されます。
違いのポイント
茯苓飲と五苓散の違い
茯苓飲の方が脾胃+利水で、五苓散は利水に特化していると考えたらよいでしょうか?
茯苓飲と五苓散の違いを簡潔にまとめると以下のようになります。
茯苓飲
主な作用:
脾胃を補う(消化器の機能を整える)
利水作用もある(余分な水分を除くが、補益を重視)
適応症状:
胃腸が弱い(脾虚)ことが原因で痰湿や水分代謝異常が起きている場合
吐き気、消化不良、唾液の過剰、疲労感を伴う場合
特徴:
脾胃の強化と利水のバランスを重視。利水は補脾(消化器を助ける)作用の延長として行われます。
五苓散
主な作用:
利水に特化(体内の余分な水分を排出することが主目的)
体内の「水毒(湿邪)」を除くことで全身の不調を整える
適応症状:
体内に余分な水分が溜まりやすい(湿邪)状態
浮腫、排尿障害、喉の渇き、頭痛、吐き気など、水分停滞が原因の症状
特徴:
利水を主軸に据えた処方で、補益の要素はほとんどありません。
まとめ
茯苓飲: 胃腸が弱く、吐き気や嘔吐を中心とする症状に適しており、消化機能をサポートします。
五苓散: むくみや尿の出にくさ、体内の水分代謝異常による不調に対応し、利尿作用が強い処方です。
両者は茯苓を含む点で共通していますが、適応する体質や症状が異なるため、使い分けが重要です。適切な選択には、症状や体質を総合的に評価する必要があります。
茯苓飲は「脾胃の調整+軽い利水作用」
→ 脾胃虚弱をベースとする症状(消化器不良が主)に適しています。五苓散は「利水に特化」
→ 水分代謝の異常が主原因の症状(水滞、湿邪)がある場合に適します。
このように考えると、茯苓飲は胃腸を中心とした内因性の調整、五苓散は水分代謝における外因性の調整がメインとなると捉えると分かりやすいでしょう。