【脾が超重要な理由②昇清を主る】中医基礎理論

今回は脾の役割の一つである昇清(しょうせい)について解説していきます。

1. 脾の昇清(しょうせい)の役割

  • 脾は中医学において「運化(消化・吸収・代謝)」を司る中心的な臓腑であり、その中でも「昇清」は特に重要な機能です。

  • 昇清とは、脾が食べ物から得た「水穀の精微(栄養分)」を肺に運び上げ、そこから心と肺の働きによって全身に散布するプロセスです。

昇清の具体的な役割

  1. 水穀の精微(栄養素)の上昇

    • 飲食物が胃で初期的に処理され、脾によって清(精微)が取り出されます。

    • この清は肺に運ばれ、最終的に全身へと分布されます。

    • 肺は「気を散布する」働きがあり、脾から運ばれた精微が気血の生成に利用されます。

  2. 津液(水分)の調整

    • 脾は飲食物から得た水分を「清」と「濁」に分けます。

    • 清は上部に運ばれ、濁は下部へ送られ腎や膀胱を通じて排泄されます。

    • 脾が弱ると、この調整が崩れ、体内に湿気が溜まり、むくみや倦怠感の原因となります。

2. 脾と胃の相互作用

中医学では、脾と胃はセットで消化吸収のプロセスを担い、それぞれ異なる役割を果たします。

(1) 脾:昇清を担当

  • 清(精微)を上げることで、気血の生成を支えます。

  • 脾が清を上げられないと、栄養が全身に届かず、倦怠感や集中力の低下が起こります。

(2) 胃:和降を担当

  • 食物を下へ送る働きがあり、消化の流れを維持します。

  • 胃が和降できないと、食物が停滞し、胸焼けや腹部膨満感が生じます。

(3) 脾と胃のバランスの重要性

  • 脾が昇、胃が降することで、内臓の位置や機能が安定します。

    • 例えば、脾が弱ると胃下垂や内臓下垂が起こりやすくなります。

  • 気の流れの調整

    • 上昇する脾の力と下降する胃の力が釣り合いを取ることで、全身のエネルギー循環が正常に保たれます。

3. 昇清が障害された場合の影響

脾の昇清機能が弱まると、体内で以下のような不調が現れます:

(1) 必要な清が上がらない

  • 症状

    • 頭がぼーっとする、倦怠感、めまい、四肢の重さ。

    • エネルギー不足による全身の疲労感。

  • 原因

    • 脾の気が弱い(脾気虚)。

    • 長期間の消化不良や過労、冷たい飲食物の過剰摂取。

(2) 不要な濁が上がる

  • 症状

    • 頭痛、吐き気、胸焼け、消化不良。

    • 睡眠の浅さや不快感。

  • 原因

    • 飲酒や脂っこい食べ物の過剰摂取。

    • 脾の運化機能の低下。

4. 内臓の固定と昇清の関係

  • 脾の昇清は、内臓を適切な位置に支える役割も果たします。

  • 重力に負けない力を供給するため、脾が弱いと内臓が下がりやすくなります。

    • 胃下垂、内臓下垂、骨盤臓器脱(女性)などのリスク。

5. 日常生活での注意点

脾の昇清機能を維持するためには、以下のポイントを意識することが重要です:

(1) 飲食の工夫

  • 温性食品を中心に摂取:

    • 生姜、ナツメ、山薬、温かいスープなど。

  • 冷たい飲食物や脂っこい食事を避ける。

    • 冷たいものは脾を傷つけ、運化を阻害する。

  • 飲酒は適量に:

    • 特に日本酒など濃縮された飲料は脾の負担となりやすい。

(2) ライフスタイルの調整

  • 過労を避け、十分な休息を取る。

  • 適度な運動を行い、気血の流れを促進する。

(3) 飲酒と消化の関係

  • 日本酒などは米を濃縮した飲み物で、栄養が詰まっている分、過剰摂取は脾の負担になります。

  • 飲み過ぎると消化不良が起き、眠りが浅くなる原因となります。

6. より深い理解のための補足

「清」と「濁」の考え方

  • 清:栄養として体に必要なもの。

  • 濁:老廃物や余分な水分。

  • 脾がこれを適切に分け、清を上に、濁を下に送ることで、体内の調和を保ちます。

「気機の調節」

  • 気の上昇と下降が正常に行われることで、消化や吸収、代謝のバランスが取れます。

  • この調整が崩れると、上部(頭部)の症状や下部(消化器)の不調として現れます。

7. 結論

  • 昇清を主る脾は、全身にエネルギーと栄養を供給する中枢的な役割を担います。

  • 脾と胃のバランスを保つことで、健康を維持し、消化器系の不調を防ぐことができます。

  • 日常生活で脾胃を助ける習慣を取り入れることで、体全体の気血の循環と代謝を健やかに保つことが可能です。

中医学的視点から脾の働きを理解し、養生に役立ててください。

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