【なぜイライラするのか?】肝の疏泄作用中医基礎理論
中医学において、肝の疏泄は全身の気・血・津液の運行や感情の調整、さらに消化や月経の調節にまで関与する重要な機能です。この働きがスムーズであることが、心身の健康を維持する鍵となります。以下に、より具体的にその働きを説明します。
1. 疏泄の基本概念
「疏」:
流れを通じ、滞りをなくすこと。
気の流れをスムーズにし、身体の「気機(気の動き)」を整えます。
「泄」:
スッキリさせる、解放すること。
気・血・津液が正しく巡るように調整します。
この疏泄作用によって、身体の各機能が調和を保ち、スムーズに働きます
2. 疏泄の具体的な働き
(1) 気機の調節
肝は全身の気の流れを管理しています。
気がスムーズに流れることで、臓腑の働きが調和します。
気が滞ると(気滞)、以下のような問題が起きやすいです:
胸や腹の張り感(胸脇苦満)
息苦しさ
便秘や下痢の交互発生(肝脾不和)
頭痛やめまい(肝陽上亢)
(2) 消化機能の促進
胆汁の分泌:
肝は胆嚢と連携し、胆汁を分泌します。
胆汁は消化を助け、特に脂肪の分解に関与。
昇清と降濁:
肝がスムーズに疏泄を行うことで、脾胃の働きも活性化し、清い成分(精微)が上昇し、濁った成分が排泄されます。
ストレスが多いと肝の疏泄が乱れ、胆汁の分泌が不十分になり、以下のような症状が現れます:
食欲不振
胸焼けや胃酸過多
消化不良
(3) 情志(感情)の調節
肝は「魂(精神や意識)」を主るとされ、感情の調整に深く関わります。
肝の疏泄が正常であれば、感情は安定し、精神的な柔軟性が保たれます。
肝の疏泄が乱れると:
気滞:イライラや鬱状態。
肝火上炎:怒りっぽさや興奮。
肝鬱化熱:抑鬱感や不安感。
(4) 月経の調節
肝は「血を蔵す」働きと、疏泄によるホルモンバランスの調整を通じて月経を管理します。
正常な月経のための働き:
卵胞ホルモンや黄体ホルモンの分泌を調整。
血液を順調に巡らせ、月経の円滑な流れを維持。
肝の疏泄が乱れると:
月経不順(周期が乱れる)
月経痛(経血の流れが悪化)
過多月経や月経血塊(瘀血が蓄積)
3. 疏泄作用の乱れによる症状
肝の疏泄が失調すると、以下のような広範囲の問題が発生します。
(1) 気滞(気の停滞)
主な症状:
胸や腹の張り感(胸脇苦満)
イライラやストレス
ため息が多い
(2) 消化不良
主な症状:
食欲不振
胃の膨満感
便秘や軟便
(3) 月経異常
主な症状:
生理痛やPMS
無月経、過多月経、血塊の多い経血
(4) 精神的な不調
主な症状:
抑鬱感、不安感
怒りやすい
睡眠障害(入眠困難や早朝覚醒)
4. 肝疏泄を整えるポイント
(1) 食養生
疏肝理気に良い食材:
柑橘類(みかん、レモンなど)
緑色の野菜(小松菜、ほうれん草など)
シソやバジルなどの香味野菜
控えたいもの:
脂っこいもの、刺激物(アルコール、辛い食品)
(2) 日常生活
適度な運動:気の流れをスムーズにする。
リラクゼーション:瞑想や深呼吸を取り入れる。
良い睡眠習慣を維持する。
(3) 漢方薬
代表的な処方:
加味逍遙散(気鬱やストレスに)
柴胡疏肝散(肝気滞に)
丹栀逍遙散(肝鬱化熱に)
5. 肝疏泄の重要性
肝疏泄は、身体のエネルギーと流れを整え、精神の安定を促し、女性の月経やホルモンバランスまで管理する重要な機能です。疏泄が整っていると、身体全体が調和し、ストレスにも柔軟に対応できる状態を維持できます。そのため、肝疏泄を意識した日常生活や養生が大切です。