【黄体期の体調不良と症状】中医婦人科学
黄体期は生理周期の中で排卵後から月経の始まりまでの期間を指し、体温が高く、ホルモンバランスが変化する重要な時期です。この期間の養生は、妊娠を希望する場合やPMS(生理前症候群)の軽減において特に重要です。以下では、黄体期における基本的な役割、漢方薬、生活習慣についてさらに詳しく説明します。
黄体期の重要性と役割
黄体期は、排卵後から次の月経が始まるまでの約14日間の高温期を指し、体が妊娠に向けて準備を整える重要な期間です。この時期に体温が上がるのは、黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されることで、体内の陽気が増え、温かく保たれるためです。黄体ホルモンの分泌がしっかりと行われ、安定した高温期が続くことで、妊娠が成立しやすくなります。また、ホルモンバランスが崩れやすい時期でもあり、体調の維持に特に配慮が必要です。
高温期を安定させる補陽の養生
補陽は、黄体期の体温を維持するために欠かせない考え方です。黄体期には身体が陽のエネルギーを多く必要とするため、体を温める食材や習慣を取り入れて、冷えないようにすることが大切です。
冷え対策
温かい飲み物:白湯や生姜入りのハーブティーなど温かい飲み物を摂ると、体が内側から温まり、冷えを防げます。
暖かい服装:特にお腹周りや下半身の冷えに気をつけ、靴下や腹巻きを着用するなどして保温するのが効果的です。
お風呂での温浴:湯船に浸かることで血行が良くなり、冷えの緩和に役立ちます。
補陽の食材
補陽には、体温を維持し、エネルギーを補給する食材が効果的です。
エビや鶏肉:これらは陽気を高め、血の巡りを良くする食材であり、安定した高温期を維持するために役立ちます。
くるみ:体を温める効果があり、特に冷えがちな方におすすめです。くるみにはオメガ3脂肪酸も豊富で、ホルモンバランスの安定をサポートします。
根菜類(ごぼう、大根、にんじんなど):根菜類は土の中で育つため温める効果が強く、胃腸を温めて消化吸収を良くする働きもあります。
PMSへの対策と気の巡り
PMS(月経前症候群)は、月経直前の黄体期に多く見られる症状で、特にイライラや気分の落ち込み、胸の張り、むくみなどが現れることが多いです。これらの症状は、体内で「気」が滞りやすくなることで起こるため、気の巡りを良くすることが重要です。
気の巡りを良くする食材と方法
柑橘類:みかんやレモンなどの柑橘類は、気の巡りを助ける働きがあり、PMS症状を和らげる効果が期待されます。
ミント:リラックス効果が高く、心身の緊張をほぐしてくれます。ミントティーを飲むことで、気分を穏やかにする効果もあります。
ストレッチやウォーキング:体を軽く動かすことで気がスムーズに流れやすくなり、PMSによる不調を軽減します。
よもぎ蒸しの利用と注意点
よもぎ蒸しは、よもぎを蒸して下半身を温める民間療法で、冷え性や婦人科系の不調に効果があるとされています。ただし、体質やタイミングによっては不調の原因となることもあるため、適切に使うことが大切です。
※下記に記述しますが、陰虚の人には使わないほうが良いです。
よもぎ蒸しの適したタイミング
低温期が長いタイプ:排卵までの期間が20日以上と長く、冷えによって卵胞の育成が遅れがちな方には、よもぎ蒸しで温めることが有効です。血流が促進され、卵胞の成長が促される場合があります。
低温期が短いタイプ:排卵までの期間が10日程度で、陽気が過剰になることで高温期が早く訪れてしまうタイプの方には、よもぎ蒸しでさらに温めすぎると逆効果になることがあります。過剰に体温を上げることは控え、陰の時間の養生を重視することが推奨されます。
よもぎ蒸しが適さないタイプ
よもぎ蒸しは万能ではなく、陰虚や熱がこもりやすい体質の方には適さない場合もあります。陰虚体質の方はもともと潤いが不足しやすいため、体を温めすぎると乾燥や不調の原因になりかねません。
プラセンタと補腎について
プラセンタ(胎盤)は中医学で「紫河車」という生薬名で知られ、補腎に使われます。補腎は、主にアンチエイジングや生殖機能のサポートとして効果があるとされ、黄体期や妊活に役立ちます。
プラセンタの効果と体質適応
補腎作用:プラセンタには腎のエネルギーを補う力があり、黄体期に必要な体力や活力を支えるのに役立ちます。特に陰を補うことで潤いが補われ、若々しい体の維持に役立ちます。
温め効果が少ない:プラセンタは補腎作用はあるものの、温める効果が少ないため、体を温めるための補陽にはあまり向きません。冷えが強い場合は別の補陽食材や生薬が良いでしょう。
補腎・補陽の漢方薬と食材
補腎・補陽を効果的に行うためには、体質に合わせた漢方薬や食材が役立ちます。
参茸補血丸(さんじょうほけつがん):血を補い、体を温める漢方薬です。冷えによる不調が気になる方や、疲労回復におすすめです。
参馬補腎丸(じんばほじんがん):腎を補い、体のバランスを整える薬で、虚弱体質やエネルギー不足の方に適しています。
鹿の角(⿅茸 ろくじょう):特に冷え性で補陽が必要な方に向いており、体を温める力が強い生薬です。
結論
黄体期の養生は、冷えを防ぎ、安定した高温期を維持するために補陽が中心です。PMSのケアには気の巡りを良くすることが効果的であり、個々の体質や体調に合わせた養生法を取り入れることで、心身のバランスを整えることが可能です。