【40代以降の月経の変化(西洋医学)】中医婦人科学
今回は40代以降の月経の変化とそれに伴う影響について解説します。
1. 月経の変化のプロセス
閉経への段階的変化
閉経(最後の月経が1年間ない状態)に至るまで、月経パターンは徐々に変化します。
周期の短縮: 40代ではホルモン分泌が不安定になるため、月経周期が短くなることがあります(通常28~30日→25日程度)。
無排卵周期の増加: 排卵が起きない月経が増えます。これはエストロゲンは分泌されるものの、排卵に必要なプロゲステロンの分泌が低下するためです。
月経量の変化: 月経量が少なくなったり、不規則な出血が見られることがあります。
希発月経(揮発月経): 月経の間隔が45日以上に延び、最終的には月経が来なくなります。
2. 閉経前後の注意点
不正出血
不正出血は以下のような原因で起こることがあります。
ホルモンバランスの乱れ: 閉経前後はエストロゲンとプロゲステロンの分泌が不安定になり、子宮内膜が異常に肥厚したり剥離が不完全になることで出血が起こります。
器質的疾患の可能性:
子宮体癌: 閉経後の不正出血の最も警戒すべき原因。50~60代に多く、閉経後に発症するケースが約8割。
特徴: 少量の持続的な出血、閉経後1年以上経っての突然の出血。
子宮筋腫や子宮内膜ポリープ: 不正出血を伴うことがあるが、良性の場合が多い。
検査の必要性
閉経後に出血があった場合は必ず婦人科を受診し、以下の検査を行うべきです。
超音波検査
子宮内膜の細胞診
MRIやCTスキャン(必要に応じて)
3. 子宮体癌と子宮頸癌のリスクの違い
子宮体癌
発症時期: 主に閉経後の50~60代に発症。
関連因子:
閉経前後のエストロゲン単独刺激(プロゲステロン不足)。
肥満、高血圧、糖尿病などのリスク因子。
予防:
定期的な婦人科検診。
ホルモン補充療法(HRT)の際にはプロゲステロンを併用。
子宮頸癌
発症時期: 若年層(20~30代)に多く見られる。
原因: 主にヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が関与。
予防: HPVワクチンの接種、子宮頸部の定期検査。
4. 閉経に伴う全身への影響
ホルモンバランスの変化
エストロゲン低下: 更年期症状(ホットフラッシュ、倦怠感、不安感など)だけでなく、以下の疾患リスクが高まります。
骨粗鬆症
脂質異常症(高脂血症)
心血管疾患
膣の萎縮や性交痛
プロゲステロンの減少:
エストロゲンとのバランスが崩れ、子宮内膜の過剰増殖や不正出血を引き起こす。
5. 中医学的視点でのアプローチ
中医学では、閉経前後の月経の乱れや症状を「腎虚」「気血不足」「瘀血(おけつ)」の観点から捉えます。
腎虚(じんきょ)
特徴: 腎のエネルギーが不足し、生殖機能やホルモンバランスが低下する。
症状: 月経不順、疲労感、冷え、耳鳴り、骨密度低下。
治療方針:
腎を補う漢方薬(例: 六味地黄丸、八味地黄丸)。
温熱療法や軽い運動で腎の働きを高める。
気血不足
特徴: 長期の疲労やストレスにより、身体のエネルギーと血液が不足。
症状: 月経量の減少、顔色の蒼白、倦怠感。
治療方針:
養血薬(例: 四物湯、当帰芍薬散)で気血を補う。
栄養価の高い食事(黒豆、ほうれん草、レバーなど)を摂る。
瘀血(おけつ)
特徴: 血液の流れが悪くなることで不正出血や月経痛が起こる。
症状: 不正出血、下腹部の痛み、冷え、むくみ。
治療方針:
血流を改善する漢方薬(例: 桂枝茯苓丸、桃核承気湯)。
マッサージや鍼灸で血流を促進。
6. 日常生活での注意点と予防策
ライフスタイルの調整
栄養管理: カルシウム、ビタミンD、マグネシウムを積極的に摂取し、骨粗鬆症を予防。
適度な運動: 骨密度を保つためのウォーキングや筋力トレーニング。
ストレスケア: ヨガや瞑想で自律神経を整える。
定期的な検診
年に1回の婦人科検診で早期発見を目指す。
子宮体癌や子宮頸癌のリスクを考慮し、不正出血があれば必ず医療機関へ相談。
まとめ
閉経前後の月経の変化は自然なプロセスですが、不正出血や症状が悪化する場合は子宮体癌などのリスクを排除するために検査が必要です。中医学では、体全体のバランスを整えることで症状の緩和や健康の維持を目指します。医療的ケアと中医学的アプローチを組み合わせることで、安心してこの時期を乗り越えることができます。