【血液は脾が作るのが中医学】中医基礎理論
脾の「生血」と「統血」について詳しく解説
脾は中医学において血液の生成(生血)と管理(統血)を担う中心的な臓器です。以下にそれぞれの役割とその重要性、具体的な作用、症状への影響について詳しく説明します。
1. 生血を主る
脾が「生血を主る」とは、脾が食物から栄養を取り出し、血液の原料を供給する働きを指します。
(1) 水穀精微と血液生成
水穀精微(すいこくせいび): 食物が胃で消化された後、脾によってさらに「精微物質」(栄養分)に変化されます。この精微物質が血液を生み出す原料になります。
食物の固形物を小さく分解し、身体が吸収可能な状態にする。
精微物質が肺に運ばれ、吸い込んだ清気(酸素)と結びつき、血液が生成されます。
(2) 血液の生成と流れ
生血の過程では、脾の力が弱まると血液の生成量が減り、血虚(血液不足)を引き起こします。
血虚になると、貧血、めまい、疲労感、唇の色が薄いなどの症状が現れます。
(3) 重要なポイント
血液の材料は食物から得られるため、脾が健康でなければ適切な血液生成が行えません。
具体的には、栄養価の高い食事や、消化を助ける食べ物(お粥、温かいスープなど)を摂取することが生血を助けます。
2. 統血を主る
脾が「統血を主る」とは、血液が脈管内に留まり、外に漏れ出さないように管理する働きを指します。
(1) 血液の管理と脾気の役割
脾気(ひき): 血液を脈管内にしっかりと留め、漏れないようにする力を持っています。この働きを「固摂作用(こせつさよう)」といいます。
例: 血管の壁を引き締め、血液が外に漏れるのを防ぐ。
血の巡りをスムーズにし、必要な部位に適切に血液を送ります。
(2) 統血作用の低下による症状
脾の統血作用が低下すると、以下のような症状が現れます:
不正出血: 生理周期以外で出血が起こる。
過多月経: 生理の出血量が通常より多い。
内出血: 軽い衝撃でも皮下に血が溜まる。
鼻血: 特に子供や脾虚体質の人に多く見られる。
子供は脾胃が未成熟なため、鼻血を出しやすい傾向があります。
慢性的な疲労感: 血液循環が悪くなり、全身の栄養供給が不足。
(3) 気と血の関係
中医学では「気は血の帥(指揮官)」とされ、気が血液を流れやすくし、血液の正常な循環を支えます。
血液は「気」によって押し出されて全身に巡ります。
例: 気虚になると血液の流れが悪くなり、末端冷え性や倦怠感が現れる。
3. 生血と統血の相互作用
脾が弱まると、生血と統血の両方に悪影響を及ぼします。例えば:
脾気が不足 → 血液生成が滞る(生血不足)。
血液生成が滞る → 血液がうまく循環せず、出血しやすくなる(統血不足)。
症状の進行例
血虚(血液不足) → 体内のエネルギー不足や肌のくすみ。
統血機能低下 → 月経異常や内出血。
脾気虚 → 血虚と統血不足が同時に進行する。
4. 脾を強化するための養生法
(1) 適切な食事
脾を助ける食べ物:
温かい食べ物(お粥、煮物、スープ)。
消化に良い食材(山薬、ナツメ、もち米)。
避けるべき食品:
冷たい飲み物や生野菜。
脂っこい食べ物やジャンクフード。
(2) 規則正しい生活
睡眠をしっかり取り、脾気を回復させる。
ストレスを減らし、気の流れをスムーズにする。
(3) 漢方薬の利用
帰脾湯(きひとう): 脾を補い、血を整える。
四君子湯(しくんしとう): 脾胃を補うことで消化吸収を助ける。
結論
脾の「生血」と「統血」の働きは、血液を作り、それを体内に留めるという中医学の基礎概念です。この2つの働きが正常であれば、血液循環が整い、全身の健康を保つことができます。しかし、脾が弱ると、生血と統血の両方に問題が生じ、不調が現れます。日々の食事や生活習慣を整え、脾を守ることが健康維持に不可欠です。