【望診・聞診・問診・切診】四診と弁証論治②

今回は弁証論治の四診(中医診断学)について説明します。四診は中医学で患者の体質や病気の原因、病状の進行具合などを総合的に診断する方法で、「望診」「聞診」「問診」「切診」の4つの診察法から構成されています。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

1. 望診

望診は、患者の外見を観察することで、体の内部状態や病気の兆候を見つける方法です。観察する要素には以下があります。

  • 体型: 体格や体型を観察します。例えば、体が非常に細い人は「陰虚(インキョ)」の体質が疑われることがあります。

  • 姿勢: 患者の立ち方や姿勢を見ます。例えば、猫背の人は胃腸の機能が弱いと考えることがあり、体の姿勢は内臓の状態を反映していることが多いです。

  • 色艶: 顔色や肌の艶を見ます。色艶が悪く血色が薄い場合、「血虚(血が不足している状態)」が疑われます。

  • 部位: 手足がだるい場合は、消化器系(胃腸)が弱っている可能性があると考えます。特定の部位の状態は、対応する内臓や経絡の健康状態を示しています。

  • 排泄物: 便や尿の状態を観察します。例えば、便が緩く下痢のような場合は、お腹が弱い、つまり脾虚や胃腸の弱りが疑われます。

  • 舌診: 舌の色、形、苔の状態を観察することも望診の一部です。舌の情報から消化器の状態や体内の湿気・熱のバランスなどがわかります。

2. 聞診

聞診は、患者の体の音を聞いたり、匂いを嗅いだりして診断する方法です。この診察法は以下のように分けられます。

  • : 患者の声の質を聞き取ります。例えば、声が弱くて小さい場合は「気虚(気が不足している状態)」と考えられます。

  • 咳嗽(かくたん): 咳の音や痰の状態を聞きます。痰が絡む咳や乾いた咳(空咳)など、それぞれの特徴から病態を判断します。

  • 呼吸: 呼吸の浅さや苦しさを観察します。呼吸が浅い場合、気の巡りや肺の機能が弱っていることが考えられます。

  • 口臭: 口臭の有無や強さを確認し、消化器の状態や体内の熱の滞りを推測します。

  • 排泄物の匂い: 便や尿の匂いが強い場合は、内臓に熱がこもっている可能性があります。※直接できないので本人に伺います。結構漢方相談は根掘り葉掘りきかれるので覚悟するように!

聞診は、音と匂いを総合的に診断材料とします。

3. 問診

問診は、患者に質問をして情報を集める方法です。中医学では、患者の全体的な健康状態や生活習慣を理解するために、詳細な聞き取りが行われます。

  • 主訴: 患者が一番気にしている症状。何が一番困っているのかを把握します。

  • 病歴: 病気の履歴や現在の症状がどのように進行しているかを確認します。

  • 既往歴: 過去にかかった病気やケガを尋ねます。

  • 飲食習慣: 普段の食生活について聞き、どのような食べ物が体質に影響を与えているかを分析します。

  • 睡眠: 睡眠の質や時間を尋ね、気血のバランスや心の状態を診断します。

  • 十問歌(じゅうもんか): 中医学では「十問歌」と呼ばれる聞き取り方法を用いて、患者の全体像を把握します。例えば、寒がりか暑がりか、便通や小便の状態など、さまざまな質問を行います。

4. 切診

切診は、患者の体に直接触れることで診断する方法です。

  • 皮膚の状態: 皮膚の温度や湿り気を触って確認します。冷えている場合は「陽虚」、温かい場合は「熱証」などと診断します。

  • 腹部の状態: 日本漢方では腹診(腹部の触診)が特に重要視されます。腹部を触って、内臓の状態や気血の巡りを診断します。

  • 四肢の冷えや温かさ: 手足が冷たいか温かいかを触って調べます。手足が冷えている場合は「陽虚」など、温度変化から体質を把握します。

  • 手を見るドゥアセラピー:手を全身と仮定して診断する方法です。経穴と同じで痛いところが弱っているところと診断して弁証します。

  • 脈診: 脈を触って、全身のエネルギーの流れや臓器の状態を診断します。脈診は専門性が高く、医療行為として位置づけられるため、資格がない者が行うと法律で規制されています。

なぜ脈診は医療行為とみなされるのか?

脈診は高度な診断技術であり、患者の体内の状態を正確に把握するため、医療行為と見なされています。医師や適切な資格を持った中医師のみが行うことが認められている理由は、誤診のリスクがあるためです。資格のない者が行うと、誤った診断や不適切な治療につながる危険があるため、法律で制限されています。※詳しくは別記事で詳細に調べました。

このように、四診を用いて患者の「証」を見つけ、病態を把握することが中医学の診断の基礎です。その後、適切な治療法(弁証論治)が行われます。

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