【小腸】 登録販売者試験 消化器系補足③-6

小腸は、消化と栄養の吸収を行う消化管の中心的な役割を持つ器官です。全長は約6〜7メートルに及び、消化管全体の大部分を占めています。小腸は主に、十二指腸(じゅうにしちょう)、空腸(くうちょう)、回腸(かいちょう)の3つの部分に分かれ、それぞれが異なる役割を担っています。以下に小腸の構造、各部位の役割、消化と吸収の仕組み、表面積を増やす特殊構造、関連疾患について詳しく解説します。


1. 小腸の構造と区分

小腸は大きく分けて以下の3つの部分で構成され、口側から順に消化と吸収の役割を担います。

1) 十二指腸(じゅうにしちょう)

  • 位置と長さ:胃のすぐ下に位置し、長さは約25cmと短いです。

  • 役割:膵臓と胆嚢(たんのう)から分泌される膵液や胆汁がここに注がれ、胃酸で酸性になった内容物を中和して消化酵素が働きやすい環境を作ります。

  • 膵液と胆汁の作用:膵液は炭水化物、タンパク質、脂質の消化を促し、胆汁は脂質を乳化してリパーゼによる分解を助けます。

2) 空腸(くうちょう)

  • 位置と長さ:十二指腸に続き、全長の約40%を占める中間部分です。

  • 役割:炭水化物、タンパク質、脂質などの消化が進み、栄養素が吸収され始める部位です。消化酵素によって、消化が小腸でさらに進行し、単糖類やアミノ酸、脂肪酸などの形で吸収されます。

  • 構造の特徴:空腸には絨毛(じゅうもう)と微絨毛が発達しており、栄養吸収を効率よく行えるように表面積が広がっています。

3) 回腸(かいちょう)

  • 位置と長さ:小腸の終端部で、大腸に続く部分です。全長の約60%を占めます。

  • 役割:残りの栄養素やビタミンB12、胆汁酸などを吸収します。

  • 構造の特徴:空腸に比べると絨毛の発達が少ないものの、ビタミンB12や胆汁酸の再吸収が行われ、栄養素の吸収が完結されます。


2. 小腸の消化と吸収の仕組み

小腸では、胃から送られてきた半消化の食物(キーム)がさらに消化され、吸収可能な形まで分解されます。小腸の消化と吸収の仕組みは、以下のように進みます。

消化

  • 炭水化物:膵液に含まれるアミラーゼと、腸液に含まれるマルターゼやラクターゼなどの酵素によって、炭水化物は単糖類(グルコースなど)にまで分解されます。

  • タンパク質:膵液のトリプシンやキモトリプシン、腸液のエレプシンによって分解が進み、アミノ酸にまで分解されます。

  • 脂質:膵液のリパーゼが、胆汁によって乳化された脂肪を脂肪酸とグリセロールに分解します。

吸収

  • 小腸粘膜の構造:小腸の内壁には多数の絨毛が密集しており、さらに微絨毛で覆われています。この構造により、表面積が劇的に増加し、効率的に栄養素を吸収できます。

  • 吸収の仕組み

    • **炭水化物(単糖類)タンパク質(アミノ酸)**は、絨毛の毛細血管を通じて肝門脈へと運ばれ、肝臓で代謝されます。
      ※肝門脈=門脈という名前で呼ばれます。

    • **脂質(脂肪酸とグリセロール)**は、絨毛のリンパ管(乳び管)に吸収され、リンパ液とともに体内に運ばれます。小腸で再びトリグリセリドに合成され、カイロミクロンという形でリンパ系を通じて全身に分配されます。


3. 小腸の表面積を増やす特殊構造

小腸は、栄養の吸収効率を最大化するために、表面積を増やす構造を備えています。

輪状ひだ

  • 特徴:小腸の内壁には輪状のひだがあり、食べ物が腸内でゆっくりと進むようにし、消化と吸収の時間を確保します。

絨毛(じゅうもう)

  • 特徴:輪状ひだの表面には無数の絨毛があり、さらに表面積を増やします。

  • 機能:絨毛には毛細血管とリンパ管が通っており、ここで栄養素の吸収が行われます。

微絨毛(びじゅうもう)

  • 特徴:絨毛の表面はさらに微絨毛という細かい突起で覆われています。これにより、表面積が何倍にも拡大され、効率的に栄養素を吸収できます。

  • ビロード状の構造:微絨毛のビロード状の構造により、小腸の吸収効率が劇的に向上します。
    ※ビロード=ベルベット もふもふした感じのやつ


4. 栄養素別の吸収

小腸で吸収される栄養素は多岐にわたり、それぞれが異なる経路で体内に取り込まれます。

  • 炭水化物(単糖類):絨毛から毛細血管へ吸収され、肝門脈を通じて肝臓に送られ、エネルギー源として利用されます。

  • タンパク質(アミノ酸):炭水化物と同様に毛細血管から肝門脈を経由して肝臓に送られます。アミノ酸は、体の構成成分や酵素、ホルモンの原料として使用されます。

  • 脂質(脂肪酸とグリセロール):リンパ管に吸収され、再合成されたトリグリセリドがカイロミクロンとなって血流に乗り、全身に運ばれます。

  • ビタミンとミネラル:脂溶性ビタミン(A、D、E、K)は脂質とともに吸収され、血流を介して全身に供給されます。一方、水溶性ビタミンやミネラルは、絨毛を通じて直接血管に吸収されます。

  • ビタミンB12:回腸で内因子と結合して吸収されます。ビタミンB12は赤血球の形成に必要不可欠です。


5. 小腸に関連する疾患

小腸は栄養吸収を担うため、ここに障害が発生すると栄養不足や消化不良が生じやすくなります。以下は小腸の代表的な疾患です。

セリアック病

  • 原因:グルテン(小麦、大麦、ライ麦などに含まれるタンパク質)に対する自己免疫反応によるものです。グルテン摂取により小腸の絨毛が損傷し、栄養吸収が障害されます。

  • 症状:下痢、腹痛、体重減少、貧血などが見られます。

  • 治療:グルテンフリーの食事療法を行い、症状の改善を図ります。

クローン病

  • 原因:腸の炎症性疾患で、原因は明確ではありませんが、自己免疫反応や遺伝的な要因が関与しています。

  • 症状:小腸と大腸に慢性的な炎症が起こり、腹痛、下痢、発熱、栄養吸収不良などが見られます。

  • 治療:抗炎症薬や免疫抑制薬、手術などが行われ、症状の管理を行います。

吸収不良症候群

  • 原因:小腸の表面積が減少することや、消化酵素の不足により、栄養素の吸収が障害される状態です。膵臓の疾患や肝臓の疾患なども原因となることがあります。

  • 症状:体重減少、貧血、脂肪便(便に脂肪が混ざる)などが見られ、慢性的な栄養不足を引き起こします。

  • 治療:栄養サポートや酵素補充療法などが行われ、栄養状態の改善が図られます。


6. 小腸の健康維持

小腸の健康を保つためには、以下の点に注意すると良いとされています。

  • 食物繊維の摂取:野菜や果物、全粒穀物などに含まれる食物繊維は腸内環境を整え、善玉菌を増やして小腸の健康に寄与します。

  • プロバイオティクス:乳酸菌やビフィズス菌などのプロバイオティクスは、腸内フローラ(腸内細菌)のバランスを整え、小腸や大腸の健康を支えます。

  • バランスの取れた食事:炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取することで、小腸の消化・吸収能力が維持されます。
    ※胃の負荷を減らすとともに小腸の負荷も減らすために良く噛んだ方が良いです。

  • ストレス管理:ストレスは腸の働きを抑制することがあるため、適切なリラクゼーションや運動でストレスを緩和することも小腸の健康維持に有効です。

※中医学的には小腸は心と表裏の関係にあります。詳しくは中医基礎理論で。


まとめ

小腸は、消化・吸収の要であり、絨毛や微絨毛などの特殊な構造で表面積を広げ、効率的な栄養吸収が可能な器官です。炭水化物、タンパク質、脂質といった三大栄養素から、ビタミン、ミネラルに至るまでの多様な栄養素がここで吸収され、全身に供給されます。また、小腸の健康を保つことは栄養状態や免疫機能の維持に直結し、日々の生活習慣が小腸にとって重要な役割を持っています。

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