【病因の分類 人はなぜ病気になる?】中医基礎理論
病因の分類について解説します。中医学の観点から、外感病因と内傷病因の詳細な特徴と、それらが身体に与える影響を体系的に説明します。
1. 病因の基本分類
病因(病気の原因)は、中医学では以下の外感病因と内傷病因に大別されます。
(1) 外感病因
外部環境の変化や外的要因により発病する病気。
外邪(がいじゃ、体に侵入する外的要因)による直接的な影響。
(2) 内傷病因
心身の内的要因(感情や生活習慣)によって発病する病気。
人間特有の要因である感情の変化や、日常の生活習慣の不適切さに起因する。
2. 外感病因の詳細
① 六淫(ろくいん)
六淫とは、自然界の6つの気候変化が極端に作用することで病邪(びょうじゃ)となるものです。
風邪(ふうじゃ):
風のように変化が早く、移動性が高い。
特徴: 上半身を中心に症状が出る(頭痛、喉の痛み、咳など)。
季節: 春、または季節の変わり目。
例: 感冒(かぜ)、花粉症。
寒邪(かんじゃ):
冷えによる病邪。
特徴: 筋肉の収縮や血流の滞りを引き起こす(四肢の冷え、関節痛など)。
季節: 冬。
例: 冷え性、凍傷。
暑邪(しょじゃ):
高温環境がもたらす病邪。
特徴: 汗をかきすぎ、体内の津液(体液)が失われる(熱中症、脱水)。
季節: 夏。
例: 熱射病。
湿邪(しつじゃ):
高湿度環境による病邪。
特徴: 重だるさやむくみを引き起こす(胃腸の不調、関節痛)。
季節: 梅雨や湿気の多い地域。
例: 関節炎、湿疹。
燥邪(そうじゃ):
乾燥環境による病邪。
特徴: 乾燥による肌や粘膜のトラブル(乾燥肌、咳)。
季節: 秋。
例: 気管支炎、乾燥性皮膚炎。
火邪(かじゃ):
高温・炎症による病邪。
特徴: 熱感や炎症、赤みを伴う症状(発熱、喉の腫れ)。
季節: 夏(炎症の多い季節)。
例: 扁桃炎、発熱性疾患。
② 疫癘(えきれい)
疫癘は激しい伝染病のことを指します。
特徴:
短期間で急速に流行する。
症状が重篤で、感染力が非常に高い。
例: 新型コロナウイルス感染症、インフルエンザ。
③ 外傷
物理的な損傷(転倒、怪我、虫刺されなど)。
対応: 外傷処置や、体の再生力を高める漢方薬の使用が推奨されます。
④ 寄生虫
体内に寄生する虫が病気を引き起こす。
例: ギョウチュウ症、フィラリア。
3. 内傷病因の詳細
① 精神素因(七情)
**七情(しちじょう)**は感情の変化による影響を指します。
喜(き): 心が高揚しすぎると心臓に負担。
怒(ど): 肝を傷つけ、気の巡りを滞らせる。
憂(ゆう)・思(し): 脾胃を傷つけ、消化不良を引き起こす。
悲(ひ): 肺の気を消耗。
恐(きょう)・驚(きょう): 腎を傷つけ、気力を低下させる。
② 生活素因
飲食不節(いんしょくふせつ):
食べすぎ、飲みすぎ、食事が不衛生な場合に発生。
例: 胃腸炎、消化不良。
労逸(ろういつ):
労: 働きすぎや体の酷使。
逸: 運動不足や怠惰な生活。
両者の不均衡が健康を損なう原因となります。
③ 内生素因
体内で生じた二次的な病理産物が原因。
痰飲(たんいん): 体内に余分な水分が停滞。
瘀血(おけつ): 血流の滞り。
内生五邪: 五臓(肝・心・脾・肺・腎)の不調から発生する邪。
4. 外感病と内傷病の相互作用
外感病因と内傷病因は相互に影響を与え合い、病気を複雑化させます。
例:
ストレス(内傷病因)が免疫を低下させ、風邪(外感病因)にかかりやすくなる。
外傷や疫癘の影響で精神状態が乱れる。
5. 中医学的な対策
外感病因への対策
予防: 季節ごとの体調管理(服装や住環境の調整)。
治療: 風邪の除去、気血の流れの改善。
内傷病因への対策
精神: 瞑想やリラクゼーションで感情の調整。
生活: バランスの良い食生活と適度な運動。
内生素因: 血流改善や代謝促進を目的とした漢方治療。
結論
中医学では、外感病因と内傷病因を分類し、それぞれの特徴や相互作用を分析することで、予防と治療の方針を立てます。特に、内傷病因は現代社会で多発するストレスや生活習慣病と深く結びついており、その対策は中医学の重要な役割の一つです。