【酸苦甘辛鹹】五味が分かれば何とかなる!
中医学の「五味」とは、食材が体に与える作用を味によって分類したものです。これらは単に味覚としての味ではなく、体に対する影響を示しています。以下に、それぞれの五味についてさらに詳しく説明します。
1. 酸味(さんみ)
代表的な食材: レモン、梅、山査子(サンザシ)、銀杏、栗、落花生の渋皮など。
主な働き:
収斂(しゅうれん): 酸味は体のエネルギーや水分を引き締めて保持する作用があります。たとえば、レモンを食べたときに感じる「口がキュッと締まる感覚」は、汗が止まりやすくなったり、内出血が防がれたりすることと関連しています。この働きは、たとえば汗が過剰に出る場合や、エネルギーが外に漏れてしまうのを防ぐのに有効です。
固摂(こせつ): 体内の流れを止め、体液や気の漏れを防ぐ効果があります。これは、例えば夜間の頻尿や下痢などの症状を抑えるために使われます。
※気の固摂作⽤のことです。活血(かっけつ): 血液の循環を促進し、血行不良を改善します。酸味は血流をスムーズにし、血の滞りを解消するのに役立ちます。
2. 苦味(にがみ/くみ)
代表的な食材: 苦瓜(ゴーヤ)、緑茶、ドクダミ、セロリ、山菜など。
主な働き:
清熱(せいねつ): 苦味は体にこもった余分な熱を冷ます作用があります。発熱やのぼせ、炎症があるときには、苦味のある食材を摂ると熱を鎮めてくれます。たとえば、苦い緑茶を飲むと体が冷やされ、熱が引くことがあります。
燥湿(そうしつ): 体内の湿気を取り除きます。湿気が体にたまりやすい梅雨の時期などに、むくみや体の重だるさを改善するのに役立ちます。苦味のある食材は、体内の余分な水分を排出する効果があります。
泄降(しゃっこう): 鎮静作用があり、体のエネルギーを下へと降ろす働きがあります。解毒、便通を促す、利尿効果などもあり、体内の不要な物質を排出するのに役立ちます。
3. 甘味(かんみ/あまみ)
代表的な食材: 穀類(米、小麦など)、豆類、栗、かぼちゃ、芋類など。
主な働き:
補益(ほえき): 甘味は体力を養い、気血を補います。疲労回復や体力をつけるために役立つ味です。甘味は心身をリラックスさせる効果もあります。
和中(わちゅう): 胃腸の緊張を和らげ、消化を助けます。甘味は胃腸の機能を安定させ、消化吸収を促進します。胃が弱っているときに、甘味のある食材を適量摂ると胃腸が和らぎ、消化がスムーズになります。
4. 辛味(しんみ/からみ)
代表的な食材: ネギ類、生姜、ニンニク、紫蘇、唐辛子など。
主な働き:
発散(はっさん): 体表から汗を出させ、寒さを追い出します。寒気があるときに辛味の食材を摂ると、発汗を促して体温を調節します。風邪のひき始めには、生姜湯などが効果的です。
行気・行血(こうき・こうけつ): 気や血液の流れを促進し、滞りを解消します。辛味の食材は、血流を良くすることで体を温め、冷えや血行不良の改善に役立ちます。特に冬など寒い時期には、辛味を取り入れることで体を温めることができます。
5. 鹹味(かんみ/塩辛い味)
代表的な食材: 牡蠣、ナマコ、イカ、貝類、海藻類など。
主な働き:
軟堅(なんけん): 硬くなったしこりや結節を柔らかくする作用があります。鹹味は体内の硬化した部分を柔らかくして、治療の助けとなります。たとえば、関節の硬化やしこりのある症状に使われます。
瀉下(しゃげ): 体内の不要な物質を排出する作用があり、下剤のように便通を促します。これは体の中に溜まった毒素や老廃物を取り除くのに有効です。
滋陰(じいん): 体を潤し、乾燥を防ぐ作用があります。鹹味は、潤いが不足しているときに摂ると、体をしっかり潤わせることができます。
※甘味と鹹味は同じ読み方なので、混ざらないように
6. 淡味(たんみ)
代表的な食材: はと麦、トウモロコシの髭、冬瓜、白菜、白身魚など。
主な働き:
淡滲利湿(たんしんりしつ): 体に優しい利尿作用があり、体力を消耗せずに余分な水分を排出します。淡味は穏やかに体の水分バランスを調整するのに役立ちます。体がむくんでいるときに、淡味の食材を摂ると効果的です。
※体に優しい味です。
7. 甘酸味(かんさんみ)
概要: 酸味と甘味を組み合わせると、体の中で潤いを生み出す効果があります。これは「酸甘化陰(さんかんかいん)」と呼ばれ、体に潤いを与えるために重要です。
代表的な食材: スイカ、苺、梨、すもも、柿など。これらのフルーツには甘味と酸味が自然に含まれており、体を潤す効果があります。
作用: 例えば、はちみつレモンは、汗をかいた後に失った潤いを補うのに効果的です。単に水を飲むよりも、甘味と酸味を組み合わせたものを摂ることで、体が効率よく潤います。
8. 五味と臓器の関係
五味はそれぞれ特定の臓器に作用し、体のバランスを整えます。
酸味: 肝(かん)に影響し、肝の機能を助けます。
苦味: 心(しん)に影響し、心臓を整えます。
甘味: 脾(ひ)に作用し、消化機能を助けます。
辛味: 肺(はい)に作用し、呼吸器系を強化します。
鹹味: 腎(じん)に影響し、腎臓の機能を高めます。
このように五味は、それぞれが異なる臓器に影響を与え、全身のバランスを調整します。中医学の薬膳理論では、これらの味を上手に組み合わせて、体調や季節に合った食事を作ることが推奨されています。食材の選び方や調理法を工夫することで、健康を維持するための強力なツールとなります。