【謎】八卦の残りの2つ、震(しん)と艮(ごん)が六淫に対応しない理由
今回は易経における八卦の残りの2つ、震(しん)と艮(ごん)が六淫に対応しない理由を考察しながら説明します。これらは六淫に直接当てはまらない要素を持つため、中医学の六淫の概念からは外れていますが、八卦全体の自然観には深く関わっています。
1. 八卦の全体像と六淫との対応
八卦には以下の8つの象徴があります:
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2. 残りの2つ(震と艮)が六淫に含まれない理由
(1) 震(雷)
象徴:動きの始まり、成長、発芽。
理由:雷は主にエネルギーの発動や季節の切り替わりを象徴しますが、それ自体が人体に直接的な病邪となることは少ない。
補足:
雷の音や振動は、人間の精神に影響を与えることがあり、「七情(怒・喜・憂・思・悲・恐・驚)」と関連付けられることがあります。
(2) 艮(山)
象徴:静止、終わり、安定。
理由:山は自然界の「停止」や「安定」の象徴であり、病邪としての性質を持ちません。人体に影響を及ぼすのではなく、気の流れを止める性質として考えられることがあります。
補足:
病理的には、山の象徴は「気滞」や「停滞」に関連することがありますが、六淫の動的な病因とは異なります。
3. 六淫と八卦の根本的な違い
(1) 六淫:病因に特化した概念
六淫は、中医学の病理学における外因性の邪気として、自然界の異常な気候が人体に及ぼす影響を説明します。これは動的で病因として作用するものに限定されています。
(2) 八卦:宇宙と自然の象徴
八卦は、宇宙全体の構造や自然界のあらゆる現象を象徴します。動的なもの(震・巽)や静的なもの(艮)、根本的な要素(乾・坤)も含むため、全体的な視点で自然を表現します。
(3) 六淫で八卦を表しきれない理由
六淫は「人体に影響を及ぼす病因」という制約の中で作られているため、自然界の象徴全体(八卦)を表現するには不十分です。
震(雷)や艮(山)は直接的な病因ではなく、エネルギーの発動や停滞の象徴であり、六淫の病理的枠組みには含まれません。
4. 八卦全体と中医学の関係性
八卦の全体像は、中医学の気血陰陽や五行の概念を補完します。震や艮は、直接病邪に関連しなくても、人体の気血の流れや精神の安定における象徴的な役割を果たします。
震:春の芽吹きや活動の始まり、肝の疏泄機能に類似。
艮:冬の静止や蓄積、腎の貯蔵機能に類似。
5. 震と艮の応用例
(1) 震(雷)の応用
精神的影響:
雷のような強い刺激が「驚き」として人体に影響を与える場合、七情の「驚」に関連。これにより気の乱れが生じることがあります。
(2) 艮(山)の応用
停滞と安定:
艮は気の停滞や循環のブロックとして病理的に解釈される場合があります(例:気滞、血瘀)。
また、精神的安定や休息を象徴するため、瞑想や養生の中で静的な「艮」の要素が重視されます。
6. 六淫に八卦を補完する意義
八卦全体を考慮することで、六淫だけでは説明しきれない自然現象や人体の反応を理解できます。特に精神面やエネルギーの動的・静的なバランスを重視する場面で役立ちます。
まとめ
八卦と六淫は、どちらも自然界の現象を象徴的に表現していますが、その焦点は異なります。六淫は人体に害を及ぼす病邪を中心に捉え、八卦は宇宙と自然のすべてを包括的に説明します。震と艮が六淫に含まれない理由は、それらが病因として直接的に作用するのではなく、自然界や人体のエネルギーの動きや静止を象徴するからです。六淫と八卦を相互に補完することで、より深い中医学的理解が得られます。