【消化器系は中医学で七衝⾨】中医基礎理論
「七衝門(しちしょうもん)」について、さらに詳しく解説いたします。この概念は消化器系の構造における「7つの門」を指し、食べ物が体内に入ってから排泄されるまでの消化プロセスを段階的に示しています。各門は独自の役割を担い、消化の重要なステージでトラブルが生じやすい箇所として捉えられています。
七衝門の詳細な解説
1. 飛門(ひもん) — 唇
役割:飛門は唇に相当し、消化プロセスの最初の入口です。食べ物が体に入る前に、唇が開閉して食物の取り入れを調整します。
トラブルの起こりやすさ:唇の状態は消化器の健康と深く関係しています。唇が乾燥していたり荒れている場合、消化器が弱っている兆候とされることが多いです。たとえば、口唇の乾燥や亀裂は胃の乾燥(胃陰不足)や脾の虚弱(脾気虚)と関連づけられます。
2. 戸門(ともん) — 歯
役割:戸門は歯を指し、食べ物を噛み砕く場所です。咀嚼は物理的な消化の第1段階であり、ここで食物を細かくして消化しやすくします。
トラブルの起こりやすさ:歯の健康は脾の気と関わりが深く、噛む力が弱まると消化が不完全になりやすくなります。歯が弱っている場合、食べ物を十分に咀嚼できず胃腸に負担がかかり、食後の重だるさや消化不良の原因となることがあります。
3. 吸門(きゅうもん) — 喉頭蓋(こうとうがい)
役割:吸門は喉頭蓋(こうとうがい)に位置し、食物を飲み込む際に気管と食道を分ける重要な部位です。喉頭蓋がしっかりと閉じられないと、食べ物が気管に入ってしまうリスクがあります。
トラブルの起こりやすさ:高齢者や胃腸の機能が弱い人は、喉頭蓋の筋肉が緩んで誤嚥しやすくなります。誤嚥(むせ)は、気管に食物が入るために起こり、咳き込みや窒息のリスクが増えます。この誤嚥は、胃腸の虚弱や腎精不足によるものと関連しています。
4. 噴門(ふんもん) — 胃上口
役割:噴門は食道から胃に食物が通る部分で、胃酸や胃液が分泌され、消化が進むポイントです。このプロセスは中医学では「腐熟」と呼ばれ、食物を粥状にして消化を容易にします。
トラブルの起こりやすさ:逆流性食道炎や胃酸過多の原因となる場所でもあります。食道から胃に食物が送られる際、胃酸が過剰に分泌されたり、噴門が正常に閉じないと、胃酸が食道に逆流し、逆流性食道炎を引き起こすことがあります。
5. 幽門(ゆうもん) — 胃下口
役割:幽門は胃から小腸(十二指腸)に食物が送り出される部位で、消化物が小腸に入る際のゲートです。小腸で消化がさらに進み、栄養や水分の吸収が行われます。
トラブルの起こりやすさ:幽門の異常は消化不良やガス、膨満感の原因となります。たとえば、胃の機能が低下していると、食物が胃内で長時間滞り、胃もたれや膨張感を引き起こします。さらに、胃から小腸への移動が遅れると、消化吸収がうまく進まず、胃腸の働きに影響を及ぼします。
6. 闌門(らんもん) — 小腸と大腸の境目
役割:闌門は小腸と大腸の境目に位置し、食物の残渣(かす)が大腸へと移る場所です。ここで大腸は水分を吸収し、便を固めていきます。
トラブルの起こりやすさ:ここでの異常は便秘や下痢、腸内環境の悪化に関係します。腸内の水分バランスが崩れると便が硬くなり便秘を引き起こしやすく、逆に水分吸収が過剰に行われないと下痢につながります。また、腸内フローラが乱れると、便が固まらずに下痢になりやすくなります。
7. 魄門(はくもん) — 肛門
役割:魄門は消化の最終段階である肛門に相当し、便を排泄する役割を担います。大腸で形成された便が、ここを通って体外に排出されます。
トラブルの起こりやすさ:便秘、痔、下痢といった肛門のトラブルが生じやすい場所です。肛門の働きが弱ると排便困難が起こり、便が硬くなって排出が困難になり、痔を引き起こすこともあります。逆に、腸が過敏に働くと下痢が続き、肛門に炎症を引き起こすこともあります。
七衝門と中医学的な見方
七衝門は、消化器全体の健康状態を示す指標として考えられます。これらの門がスムーズに機能することで、体内の「気」や「血」が円滑に流れ、消化・吸収・排泄が滞りなく行われます。中医学では、これらの門に異常がある場合、消化器系全体の「気」の巡りや「陰陽」のバランスが乱れていると判断されます。
気の滞り:消化器官のどこかで気が滞ると、食欲不振、胃もたれ、便秘などの症状が現れやすくなります。食べ物がうまく流れないことで胃腸の調子が悪くなり、七衝門の各部位でトラブルが発生します。
陰陽のバランス:消化器系の陰陽バランスが崩れると、消化が適切に行われず、胃腸に熱がこもる(陽過剰)と胃痛や胃酸過多が生じ、冷え(陰過剰)と便秘や胃もたれが起こるとされます。
まとめ
「七衝門」は、食物が体内に入ってから排泄されるまでの各段階を示す7つの要点です。これらの門は、消化管全体の健康に大きく関わり、各門が正常に機能することで、スムーズな消化・吸収・排泄が行われます。
中医学の観点では、これらの門にトラブルが起こる原因は、「気」や「陰陽」の不調が体内に及ぼす影響とされ、消化器系の問題を治すことで全身の健康も改善されると考えられています。