【どう違う?】漢方薬処方の急性症状と慢性症状の見極め!

漢方治療において、急性症状と慢性症状を見極め、それぞれに適した治療法を選ぶことはとても重要です。これにより、患者の体調に応じた的確なアプローチが可能となります。こちらについて解説します。基本的に中医学を知らない人は急性症状は西洋薬を使うことが多いですが、漢方薬でもいけますのでやっていきます。

1. 急性症状と慢性症状の見極め

漢方では、病気の進行や症状の現れ方を「急性」と「慢性」に分け、それぞれに異なる治療法を適用します。

1.1 急性症状

  • 特徴: 突発的に現れ、短期間で進行する症状です。風邪の初期症状や急性の炎症が代表的な例です。急性症状は、体に異変が生じた時に一時的に正気が消耗され、体が反応している状態です。

  • 治療の方針: 急性症状には速やかに対応する必要があります。症状が体の表層(例えば風邪や熱)にある場合は、早く治療を行って体のバランスを整えます。例えば、葛根湯は風邪の初期に用いられ、体を温めて汗を出し、寒邪(寒さによる病邪)を体外に追い出します。

  • 使用期間: 急性症状に対する漢方薬は短期間の使用が基本です。長期にわたって服用すると、逆に体に負担をかける可能性があります。

1.2 慢性症状

  • 特徴: 長期間続く症状や、繰り返し現れる体の不調です。慢性的な疲労、ストレスによる症状、長引く病気が含まれます。慢性症状は、正気の不足や体の内部のバランスが崩れていることが原因です。

  • 治療の方針: 慢性症状には根本的な改善が求められます。体質を整え、五臓のバランスを取り戻すために、漢方薬を継続的に服用することが効果的です。例えば、杞菊地黄丸は、目の疲れや視力低下の改善に用いられ、継続使用によって効果を発揮します。また、逍遥顆粒はストレスや情緒不安定の症状を緩和するのに役立ちますが、こちらも継続して使うことで体質改善を図ります。

2. 病気の進行を「表裏」で見極める

漢方では、病気の進行を体の外側(表)と内側(裏)で見て、症状の深さや重症度を判断します。

  • 表証(ひょうしょう): 病邪が体の表面にある状態です。風邪を引いたばかりの時や、急性の炎症が体の表層にある場合を指します。表証の場合、発汗療法や体を温める方法を使って邪気を追い出します。

  • 裏証(りしょう): 病邪が体の深部、内臓や体の内側にまで進行している状態です。慢性的な病気や体内の機能が低下している時は、裏証に分類されます。この場合、内臓を温めたり、体のエネルギーを補ったりする治療が必要です。

3. 六経弁証や衛気営血弁証を用いる

これらは病気の進行状態や症状の位置を判断するための理論です。

  • 六経弁証: 病気が体のどの層に影響を及ぼしているかを判断します。これは特に急性の病邪の進行を見極める時に役立ちます。

  • 衛気営血弁証: 病邪が体のどの部分に影響しているのかを分析する方法で、特に慢性の病気や複雑な症状を理解するために用います。
    ※詳しくは中医診断学と中医基礎理論で。

4. 正気(気血津液)の有無を見極める

正気とは、体の基本的なエネルギーや健康を保つ要素である「気」「血」「津液」のことです。これらがバランスよく体内を巡っていると、健康が保たれます。正気が不足すると、病邪に対する抵抗力が弱まり、病気が進行しやすくなります。

  • 気(エネルギー): 活力や生命力。これが不足すると、疲れやすくなり、免疫力も低下します。

  • 血(血液や栄養): 体に栄養を与えるもの。血が不足すると、貧血や冷え、肌の乾燥などの症状が現れます。

  • 津液(体液): 体を潤す要素。津液が不足すると、乾燥症状や便秘、むくみなどが生じます。

正気が十分にあるかどうかを見極めることで、漢方薬が短期間で効果を発揮するか、あるいは継続的に使用が必要かを判断します。

5. 漢方薬の使い方と継続服用の重要性

  • 急性の症状には、即効性のある漢方薬を短期間で使用する。

  • 慢性の症状には、継続的な服用が必要です。例えば、疲れ目の改善に杞菊地黄丸を頓服的に使用する人もいますが、慢性的な目の問題がある場合は、継続して使用する方が良い結果を得られます。同様に、逍遥顆粒も気分のムラや情緒不安定に一時的に使用するのではなく、長期間の使用が効果的です。

6. まとめ

  • 急性症状: 短期的な使用で症状を緩和する。表にある病邪を早く追い出すことが重要です。

  • 慢性症状: 継続的に漢方薬を使用して体質を改善する。体の内側からバランスを整え、正気を補うことを目指します。

  • 病気が急性か慢性かを見極め、それに応じて漢方薬を適切に選ぶことが、効果的な治療に繋がります。

このように、病気の性質や進行状況に応じて漢方薬を使い分けることが、体全体の調和を保つために重要です。

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