【寒冷蕁麻疹になりやすい人や治し方】中医診断学
今回は寒冷蕁麻疹について、中医学的に解説します。
1. 寒邪と寒冷蕁麻疹の関連
寒冷蕁麻疹は、寒邪(寒冷の邪気)が体に入り込んで皮膚や体表面に悪影響を及ぼすことから起こります。この「寒邪」が皮膚や毛穴に侵入すると、外界の寒冷刺激に対する体の防御機能が崩れ、気(体内エネルギー)の流れが滞り、蕁麻疹が現れます。具体的には、寒冷の刺激によって皮膚の表面が急激に収縮し、血流が妨げられるため、発疹やかゆみが生じます。
2. 肺と大腸の関係
中医学では、肺と皮膚は密接に関連し、特に肺の「宣発(体表に水分を分配する作用)」と「衛気(外邪に対する防御)」の作用が重要視されます。寒冷蕁麻疹の症状が出る背景には、肺の気が不足している可能性があり、これにより外邪に対する防御機能が低下しやすくなります。また、肺と密接に関係する大腸の働きが弱ると、体内の水分代謝や排泄に問題が生じやすく、寒冷蕁麻疹が慢性的になりがちです。
3. 寒冷蕁麻疹に適した治法
温陽散寒法:冷えた体表面を温め、寒邪を取り除くことが基本です。
補肺益気法:肺の気を補うことで皮膚表面の防御力を高め、寒邪の影響を受けにくくします。
活血通陽法:血行を促進し、体を温める生薬を使用することで、寒冷に対する耐性を強化します。
4. 寒冷蕁麻疹に効果的な漢方薬と生薬
桂枝湯(けいしとう):体表を温め、風寒を払い、発汗を促すことで寒邪を取り除きます。寒冷蕁麻疹による冷えと皮膚の痒みを緩和するのに適しています。
麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう):強い寒邪に対して、温陽散寒の作用が強く、体を深部から温めるための処方です。虚弱な体質で冷えが強い場合にも適しています。
生姜湯:シンプルながら即効性があり、体を温める効果があります。発汗を助けるため、軽い寒冷蕁麻疹には飲用としても使えます。
5. 寒冷蕁麻疹に適した食養生
体を温める食材:ショウガ、シナモン、ネギ、山椒などの温性食材が役立ちます。体温を高め、血流を促進することで寒冷蕁麻疹の症状を軽減します。
肺の潤いを補う食材:梨や白キクラゲ、豆乳などが肺を潤し、皮膚の乾燥や敏感さを和らげます。
寒冷蕁麻疹としもやけは似てる?
寒冷蕁麻疹としもやけには共通点がありますが、症状の現れ方や発症メカニズムにいくつか違いがあります。
共通点
寒邪が原因:どちらも寒さが主な原因で、寒邪によって血行や気の巡りが悪くなることが影響しています。
体表に症状が現れる:皮膚の表面に痒みや赤み、腫れといった症状が出る点で似ています。
血行不良の影響:どちらも寒さによる血行不良が関係し、血液が十分に巡らず、冷えや腫れが発生します。
違い
症状の現れ方
寒冷蕁麻疹:寒い空気や冷たい水に触れた直後に、皮膚表面に赤い発疹やかゆみが急激に現れます。症状は一時的で、温まると徐々に治まることが多いです。
しもやけ:しもやけは長期間の冷えや血行不良が原因で、指先や耳たぶなど末端部に腫れや赤紫の色が現れ、痛みやかゆみを伴うことが多く、寒冷期に長く残る傾向があります。
発症のメカニズム
寒冷蕁麻疹:寒さにより皮膚の免疫細胞が急激に反応し、ヒスタミンが放出されることで、かゆみや発疹が発生します。
しもやけ:寒さによる血管の収縮・拡張が繰り返されることで、血流が悪化し、血液や水分が末端に滞りやすくなることで腫れが生じます。
発生場所
寒冷蕁麻疹:全身のどこにでも発生する可能性がありますが、冷えた部分に集中的に出やすいです。
しもやけ:主に手足や耳たぶ、鼻先など、末端部に発生しやすいです。
中医学的な対策
寒冷蕁麻疹:温陽散寒を意識し、血行を促進する「桂枝湯」などの温める生薬を使うことが効果的です。
しもやけ:血行不良に加えて水分代謝も関わるため、「当帰四逆湯」など、血行促進とともに体を温める漢方薬が推奨されます。
寒冷蕁麻疹としもやけは、どちらも寒さが原因で発生するため似て見えますが、発症のメカニズムや症状の持続性に違いがあるため、中医学的にはそれぞれに合った治法を組み合わせていくとより効果的です。
寒冷蕁麻疹やしもやけは衛気が不足している?
寒冷蕁麻疹やしもやけに対しては、寒邪に対する「衛気(えいき)」が不足している可能性が考えられます。衛気は、体表を防御し、外邪から体を守る役割を持つため、寒邪に対する抵抗力が不足していると、寒さが体に入りやすくなります。また、衛気の不足は、体表の保温機能が低下し、寒さに敏感になり、寒邪による症状が出やすくなる原因ともなります。
さらに、衛気不足と共に気虚の要因も絡んでいる可能性が高いです。気が不足すると、血の循環も悪くなり、末端への血流が届きにくくなるため、寒さがしもやけや寒冷蕁麻疹の発症に関わってきます。
衛気不足や気虚に対する対応
衛気を強化する:
黄耆(おうぎ)や防風(ぼうふう)など、体表を強化し、外邪から体を守る力を高める生薬が役立ちます。
代表的な処方として、「玉屏風散(ぎょくへいふうさん)」などが衛気を補い、外邪を防ぐために用いられます。
気を補う:
気虚を補うために、**人参(にんじん)や党参(とうじん)**など、気を補う生薬を取り入れるとよいでしょう。
「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」は気を補い、免疫力を高める働きがあり、寒さに対する抵抗力を養うのに役立ちます。
寒さに対する免疫力を高めるための生活習慣
食事:温性の食材(生姜、ニラ、ネギなど)を取り入れることで、体を温め、寒邪を寄せつけない体づくりをサポートします。
適度な運動:運動によって気血の巡りが良くなり、末端の冷えを防ぐことができます。
お灸:特に足三里などを温めることで、体全体の気の巡りが良くなり、寒さに対する抵抗力が強くなります。
衛気を高め、気虚を補うことで、寒さに対する防御機能を高め、寒冷蕁麻疹やしもやけの予防と緩和に効果的です。
まとめ
寒冷蕁麻疹は、体を温めて風寒を取り除き、肺を補って体表の防御力を高めることが基本です。症状が現れた際は、上記の生薬や漢方薬を取り入れ、日頃から温める食材で寒邪に負けない体づくりを心がけるとよいでしょう。