【食料と空気の分けれ道】咽頭について 登録販売者第二章消化器系補足③-2
咽頭(いんとう)は、口腔と食道、また呼吸器系の気管とをつなぐ重要な通路で、消化器系と呼吸器系の両方に関わっています。咽頭の働きや構造、役割などについて、さらに詳しく見ていきましょう。
咽頭の概要
咽頭は、鼻腔と口腔の後方にあり、食べ物と空気が通る交差点のような役割を果たす部位です。上から順に鼻部、口部、喉頭部に分かれ、これにより呼吸と食物の経路が区別されています。
位置と構造:咽頭は頭蓋の底部から始まり、首の後ろを通って、下部で食道と気管に分岐します。咽頭の長さは約12〜14cmです。
消化と呼吸の分岐点:食べ物は消化器系に、空気は呼吸器系に送られるため、咽頭は重要な「分岐点」として機能します。
咽頭の構造と区分
咽頭は上から以下の3つの部分に分かれています:
鼻部咽頭(びぶいんとう)
鼻腔の後ろに位置し、空気が通る通路です。
耳管(じかん、ユースタキアン管)と呼ばれる管が耳に通じ、鼓膜内の圧力を調整します。耳管は耳の換気を行うことで、内耳と外耳の気圧を同じに保ちます。
口部咽頭(こうぶいんとう)
口腔の後方に位置し、食べ物と空気の両方が通ります。
扁桃(へんとう)があり、免疫防御として細菌やウイルスの侵入を防ぐ役割を持ちます。特に口蓋扁桃(こうがいへんとう)は、口を開けたときに喉の奥に見える部分で、感染防御に大きく関わります。
喉頭部咽頭(こうとうぶいんとう)
喉頭蓋(こうとうがい)という軟骨が喉頭の上に位置し、飲み込む際に喉頭を塞ぐことで食べ物が誤って気管に入るのを防ぎます。
空気は喉頭を経由して気管に入り、肺へと送られます。
咽頭の働き
咽頭は、食べ物と空気を適切な経路に導くため、咽頭の各部分が連携して働いています。
1. 飲み込み(嚥下)における咽頭の役割
嚥下反射:食べ物が口腔から咽頭に入ると嚥下反射が起こり、自動的に食べ物が食道に送り込まれます。嚥下反射は、舌が食塊(咀嚼して唾液と混ぜた食べ物の塊)を押し出すと開始され、咽頭の筋肉が連携して食べ物を食道に送り込む運動を開始します。
喉頭蓋の閉鎖:嚥下反射と同時に、喉頭蓋が気管を閉じて食べ物が誤って気管に入るのを防ぎます。これにより、食べ物が食道に送り込まれ、窒息を避けられます。
2. 呼吸における咽頭の役割
空気の通路:空気が鼻腔や口腔から入り、咽頭を経て気管に送られます。鼻部咽頭から空気が通ることで、吸い込んだ空気が適度に加湿・加温され、肺に送り込まれる準備が整います。
耳管の換気:鼻部咽頭にある耳管の開口部は、唾を飲み込んだりあくびをしたりすると開閉し、耳の換気や気圧調整を行います。特に気圧の変化が大きい飛行機内などでは、耳管を開くことで耳の詰まりを防げます。
3. 免疫防御
扁桃の役割:咽頭にはリンパ組織である扁桃が存在し、細菌やウイルスに対する免疫機能を持っています。
口蓋扁桃:食べ物や空気とともに侵入する病原菌を防御し、感染リスクを軽減します。
咽頭扁桃(アデノイド):鼻から入る細菌やウイルスをキャッチし、特に子どもの免疫機能において重要です。
嚥下(飲み込み)のメカニズム
嚥下には3つの段階があり、それぞれに咽頭が関与しています。
口腔段階:舌が食塊を後ろへ押し出し、咽頭へと送り込む段階です。この段階は意識的に行われます。
咽頭段階:嚥下反射が起こり、無意識のうちに喉頭蓋が気管を閉じ、食塊が咽頭から食道に移動します。この段階は自動的に行われ、喉頭蓋が適切に閉じることで誤嚥を防ぎます。
食道段階:食塊が食道に入り、蠕動運動で胃へ運ばれます。
咽頭と誤嚥(ごえん)
誤嚥とは、食べ物や液体が誤って気管に入ってしまう状態で、咽頭や喉頭蓋の働きが低下すると誤嚥が生じやすくなります。嚥下反射や喉頭蓋の閉鎖機能が正常に働くことで誤嚥が防がれますが、高齢者や神経障害がある場合、これらの機能が低下しやすくなります。
窒息のリスク:誤って気管に食べ物が入ると窒息のリスクがあります。咽頭や喉頭蓋が正常に機能することで、食べ物が食道に入るように導かれます。
誤嚥性肺炎:高齢者や嚥下機能が低下した人では、誤嚥が原因で肺炎を引き起こすことがあります。食べ物や唾液が気管に入り、肺に到達して炎症を引き起こします。
咽頭の筋肉と蠕動運動
咽頭の筋肉は嚥下において重要な役割を果たし、蠕動運動によって食べ物を食道に押し出します。咽頭の筋肉は、口部咽頭から喉頭部咽頭にかけて連動して収縮し、食塊を下方向に押し出します。この一連の動きが嚥下反射と共に働き、食べ物が確実に食道へ移動します。
咽頭に関連する疾患
咽頭は様々な疾患の影響を受けることがあります。咽頭や周辺組織の健康は、嚥下や呼吸に直結するため、適切なケアが必要です。
扁桃炎
口蓋扁桃が細菌やウイルスに感染すると、扁桃が腫れて痛みが生じます。口蓋扁桃は感染防御を担いますが、感染が強いと炎症が生じやすくなります。
咽頭炎
ウイルスや細菌が原因で咽頭に炎症が生じる病気です。風邪の症状の一部としても発生し、喉の痛みや腫れが特徴です。