【疑問】肝風内動の「風」と「風邪(ふうじゃ)」は違うのか?

中医診断学で出てきた「肝風内動(かんぷうないどう)」の「風(ふう)」というのは何者か気にならないでしょうか?当初私は六淫の邪気なのかなと思いましたが、いわゆる外因性の風邪(ふうじゃ)とは異なります。ここでの「風」は体の内部で自然に生じる動的なエネルギーの乱れを指し、外から侵入する風邪(ふうじゃ)とは別の概念です。内部で起こる「風」が、勝手に動くような症状を生むとされます。

肝風内動とは何か

「肝風内動」は、肝のエネルギーが不安定になることで、体内に風が発生し、体が意図せず動くような症状が現れる状態です。この「風」は以下のような要因で内部から生じるとされます。

  1. 肝血不足(肝血虚)
    肝は「血を蓄え、全身に送り出す」働きがありますが、肝の血が不足すると、その流れが不安定になり、風が生じやすくなります。肝の血が十分であれば気血の巡りもスムーズで安定しますが、血虚になるとエネルギーのバランスが崩れ、風が内部で生じることで、震えやけいれん、頭の揺れが現れることがあります。

  2. 過剰な熱や陽気(肝陽上亢)
    怒りやストレスが溜まると、肝に熱がこもりやすくなり、体の陽気が過剰になるとされます。この過剰な熱や陽気が、肝のエネルギーのバランスを崩し、内部に「風」が発生します。これにより、頭が熱くなり、手足が震えたりする「肝風内動」の症状が出やすくなります。
    ※お年寄りがブチギレるのは肝熱が高まって陽気が過剰になること。血と津液が足りなくなり血虚陰虚傾向になることで熱がてさらに悪化することが考えられます。別記事でまとめました。

  3. 陰陽のアンバランス(特に陰虚)
    陰のエネルギーが不足すると、体が過剰に熱を持ちやすくなります。陰虚になると、体が冷静に保てなくなり、体内に風が生じやすくなります。特に高齢者に多い症状で、内部の風が動くことによって、頭が勝手に揺れたり、手足がけいれんしたりします。

肝風内動の「風」と風邪(ふうじゃ)の違い

  • 風邪(ふうじゃ)は外因性のものとして、季節や気候の影響で体に侵入してくる病因です。例えば、冷たい風にさらされて風邪を引くなどの外からの影響を受けたものが風邪です。

  • 肝風内動の「風」は、体の内部で自然に発生する動的なエネルギーの乱れや不安定さを指します。この内部の風が生じると、勝手に震えたりけいれんしたりといった症状が出現します。外因性の風邪とは違い、内部のバランスが乱れた結果として発生する風です。

まとめ

肝風内動の「風」は、体内での気血の乱れや陰陽のアンバランスによって生じる、内部的なエネルギーの動揺です。外部から侵入する風邪とは異なり、肝風内動の風は、体の内部での気血やエネルギーの循環が不安定になった結果として生まれる「動き」を象徴しています。

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