【月経周期の異常を正常に】中医婦人科学と養生法
中医学的にみる4つの周期の特徴
月経周期は中医学では、気血や陰陽のバランスの変化として捉えられます。これにより、各周期に応じて体の状態が変化するため、それぞれに適した漢方薬の選択や食事養生が重要となります。月経周期は大きく分けて「月経期」「卵胞期」「排卵期」「黄体期」の4つの段階に分かれ、それぞれの段階で異なる養生法を実践することが体調維持や月経リズムの安定に役立ちます。
1. 月経期(陽盛転陰:ようせいてんいん)
特徴と中医学的見解
月経期は、中医学で「陽盛転陰」の時期とされています。これは、陽(温かいエネルギー)が盛んだった高温期から陰(冷たいエネルギー)が強くなる低温期への移行を意味します。この時期は、子宮内膜が剥がれて排出される経血の排泄期にあたり、体内で血と気が大きく動く時期といえます。具体的には、基礎体温でみると高温期から低温期へと移行し、体温が急に下がるのが一般的です。この変化が正常に起こるためには、血と気の巡りが整っていることが大切です。
養生法
月経期は「活血理気」の時期です。これは、血と気の流れをスムーズにし、経血をしっかりと排泄することで次の子宮内膜が健康に形成されるための準備を行うことを意味します。具体的な養生方法としては、次のような対策が推奨されます:
活血作用の漢方薬
月経期には血の巡りを良くする活血作用のある漢方薬が使われます。桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)や当帰(とうき)などの成分が含まれた漢方は、経血の排出を助け、滞りを防ぎます。理気作用の食材
理気作用のある食材として、生姜やねぎなどを取り入れることで、体内の気を巡らせ、経血がスムーズに排泄されやすくなります。温める養生
月経期は体を冷やさないことが大切です。温かい飲み物や温かい食材を摂るようにし、下腹部を冷やさないよう心がけましょう。生姜湯や温かいスープが良いとされています。リラックス
血流や気の巡りを助けるため、心身ともにリラックスすることも大切です。体を動かしすぎず、ゆったりとした時間を過ごし、ストレスを避けることも役立ちます。
2. 卵胞期(陰血滋長:いんけつじちょう)
特徴と中医学的見解
卵胞期は「陰血滋長」の時期とされ、低温期に該当します。この時期は、陰が増え、卵胞が育つ期間です。中医学では「陰精充盛(いんせいじゅうせい)」とも呼ばれ、陰を補って血を充実させることが特に重要とされています。陰と血が充実することで、健康な卵胞が形成され、正常な排卵の準備が整います。このため、卵胞期には陰と血を養うことが特に重視されます。
養生法
卵胞期には「滋陰養血(じいんようけつ)」の養生が適しています。陰と血を養うことにより、卵胞の発育をサポートし、排卵が順調に進むようにします。妊活中の方にとっては特に重要な時期であり、養生に気を使うことで体調を整えやすくなります。
滋陰養血作用の漢方薬
滋陰養血作用がある漢方薬として、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)などが推奨されます。これらは血を補い、陰を養い、卵胞の成長を助けます。夜更かしを避ける
卵胞期に夜更かしをすると陰が消耗されてしまいます。特にこの時期だけでも早めに寝ることで、体内の陰を守り、健康な卵胞の発育をサポートすることができます。
※子午流注という理論があって、夜の11時~3時までは肝胆系を休ませた方が良いとされます。肝胆は血を作成するのでこの時間に夜更かしをすると陰(血と津液)を消耗してしまうという理屈です。補血食材の摂取
ほうれん草やレバー、ベリー類など、血を補う食材を積極的に摂ることで、陰と血を養います。また、冷たい食べ物や飲み物は陰を消耗するため、この時期は避けるように心がけましょう。
3. 排卵期(陰盛重陰:いんせいじゅういん)
特徴と中医学的見解
排卵期は「陰盛重陰」とされ、陰から陽に変わる時期とされています。この時期は、陰が盛んになり、体内の変化が陽へと向かうことで排卵が促されます。この変化は「化気転陽(きかてんよう)」とも呼ばれ、陰から陽への転換に伴い、気と血の巡りが重要になります。排卵期には、体が大きく動くため、血流が十分に整っていることが排卵のスムーズな進行に関係します。
養生法
排卵期の養生は、陰から陽に移行する動きをサポートするため、「活血」「理気」「補腎」が重要です。排卵がスムーズに起こるようサポートすることで、妊娠の準備が整います。
活血と理気作用の漢方薬
排卵期には、血流と気の巡りを整える活血と理気作用のある漢方が効果的です。冠元顆粒(かんげんかりゅう)や桂枝茯苓丸、芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん)などが使用され、排卵をサポートします。補腎作用の養生
補腎作用も重要であり、腎を養うことで生殖機能を整えます。腎に働きかける食材として、山芋やクルミ、桑の実などが適しています。排卵期特有の症状に対応
排卵痛や排卵期の不調がある場合、活血や理気作用の漢方を使用することで、血流を促し痛みを和らげます。妊活中で排卵が不安定な方には、気血の巡りを改善することで排卵のタイミングが安定しやすくなります。
4. 黄体期(陽気生長旺盛:ようきせいちょうおうせい)
特徴と中医学的見解
黄体期は「陽気生長旺盛」の時期で、体温が高温に維持される時期です。この時期には陽気(体を温めるエネルギー)が盛んになり、体温が上昇して高温を保ちます。体内では妊娠の準備が整えられ、プロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌されて子宮内膜が厚くなります。黄体期に陽気が十分に充実していると、冷えが防がれ、妊娠に適した状態が作られます。
養生法
黄体期の養生は「補陽」が中心となります。体を温めることで妊娠の準備が整い、生理前の不快な症状も和らげられます。
補陽作用の漢方薬
補陽作用のある漢方として、温める性質を持つ四物湯(しもつとう)や八味地黄丸(はちみじおうがん)が使用されることがあります。これらは陽気を補い、体を温めることで体温を高温に維持し、妊娠準備やPMSの軽減に効果があります。※四物湯単体ではださなく、四物湯が入った漢方疏肝理気でのストレスケア
生理前のイライラや情緒不安定には、疏肝理気作用が有効です。加味逍遙散(かみしょうようさん)などの漢方薬を使い、気の巡りを良くして心身を落ち着かせます。黄体期に気が滞ると、PMSの症状が強く出る場合があるため、ストレスケアも重要です。温かい食材の摂取
温かい食材を摂ることで体を冷やさないようにします。生理前には温め作用のある食材(生姜、シナモン、羊肉など)を取り入れることで、体を内側から温め、血流を良くします。
まとめ
中医学では、月経周期を「月経期」「卵胞期」「排卵期」「黄体期」の4つに分け、それぞれに異なる気血や陰陽の動きを理解することで、適切な養生法を行うことが重要とされています。これにより、月経周期を安定させ、健康を維持し、妊娠しやすい体質を整えることが期待されます。