【子宮筋腫・子宮内膜症】中医婦人科学
今回から子宮筋腫と子宮内膜症について解説します。西洋医学と中医学の双方の視点から病態、原因、症状、対策を深掘りします。
1. 西洋医学的に見る子宮筋腫
① 子宮筋腫とは
定義: 子宮平滑筋から発生する良性の腫瘍で、女性の最も一般的な婦人科疾患の一つ。
発症率: 生殖年齢の女性の20~40%が経験する。
成長因子: エストロゲン依存性であり、閉経後には自然に縮小することが多い。
② 子宮筋腫の特徴
主な部位:
筋層内筋腫(子宮筋層に存在): 最も多いタイプ。
粘膜下筋腫(子宮内腔に突出): 出血や月経異常を引き起こす。
漿膜下筋腫(子宮外側に発育): 周囲臓器への圧迫症状。
症状:
月経過多、過長月経に伴う貧血。
下腹部の圧迫感や痛み。
排尿障害や便秘(腫瘍の位置により)。
治療法(西洋医学的アプローチ)
経過観察(無症状の場合)。
薬物療法: ホルモン療法でエストロゲン抑制。
手術: 筋腫摘出術や子宮全摘。
2. 西洋医学的に見る子宮内膜症
① 子宮内膜症とは
定義: 子宮内膜に似た組織が子宮以外の部位で増殖する疾患。
発症率: 生殖年齢の女性の10~15%に見られる。
成長因子: エストロゲン依存性で、閉経後に軽減する傾向。
② 子宮内膜症の特徴
主な発生部位:
卵巣(チョコレート嚢胞)。
骨盤腹膜、ダグラス窩、膀胱や直腸など。
症状:
強い月経痛(進行するほど悪化)。
性交痛、排便痛。
不妊(卵巣や卵管への影響)。
治療法(西洋医学的アプローチ)
痛みの管理: 鎮痛薬(NSAIDs)。
ホルモン療法: 排卵を抑制する薬剤。
手術: 病変の除去や癒着の解消。
3. 子宮筋腫と子宮内膜症の症状の比較
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特徴子宮筋腫子宮内膜症主な症状月経過多、下腹部圧迫感強い月経痛、不妊、性交痛症状の周期性月経周期に依存しない月経周期に依存する発症部位子宮筋層、内腔、外側子宮外(卵巣、腹膜など)ホルモン依存性エストロゲン依存エストロゲン依存
4. 中医学的に見る子宮筋腫と子宮内膜症
共通する病機(中医学的視点)
瘀血(おけつ): 血流が停滞し、血液が正常に循環しない状態。
気滞(きたい): ストレスや感情の乱れが原因で気の流れが滞る。
痰湿(たんしつ): 余分な湿気や老廃物が体内に溜まり、気血の流れを妨げる。
子宮筋腫の中医学的病機
瘀血: 筋腫が硬く、経血に塊がある場合。
痰湿: 筋腫が柔らかく、湿気が多い体質の場合。
気滞: ストレスや情緒不安が影響。
子宮内膜症の中医学的病機
瘀血: 強い月経痛、経血に暗赤色の塊。
気滞: 月経前の胸脇部の張りや不快感。
肝火: イライラ、不眠、頭痛が伴う場合。
5. 体質別中医学的対策
① 気滞(きたい)
特徴: ストレスや感情の乱れが原因。
症状: 月経前のイライラ、胸脇部の張り、気分の落ち込み。
治療法:
処方例: 逍遥散(しょうようさん)、柴胡疏肝散(さいこそかんさん)。
養生: リラクゼーション、適度な運動、感情コントロール。
② 瘀血(おけつ)
特徴: 血流が滞り、経血の塊や痛みが見られる。
症状: 月経痛、暗赤色の経血、刺すような痛み。
治療法:
処方例: 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、冠元顆粒。
養生: 温かい食事、冷え対策、適度な運動。
③ 痰湿(たんしつ)
特徴: 体内に余分な湿気や老廃物が蓄積。
症状: 下腹部の腫れ、むくみ、肥満傾向。
治療法:
処方例: 平胃散(へいいさん)、二陳湯(にちんとう)。
養生: 甘いものや脂っこいものを控える。
6. 養生法(中医学的アプローチ)
食事:
温かい食べ物を摂る。
黒い食品(黒ごま、黒豆、黒きくらげ)や木の実を積極的に摂取。
甘いもの、脂っこいもの、冷たい飲食物を控える。
運動:
気血の巡りを良くするため、ウォーキングやストレッチを取り入れる。
ストレス管理:
リラクゼーション(深呼吸、瞑想)や趣味を活用する。
体を冷やさない:
腰や下腹部を温める(腹巻き、温かい飲み物)
結論
子宮筋腫と子宮内膜症は、西洋医学ではホルモン依存性疾患として管理されますが、中医学では瘀血、気滞、痰湿が主因とされます。
中医学的アプローチでは、体質に応じた漢方薬と養生法を組み合わせることで、症状の緩和と再発予防を目指します。