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希少疾患について調査

希少疾患の概要

・6,000 から 8,000 種類ある

・これらのうち 70%以上は遺伝性疾患であり,小児から発症することが多い。

・希少疾患それぞれの患者数は少ないが、希少疾患に罹患している患者総数は世界人口の3.5~5.9%に相当する2億6,300万人~4億4,600万人と推定されており大規模。

・2016年から2020年までの過去5年間に承認された新有効成分含有医薬品のうち、希少疾病用医薬品が占める割合は日米欧でそれぞれ30.6%、49.6%、36.4%あった。

希少疾病用医薬品は今後増えていくのか?

2020 年にまとめられた報告書では、以下の理由から希少疾病用医薬品の承認件数は今後日本を含む全世界で増加していくと予想されている。

1.遺伝子技術をはじめとした技術革新が進んでいること
2.高度かつ有用性の高い個別化医療も実現してきていること

これらのことから希少難病に対する革新的な医薬品の創出が可能となってきていることを挙げている。

医薬産業政策研究所. “希少疾病用医薬品(Orphan drug)の開発動向 -FDA で承認されたOrphan drug の日本での開発状況の分析-.” 医薬産業政策研究所 (2020)

患者数が少ない希少疾病に対する医薬品の開発が進まない理由

・患者数が少ないために通常の臨床試験の方法の適用が難しい場合がある
・市場性が小さいために投資回収が容易でない

希少疾病用医薬品を含む新薬開発を支援する制度

希少疾患の治療を目的とした医薬品を希少疾病用医薬品に指定し,開発を支援する制度がある
→患者数が少ない或いは指定難病の疾患に対する医療上特にその必要性が高いかつ開発の可能性が高い医薬品に対して指定を受けることができる。

日本では1993 年より制度が開始された。
米国では 1983 年、欧州では 2000 年から同様の制度が設けられている。

日米欧の希少疾病用医薬品指定制度

希少疾病用医薬品に該当する患者数

【日本】
患者数5万人未満(人口に占める割合は0.04%未満)
【米国】
患者数20万人未満(人口に占める割合は0.06%未満)
【欧州】
人口1万人当たりの患者数が5人未満(人口に占める割合は0.05%未満)

その他条件

日本のみ「開発の可能性」が指定要件に含まれており,対象疾病に対して当該医薬品等を使用する理論的根拠があるとともに,その開発に係る計画が妥当であると認められることも求められる。

開発支援の内容

【日本】
助成金交付
優先対面助言
優先審査
再審査期間の延長
税額控除などの優遇措置を受けられる

【米国及び欧州】
表 1-1-1 に示す優遇措置が受けられる。

先駆け審査指定制度について

日本では,希少疾病用医薬品を含む,重篤で治療法のない疾患に対する革新的な新薬を早期に実用化するため,2015 年には先駆け審査指定制度が開始され,2020 年には先駆的医薬品等の指定制度として法制化された。
米国のブレークスルーセラピー指定(2013 年開始),及び欧州の PRIME 制度(2016 年開始)も同様の制度。

医薬品条件付き早期承認制度/新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度について

日本にある制度で、希少疾病用医薬品でも活用することができる。

希少難病に対する革新的な医薬品

1.核酸医薬品

遺伝子の構成成分である核酸と類似した構造を持ち、特定の遺伝子配列を標的としてその遺伝子から作られるタンパク質の産生を調節することで作用する薬。
核酸医薬品により従来の低分子医薬品では難しかった疾患の治療が可能になると期待されている。

例:ビルトラルセン
遺伝性筋疾患であるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(筋ジストロフィーは指定難病)の治療薬。
2020年に日本と米国で承認された核酸医薬品で、現在は日米欧で希少疾病用医薬品の指定を受けている。

2.再生医療等製品

2021年6月時点で日本では25品目が希少疾病用再生医療等製品指定を受けている。
希少がんの領域では近年の革新的な分子生物学的解析法の進歩により、これまでの発生臓器・病理形態分類とは別にゲノム情報によるがんの分子分類が可能になりつつある。
一部のがんでは単一の遺伝子変異ががん発生の直接の原因(driver)であることが明らかとなってきた。

例:エヌトレクチニブ
neurotrophic tyrosine receptor kinase (NTRK) 融合遺伝子陽性の進行・再発の固形がんに対する承認を 2019 年に日本及び米国で取得しており、希少な遺伝子変異を有する固形がんに対しがん種を問わず使用が認められている。

薬効評価について

課題として希少疾病用医薬品を対象とした検証的な臨床試験では対象患者が少ないことにより仮説検定に対して十分な検出力を確保する症例数で試験を実施できない疾患の重篤性によりプラセボ対照を置くことは倫理的に不可能である等が挙げられていた。
しかし,近年公刊されたガイドラインや報告書はこの課題の解決に一定の示唆を与えている。

【米国】 Rare Diseases: Common Issues
in Drug Development

2019年1月に米国食品医薬品局(FDA)から Rare Diseases: Common Issues
in Drug Developmentがドラフトガイダンスとして公刊された。
ガイダンスの目的として希少疾患領域におけるより効率的かつ効果的な医薬品開発プログラムの実施の支援が挙げられている。


【米国】 Interacting with the FDA on Complex Innovative Trial Designs for Drugs and Biological Products

同年 9 月には Interacting with the FDA on Complex Innovative Trial Designs for Drugs and Biological Productsが公刊された。
このガイダンスは主としてベイズ流アプローチを用いた革新的な試験デザインに焦点が当てられている。

【日本】 希少がんの臨床開発を促進するための課題と提言に関する報告書

医薬品医療機器総合機構(PMDA)の外部機関である科学委員会
2017年 11月に希少がんの臨床開発を促進するための課題と提言に関する報告書が作成された。
→希少がんの臨床試験デザインとしてベイズ流アプローチ等を用いた先進的デザインの利用について触れられている。

【日本】 日本医療研究開発機構のタスクフォース

試験開始前に日本の規制当局と協議すべきベイズ流アプローチの利用に関連する規制上の問題点を整理しつつ、その利用が望まれる臨床試験を挙げた成果物が作成されている。

希少疾病用医薬品の治療効果の推測に関する統計手法及び最近の適用事例について

統計担当者を対象に統計手法に対する数理的解説を含め,希少
疾病用医薬開発に関連するガイダンスや適用事例の紹介は医薬品開発に携わる担当者を広く対
象読者としている。

引用:https://www.jpma.or.jp/information/evaluation/results/allotment/jtrngf000000085m-att/ds_202212_rare.pdf

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