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自治体総合百貨店時代の終焉
この記事はパブラボからの転載です。
僕は現在、43歳。2002年に大学院を修了し、日経BP社へ記者として入社した。理工学部出身ということもあって、日経エレクトロニクスという専門誌で記者として社会人生活をスタート。日経エレクトロニクス編集部に在籍したのは5年だったけど、今振り返ってみると、ちょうど2000年代初頭は、日本のエレクトロニクス・メーカーがピークを迎えた時だった。液晶テレビ、プラズマテレビ、DVDレコーダー、次世代光ディスク(現在のblu-ray)、デジカメ、携帯電話機とあらゆるデジタル家電のトレンドは日本が生み出していた。
冒頭に、2000年代初頭のエレクトロニクス業界の話を持ち出したのには、ワケがある。この時、日本のエレクトロニクス業界は押し寄せる時代の変化、産業構造の変化に対応できず、その後の凋落を招いてしまったんだけど、日本の自治体が今、直面している状況は当時のエレクトロニクス業界とよく似ているのだ。
垂直統合から水平分業へ、体が頭についていかなかった
少し、エレクトロニクス業界を振り返ってみよう。記者になって2年目か3年目のころだったのだけど、編集部内で「垂直統合か、水平分業か」という議論があって、特集記事として取り組もうという話が持ち上がった。垂直統合とは端末からOS、ミドルウエア、ソフトウエアとすべてを自前で開発するスタイルのことで、水平分業とは、自社が手がける部分は限定し、ほかは外部へアウトソースするという考え方のこと。アナログの時代は垂直統合モデルで一気通貫に開発することが企業の競争力の源泉だったから、水平分業型へ移行するのは勇気の要ることだった。
なぜ、「垂直統合か、水平分業か」という議論が起きたのかといえば、デジタル化の時代を迎え、商品やサービスの開発環境が変化しつつあったから。製品のデジタル化はすなわち、部品さえ買ってくれば、基本的にはハードはよく似た商品になってしまうことを意味していた。自社のコア技術だけを残し、その他は外部リソースを活用するのが水平分業の考え方。アナログ時代のすり合わせの技術で世界を接見した日本メーカーにとって、水平分業への移行は頭では分かっていても、体がついていかなった。アナログ時代の成功体験はことの外大きく、デジタル化時代の新しい事業構造への転換が遅れてしまった。
このエレクトロニクス業界が直面した産業構造の変化と同じことが今、自治体に起こりつつある。自治体は従来の垂直統合型、つまり全ての行政サービスを自前で提供する総合百貨店モデルでは立ち行かなくなっているのだ。2018年7月に自治体戦略2040構想研究会(総務省)が取りまとめた資料にもそのことがはっきりと書かれているし、2019年8月に経済産業省が発表した「21世紀の「公共」の設計図」にも、公共の担い手が多様化していくことが明記されている。
そこで求められているのは、かつてのエレクトにクス業界と同様、水平分業型の都市経営への移行だ。ポイントとなるのは、公共サービスのオープンイノベーション。オープンイノベーションとは、「異なる分野の技術やアイデア、ノウハウ、データを持ち寄って、新しいサービス、商品を開発すること」を指し、主に産業界でイノベーションを起こすための手法として使われる言葉。経済産業省が初めて、「オープンイノベーション白書」を発刊したのが2016年、第2版を出したのが2018年であり、国もオープンイノベーションの重要性をうたい出しているところでもある。