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#21 「私」を形造る言葉 ①仕事編
この見出し絵はAIに描いてもらったのですが、人型の下の方に少し大きい字で「nune」と書いてありますね。
どういう意味だろうと思って調べてみると、ナイジェリアの言語(ハウサ語)で「見せる」という意味だそうです。
偶然にも自己開示的な本文内容と合っているので、そのまま使っちゃいました(笑)。
さて、私はつくづく、人間の精神とは自分に向かって投げかけられた言葉によって造られているなぁと思います。というのも、私の場合、何かの折にはある特定の言葉が頭をよぎり、行動を決めてしまうことがあるからなんですね。
本シリーズでは、私の行動に影響を与える言葉を挙げていきたいと思います。
田中芳樹著『銀河英雄伝説』から
どんな言葉が私を形造っているだろう?と考えたとき、最初に出てきたのはこの作品の言葉でした。
『銀河英雄伝説』…初版からもう40年近く経つのに、今なおアニメ化、舞台化されて愛され続けるSFの名作です。
あらすじ
舞台は、はるか未来、広大な宇宙。人類は銀河帝国と自由惑星同盟の二派に分かれ、膠着した戦乱を繰り広げていた。しかし奇しくも同時期に両陣営に現れた2人の英雄によって、銀河の歴史は大きく動き出す…
という、壮大なスケールの群像劇。
主人公は、銀河帝国のラインハルト・フォン・ローエングラムと、自由惑星同盟のヤン・ウェンリー。
物語は、専制君主国家と民主国家の対立、それぞれの内部の腐敗と変革を描きながら、帝国側の優勢で進んでいきます。
名言登場の場面
物語中盤、帝国はいよいよ同盟を滅ぼさんとして、その領内深くに侵攻します。
これに対し、同盟軍司令官ヤンは、ゲリラ戦で対抗。業を煮やした帝国軍総司令官ラインハルトは、麾下の軍団を同盟領の多方面に分散侵攻させ、あえて自軍を手薄にさせます。帝国の中心人物であるラインハルトただ一人を斃せば帝国は瓦解するとみている同盟軍が、この機を見逃すはずがない。ラインハルトは自らを囮にしてヤンをおびき寄せ、時間稼ぎをする間に分散した麾下の軍団を終結させて同盟軍を包囲殲滅する作戦を立てたのでした。
ヤンもその作戦を看破したうえで、それに乗じます。こうして、同盟としては分散した帝国軍が集結する前にラインハルトを斃せば勝ち、帝国としては味方が戻ってくるまで耐えれば勝ちという構図で、野心と存亡をかけた「バーミリオンの戦い」の火蓋が切って落とされました。
戦闘は当初、ラインハルトが巧みに時間稼ぎをする展開となりますが、その打開策を見出したヤンが反撃、ラインハルトを討ち取るチャンスを作りますがその時…!
ラインハルトの部下・ミュラーの艦隊が救援に駆け付け、ラインハルトの命を救います。
振り出しに戻される形の同盟軍。ややもすれば戦意を喪失しそうなこの状況に、ヤンの幕僚・アッテンボローが、こうつぶやくのです。
一個艦隊の加勢がついて逃げ出すほど、うちの司令官は負けっぷりは良くないはずだがなぁ……。ミラクル・ヤンのお手並みをまた拝見したいものだ。
どうでしょう、この全幅の信頼感、そして楽観性。
この一言は、本作品の名言として私にしっかりと刻まれ、今や仕事に追われ逃げ出したくなるような場面で脳内再生されています。
あなたを信じる、最も身近な人
牛の獣医をやっていると、ハードな重労働を強いられることがあります。
牛は大きいので、とにかく重く、何をするにも体力を削られます。
先日などは、早朝に呼び出され、「子宮脱です!なんとかして!」からスタート。
子牛が生まれるときに、子宮が反転して外部に出てきてしまうことがあるのですが、すごい圧力で外に出ようとする子宮を腕力で押し込み、整復し、なんなら再発しないように縫合するという施術で対応します。
この時点で結構クタクタなのですが、この状況から通常業務が始まります。
「さーて、今から人工授精を5頭やって、治療が全部で8頭か」
なんて今日のToDoを考えて気合を入れ直していたら、追い打ちが来る。
「第4胃変位です、右方変位!手術お願いします!」(専門用語ですが、いろいろキツい状況とご理解ください)
うひゃー…
これら全て、代わりにやってくれる人はいない。
今この状況に対処するのは自分の職責。
そんな時に、私の頭にはアッテンボローのセリフが再生されます。
「手術が1個オンされて逃げ出すほど、お前は負けっぷりはよくないはずだがなぁ…」
そして、全部片づけるには、と改めて段取りを考え直し、
「ぬぅーー、持ってこいやーー!」
となるのです。
まあ、これは極端な例ですが、でもこんな状況ってありませんか?
仕事が忙しく疲労感もある中、新たな、しかも重い仕事がオンされる。
私は、製薬会社にいたときも、しょっちゅうこんな状況に見舞われました。
このアッテンボローはもう一人の自分であり、自分を信じて励ましてくれる最も身近な人は、自分なのです。
次から次に押し寄せる仕事を前に、時に苦しみを覚えることもありますが、自分ならクリアできる。そう考えるきっかけをくれる、大切な言葉となっています。(続く)
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