「神がかり!」第21話後編
第21話「人柱」後編
木刀を握ったまま巨漢に対峙し――
視線だけを御端 來斗に向けた嬰美は緊張感漂う堅い声でそう答えていた。
「ふふん、”試合では”……ね。なるほど……」
相変わらず御端 來斗は愉しそうにニヤけている。
「で、どうする?”試合では”弟より腕が立つ波紫野 嬰美ちゃん」
無邪気とさえ見える蜂蜜色の髪の美少年のどこか侮蔑した言葉に、嬰美は紅い唇を噛み締める。
「…………やっぱり、御端 來斗はただの暴漢や異常犯罪者だわ」
悔しげにそう吐き捨てた、流れる様な長い黒髪の少女は木刀を床に落とした。
――カランッ!
乾いた音をたてて、彼女の頼みの綱は床の上に転がる。
「素直で何より。あまり手間をかけたくないんだよ、今はね……」
御端 來斗の足元には気絶したままの男子生徒がいた。
彼はいつの間にかその場所に移動し、倒れて気を失った生徒の首に足を乗せて――
”いつでもへし折れる”
と嬰美にアピールしていたのだ。
「…………」
無論、その男子生徒は波紫野 嬰美が率いてきた剣道部の一人である。
「卑怯な……六神道の面汚し、こんな戦い方しか……」
そんな言葉にも、御端 來斗は微塵も気に留めず端正な口を歪めて開いた。
「いわいえっ!!」
嬰美が軽蔑の言葉を言い終わる前に來斗の怒号が響き渡った!
ガバァァァーーー!
「っ!」
御端 來斗のかけ声と同時に、眼前の巨体が掲げていた両手を勢いよく振り下ろし――
ガシィィ!!
「なっ!?」
グローブのような無骨な両手の平は……
勢いよく振り下ろされ、嬰美の僅かな双房の膨らみ上に無遠慮に重ねられる。
「動くなよっ、波紫野 嬰美!折るぞ!!」
「く……」
嫌悪と恥辱に顔を引きつらせ耐える長い黒髪の少女。
「が……がが……」
そして、ゴリラのような男の芋虫を連想させる太い指が、彼女の小さめの膨らみを遠慮無く制服の上から握りつぶした。
「くっ!……う……は……」
痛みと恥辱で頬を染め、整った顔を歪める少女。
「良い顔するじゃないか?嬰美ちゃん……はは……そんな粗末な胸でも感じるのかい?」
「こ……このっ!」
殺気の籠もった視線で御端 來斗を睨む少女だが、それ以外どうすることも出来ない。
「キミは言ったよね?御端の……僕の”天孫”は戦闘に役に立たないって。はは……そうだよ、御端の”天孫”は他の六神道のためにある謂わば脇役…………わきやく?」
「……う……はぁ……ぁぁ……」
強力無比な握力でギリギリと胸を鷲掴みされ、息も絶え絶えな少女は……
蜂蜜色の髪の男が見る見る変わりゆく表情に言葉を失っていた。
「はは……僕が?この僕が脇役?…………ふふ……」
「……み……は……ら…………いと?」
「あり得ないんだよっ!この売女がっ!この僕が!御端 來斗が脇役なんて現実がなっ!」
キィィィーーーーーン
「はぅ!」
刹那!岩家の両手の平から嬰美の身体の中に何かが走り抜け……
彼女の全身に味わったことの無い衝撃が……その感覚に支配される!
「な……なにっ?……ぁ!……なんな……の……あぁ……あぁぁぁっ!」
巨漢に掌握された彼女の双房を起点にビクリ!ビクリ!と白く華奢な少女の身体が何度も跳ねた。
「あぁ!ひゃぅっ!ふぁぁあぁぁぁーーーー」
流れる様な彼女自慢の艶やかな黒髪が何度も振り乱れ、
ビクンッ!ビクンッ!と白い四肢が休む間もなく痙攣し続ける。
「……ぁ…………ぅぅ……やめ……ぁ……」
やがて精神的にも殆ど抵抗できなくなった波紫野 嬰美。
ガシッ!ガシッ!
その彼女の慎ましい胸に対し、岩家の無骨な指が圧迫と弛緩を繰り返す程に……
「あ……はぁ……やめ……いや……」
少女のそれは”ぐにぐに”と形を変え、その都度ポンプに供給されるが如くに彼女の中に”なにか”異物が流れ込んでゆく。
「……く……ふぅ…………ぁ……あぁ」
そしてその”なにか”が新たに流れ込む度に――
「…………ぁぁ…………ぁ…………」
彼女の自我は曖昧になっていった。
「…………」
――
やがて――
波紫野 嬰美の毅然とした顔立ちは、トロンと熱を帯びた瞳と上気した頬の無防備な発情期の様な娘の顔に変貌し、自重を支えることの出来なくなった頼りない下半身の膝が折れて崩れる。
「…………」
完全に重力に身体を預けてしまった彼女は岩家の図太い両腕に鷲掴みにされた両の胸を起点に背中側に仰け反ってくの字に力尽きた。
「はは、汚れた雌の表情がお似合いだな、波紫野 嬰美。だが、これからだ……これからだよ嬰美、いや六神道!……教えてやるよ、御端の……僕の”天孫”……”三柱”にはどんな優れた使い方があるかってことをなっ!!」
その時、心と同じ歪んだ御端 來斗の端正な顔立ちは、確かに人とは思えぬ邪悪そのものであった。
第21話「人柱」後編 END
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