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日本で最後のトロリーバスにお別れを告げてきた

ファァァアアアーー……!!

11月某日。
そんな電車のような不思議な走行音をかき鳴らし、狭いトンネルの中を爆走していく乗りものに私は乗っていました。

その名はトロリーバス

上部に張られたトロリー線から電気を取り入れて走る、日本では「立山黒部アルペンルート」でのみ採用されている珍しいバスです。

しかしこちらの日本で唯一無二のトロリーバスですが、諸事情により2024年11月での運行終了が決まりました。

そこで先日、ラストランを迎える直前のトロリーバスに乗るべく、立山黒部へと行ってきました!


バスへのアクセスは、標高3000m

室堂駅から風景
富山湾が見えるわん

日本で唯一のトロリーバスは富山県の「室堂~大観峰」間を結んでいます。
そのひとつ、室堂駅は標高2450mに位置しています。

はい

標高2450mです。

そう。日本最後で唯一となるトロリーバスは富山の名峰「立山」の3000m級の山々を貫くトンネルの中を走っているのです。

バスに乗りに行くためのアクセスの難易度が高いって、どういうこと……。

ですが安心してください!

「立山トンネルトロリーバス」は、富山県と長野県を結ぶ山岳観光ルート「立山黒部アルペンルート」のひとつ。
ケーブルカーなど各交通機関を乗り継ぐ形で、黒部ダムや立山連峰の絶景などを気軽に楽しめることができるのです。

今回私は富山側から長野側へと抜けるルートを選択し、webで片道切符を事前購入しておきました!

お値段は割引がきいて1万円弱(+新幹線などの往復代)
ちなみに旅の目的のトロリーバスの乗車時間は約10分

やれやれ。

楽しくなってきたぞ

一気に立山を駆けのぼる

旅の起点「電鉄富山駅」

出発当日の朝。新幹線で富山駅にやってくると、そこから富山地方鉄道に乗って立山のふもとへと向かいます。

「ばい貝のうま煮」
旨味がしみこんだ貝のこりこり食感がたまらない

もちろん電車の中では地酒でカンパイ!
ヒャア、朝からたまんねぇぜ!!

立山駅

立山駅に着くと、事前購入していた切符を発券してケーブルカーに乗車。

「立山黒部アルペンルート」の長旅の始まりです!

貨物車を連結した珍しいケーブルカー。昔は観光バスを載せ、今でもスキー・スノボーといった手荷物などを載せることがあるそうです。
見頃は過ぎたけど、紅葉がまだまだきれいでした

途中、美女平からは高原バスに乗り換え、一気に標高2450mにある室堂駅に向かって山道を進みます!

ちなみに私は幼少期にも立山を訪れているのですが、その頃は冬期で、道の両端に雪の壁がそびえる名物「雪の大谷」を見られました。

なるほど、雪がないとこんな風景が見られるんだなーと思っているうちにバスは室堂駅に到着しまし……

寒----!!

当然そこは高山の世界。
バスを降りた途端、一足飛びで迎えにきてくれた寒気にぶるりと体が震え、今年初めて自分の口から白い息が出ました。

えらいとこにやってきたなぁ!と感慨に耽りつつ、いよいよ旅の本番、トロリーバスへと乗りこみます!

公共交通機関の皮をかぶったジェットコースター

肝心の室堂駅の写真ですが、乗り換え時間が迫って慌てていたこともあり、まったく撮れておらず……。

中は山小屋を大きくしたような雰囲気で、ホカホカとした空気の中レストランや土産屋がひしめきあっていて、たくさんの観光客や登山客で中はいっぱいでした!

時間になり、トロリーバス乗り場へ!
あちこちに何気なく記載されている「トロリーバス」の文字も、来年にはもう見られないんだなぁとしみじみ。

ぞろぞろ……

係の人に案内されてホームに行くと、

トロリーバスとご対面!
子供の頃に乗って以来、実に十数年ぶりの再会でもあります!

これは後ろから見たところ。
上部に張られたトロリー線に向かって、背部からポール(集電装置)が伸ばされています。

乗車口には感電を防ぐための「アース球」

先ほどから「室堂」と書いていましたが、実はトロリーバスの正式名称は「無軌条電車

電車線(トロリー線)から電気を受けてモーターで走るトロリーバスは法律上も「電車」に分類されている、レールを走らない電車なのです!

運転席の写真

バスに乗りこんだ時、座席はすでに満席でしたが、おかげでバスの一番前に立つことができました。

バスは三台あり、乗車したのは最後尾。
時刻になると前の車両がぞくぞく出発していくのを見届けてから、「ファン」とクラクションを汽笛一声。

いよいよ出発です!

出発した途端、「ヒュィィィィ……!」という独特の加速音。
そう普段乗っている電車と同じ走行音がするのです!

そしてカーブを抜け直線に入ると……一気に加速!!

うおおおおお強烈なGが体にかかるぅぅぅ!!

狭いトンネル内を爆発的な加速力で爆走していく様は、もはや公共交通機関の皮をかぶったジェットコースターです

ギュイ、ギュイッ、と次から次へとカーブを突破!
前を走るバスのポールからは、バチッと青い火花がほとばしる!

ひぃぃぃいいいなんだこれ、楽しいッ!

ちなみに路線は単線なので、途中にはこのように行き違い信号場があり、対向車と写真のようにすれ違う場面も。

短いようで長く感じて、やっぱり短かった10分間。
アトラクションでの興奮が冷める間もないままトロリーバスはやがて終点の大観峰駅へと着いてしまいました……。

大観峰駅到着

混雑していたので写真撮影とお別れを手早くすませ、ホームを離れました。

大観峰駅

部品の調達が困難などの理由から、今シーズンでの引退が決まったトロリーバス。

海外ではまだまだ走っている国もあるけれど、日本ではこれで終わりと思うとやっぱりさみしいですし、その乗り心地はあらためて唯一無二の乗り物でした。

今年で最後!日本一高所のクルーズ船に乗る

黒部ダム

その後は乗り物を乗り継ぎ、黒部ダムへ。
ダム湖である黒部湖では「日本一の高所クルーズ」と呼ばれる観光船ガルベに乗りました。

観光船ガルベ

そして実はこのガルベも老朽化などを理由に今期で廃止に。
この旅行記を書いた一週間前に運航終了となり、55年の歴史に幕を下ろしました。

ガルベから黒部ダム方面
黒部湖の風景

遊覧船を楽しんだ後、黒部ダムからはいよいよアルペンルート最後の乗り物の電気バスに乗って長野県へ。

こうして人生二度目となる「立山黒部アルペンルート」の旅が終わりました。

そして、お別れ

たとえ10分でも、現実離れさせてくれた唯一無二の乗り心地。
それが日本でもう味わえなくなると思うと、やっぱりさみしい。

でも廃止に至るまでの流れにはきっと、私には想像できないような苦労などがあったはず。だからせめて、今までの運行の歴史とがんばりに敬意を表したいと思います。

楽しい旅をありがとうございました、トロリーバス。

黒部湖にて。
限定ラベルの地ビールでカンパイ!

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