JR東日本パスの旅_0日目②「出雲から、サンがライズする東へ」
こんにちは、結城弘です。
こちらは昨年10月、JR東日本乗り放題切符「JR東日本パス」を使って東日本を周遊してきた旅行記です。
なのになんで西日本にいるかについては、前回の記事をお読みください。
1.松江城へ
終点の出雲まで行かず、松江駅で特急やくもに別れを告げます。
せっかく島根まで来たのだから、出雲といわず松江や宍道湖も巡ってやろうという魂胆です。
まずは有名どころの松江城を目指すため、改札を出て観光案内所へ。散策マップをもらい、お城の堀を巡る遊覧船の乗船場の場所を教えてもらいます。
以前NHKの「新日本風土記」という番組で、松江が特集された際に紹介された堀川めぐりの遊覧船がなかなか面白そうで、松江に来たらまず乗ってみようと思っていました。
目指すは松江城。
目当ては遊覧船。
散策マップを手に、松江駅を出発。
道中、位置情報が常時わかるスマホのマップアプリは極力使わず、事前に頭に入れた脳内マップや現地で入手した地図を頼りに街を進みます。
これは決してデータ通信量をケチって月々のスマホの支払いを安く済ませようという浅ましい魂胆があるわけではありません。
機器に頼らず位置や方角を割り出したり、脇道の向こうに何やら面白そうなものを嗅ぎ取ったり、ときには道を間違えたりして思わぬハプニングも楽しむ、そういう旅の勘的なものを鍛えるという、高い意識による行動です。
さて、うまくデータ通信量をケチりながら宍道湖を見渡せるところまでやってきました。
松江城に向かう大橋を渡ります。
天気は快晴、空も水も澄み渡り、気持ちが良いです。
途中、偶然見つけた竹島資料室に立ち寄りつつ、目的地の松江城へとやってきました。
2.対局地決戦仕様可変式機動遊覧船
堀川にある乗船場に向かい、受付で遊覧船の乗船券を買います。
時間になり、乗船。
これから約50分ほどかけて松江城を囲むお堀をぐるりと巡ります。
船頭さんの解説とともに、船はゆったりと進みます。
その途中でカイツブリを発見!
琵琶湖とも馴染みの深い鳥で、滋賀の県鳥にも指定されているカイツブリとの思わぬ出会い。
滋賀県出身の私は思わず舞い上がって、
「私滋賀から来たんすよww」と船頭さんに謎の絡みをしてしまった気がする。記憶違いだと思いたい。
船は進みます。
時折、物珍しげに遊覧船を見ている観光客たちが堀沿いに佇んでいて、ノリのいい人たちはお互いに手を振りあったりします。
私もそれに倣い、観光客に向かってグッと親指を立てます。
修学旅行中の小学生がサムズアップで応えてくれました。めっちゃ嬉しい。
他にも乗船中の中学生のグループが、岸辺を歩く同じ学校のグループを見つけて言葉を交わしあったり。こういう光景、微笑ましいな。
さて、順調に進む遊覧船ですが、この堀川にはいくつもの橋がかけられており、中には明らかに船ではくぐれないだろうという高さの橋もあります。
では進路上に通行不能の橋が見えてきたらどうするか。
引き返すのか?
橋が目の前に迫ったその時、
「頭をお下げください」
というアナウンスとともに、船頭さんが手元のスイッチをパチリ。
船の屋根が下がり始めました!
充分屋根が下がりきった船が、悠々と橋下をくぐっていきます。
そう、これはただの遊覧船ではなかったのです。
松江城の堀川にかかる橋桁の低い橋をくぐるという目的に特化した、
松江型対局地最終決戦仕様可変式機動強襲揚陸軽巡洋遊覧船だったのです!
こういうギミック大好き人間な私。
思わず語彙力が脳内で艦隊編成を組みます。
松江城の堀川巡りの船は、堀にかかる橋の高さに応じて自由に屋根の長さを変えられるようになっていて、「新日本風土記」の番組でこの変形、いや変身する遊覧船を見て以来、松江に来たら絶対に乗ろうと思っていました。
動画が貼れないので、屋根が可変する様子はこちらの公式さんの動画からどうぞ。(屋根が動く様子は1:15頃~)
動画では屋根に合わせて女性たちがお辞儀するように優雅に頭を下げていますが、一番低い橋をくぐった時の様子がこちら⇩
ここまで来るとお辞儀というより人類は蛙と化します。
這いつくばりながら「もはやこれは用水路では?」と突っ込みたくなるような後半の橋を抜け、身も心も生活用水を泳ぐ蛙になりきった私たちは、出発地点へと戻ってきました。
いやごめん最高に楽しかったわ。
下船後は松江城、興雲閣と巡ります。
お腹が減ってきたので散策がてら飲食店を探す。
名物は「割子そば」らしいですが、「今日はそばの気分じゃないな」としばらく我慢することに。
松江しんじ湖温泉駅から畑電に乗り、出雲大社駅に向かいます。
ぶっちゃけあと1時間でも余裕あれば遊覧船にもう一回乗ってました。
じっくりコトコト走るローカル線
レトロな設備や駅舎
空腹と性癖に適度に刺激を受けつつ、出雲大社を訪れ、
再び畑電に乗って出雲市駅に向かう頃には綺麗な夕焼け。
途中、割子そばの幟や看板が見えましたが、「やっぱり今日はそばの気分じゃないな」とスルー。
3.フォークボールにご注意ください
本日の最終目的地、出雲市駅に到着しました。
この後ここから「アレ」に乗って、いよいよ東日本へ向かいます。
その前に1時間半ほど時間がありました。空腹に限界が来た私はご飯屋を探すことにします。地元の食材を使ったラーメンにしようか、それとも名物とは関係ないもので済ませようか。でも名物のしじみ食べてみたいし……
と、迷っていた私の目の前に看板が。
「のどぐろ 20㎝ 680円」
のどぐろは焼き物や煮物から自由に選んでいただけます、と案内板をかかげたお店の名は「居酒屋のどぐろ日本海」さん。
名物のしじみの酒蒸しもあるということで、思い切って入ってみます。
まず注文したのは地酒のセット。
一口含んだ瞬間、キリっとした味わいが通過したかと思ったら、後味でストン!
初めての味わいに戸惑いつつそれぞれに口をつけるも、そのたびにキリっとしてストン!
「なにこれ、フォークボールみたい」
意味不明だと思いますが、本当にそんな感じだったんですよ。これは実際に味わってもらったほうがいいです。とにかく独特で面白く、おいしいお酒たちでした。
※後日お酒好きの先輩に「後味でストンとくるお酒でした」と話したら、「お前、それ、フォークボールやんけww」と返ってきました。流石です。
奮発して注文した食べ物がどんどん来ます。
気づけばすっかり地元のお酒と食べ物を堪能。
しめは何にしようかとメニューを開いていたら、「割子そば」の文字。
……
「今日はそばの気分だったんだよねぇ!」
いい時間になったので、大満足のまま店を出ます。
本当においしかった。また来たい。
4.初乗車サンライズ出雲。東へ
18時48分。出雲市駅2番線。
いよいよ出雲まで遠回りしてきた最大の目的、「アレ」が入線してきました。
寝台特急「サンライズ出雲」東京行きです。
東日本パスを使うためにまずは関東に行くにはどうするか。
どうせなら今まで乗ったことがない手段にしようと思い、初めてとなるサンライズ出雲に乗って東京に向かうことにしました。
意外と入線から発車までの余裕がなく、写真を撮ると慌ただしく乗車します。まずは券売機でシャワーチケットを買ってから指定した部屋へ。
寝台列車といえば、昔「トワイライトエクスプレス」に一度乗ったきり、ワクワクそわそわしながら向かいます。
部屋は2階ソロ寝台、浜側(瀬戸内海側)です。
そしてついた瞬間、ワクワクが最高潮に達しました。
狭さと急峻さを極めた階段
天井に向かって大きく歪曲した窓
部屋というより隙間と呼べる空間
そこにいっぱいに敷かれたベッド
「秘密基地やん!!」
性癖を八つ裂きにされた私は恥も外聞もなく部屋に飛び込みます。
ネットでは「ソロは狭い」という意見もいくつか耳にしましたが、ちゃうねん、これや! これがええねん!
ひと通り悶えた後、ラウンジカーに移動して一息。
暗くて宍道湖は見えませんでしたが、日常の線路を非日常が走る空気を味わいながらしみじみと過ごします。
部屋に戻り、備え付けの寝巻きに着替え、ベッドに寝そべりながら明日の旅行の計画を確認します。
明日からはいよいよ「JR東日本パス」の旅。
東京駅でパスを発券した後は午後まで分刻みのスケジュール。1本の遅れも致命傷につながります。
まぁ、まずは到着までにサンライズ出雲を堪能することにします。
LINEで友人に旅の経過を報告。
すると返信が来て、
「最寄りの○○駅、サンライズ通過するから、近くで見送るよ」
とのこと。窓ごしに友人と手を振り合えるかもという思わぬイベントに旅情と興奮が最高潮に達します。
時間は少し早いですが仮眠をとることに。深夜は友人の見送り、早朝は富士山や太平洋が見えるかも、等々考えながら電気を消した瞬間、
天井に星空が広がっていました。
窓が大きく天井付近まで歪曲しているおかげで、普段の列車ではまず見えない星空を眺めることができたのです。ここにきてなんという贅沢。
動くプラネタリウムに揺られながら私は寝入っていきました。
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思った以上に揺れない電車
夜なのにやたらと多い車内放送
時折それらのことをまどろみの向こうに感じながら、私は目を開けました。
時刻は深夜。
出雲から南下し、とっくに倉敷や岡山も通過している時刻。
もう瀬戸内海沿いを走っている頃合いかなとぼんやりしている頭に、車内放送が飛び込みます。
「沿線火災のため停車しておりました。70分遅れで、まもなく倉敷です」
寝起きの頭が徐々に覚醒していき、そして、引く血の気。
明日は分刻みのスケジュール。一本の遅れも致命傷につながりかねない。
果たして無事に、東でサンのライズを拝めるのだろうか。
次回⇒
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ここまで読んでいただきありがとうございました。
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