ライカ50mmF2沈胴式レンズ比較:ズマール vs ズミタール vs ズミクロン | Summar vs Summitar vs Summicron | フィルム写真
ライカ50mmF2沈胴レンズの、ズマール、ズミタール、ズミクロンの比較をしてみました。外観の違いだけでなく、写りの違いもはっきり出て、なかなかおもしろい結果がでました。
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まずは外観の比較
ズマール、ズミタール、ズミクロンの3つのレンズの外観を比較してみたいと思います。
外観は似てるようで、かなり違います。ライカの初期のレンズは、焦点距離は50mmとは言わずに、5cmと言うんですね。
ズマールはこんなレンズ
ズマールは、1932年から1939年まで作られたレンズで、当時ではF2の最速のレンズとして発売されていました。このレンズ、よく「ひょっとこ」と呼ばれます。笑
レンズ設計は、6枚4群のダブルガウス。
絞り値は大陸絞りという昔の並びで、f2 -> 2,2 -> 3,2 -> 4,5 -> 6,3 -> 9 -> 12,5 の絞り値が書いてあります。一方、現代のほとんどのレンズでの絞りは、国際絞りという並びになっています。国際絞りから大陸絞りに変換するには、1/3を足してあげます。(例えば、5.6 + 1/3の絞り = 6.3というように)
絞りばねは6枚。絞るとランプの光などは丸く見えずに、6角形に見えます。
本来は、ズマールはレンズにコーティングがされていないんですが、このズマールは、山崎光学写真レンズ研究所で再研磨とコーティングをしてもらいました。
ズマールは、そのままではフィルターはつきません。SOOGZというアダプターを使うことで、39mmのフィルターを付けることができます。SOOGZに付いているネジをしめることで、SOOGZがレンズから外れにくくなります。
ズミタールはこんなレンズ
そして、ズミタールです。ズマールの後を継いだのが、ズミタールです。
ズミタールは1939年から1953年まで作られました。
レンズ設計は、7枚4群のダブルガウス。ズマールより1枚レンズが増えました。
絞り値は、一般的な 国際絞りになりました。f2.0 -> 2.8 -> 4 -> 5.6 -> 8 -> 11 -> 16の並びになっています。
ズミタールは10枚の絞り羽根があります。絞っても丸に近いですね。
SNHOOというねじ込み型のフィルターのアダプターで、39mmのフィルターを取り付けられるようになります。
ズミクロンはこんなレンズ
そして、ズミクロン。ズミタールの次の世代です。このレンズは、1953年から1960年まで作られました。僕が持っているのはバヨネットのMマウントです。
ズミクロンから、絞りがカチカチ動くようになりました。
レンズ設計は、7枚4群のダブルガウス。
ズミクロンになって、39mmのフィルターがアダプター無しに付くようになりました。
その他、外観の違い
左から、ズマール、ズミタール、ズミクロン。ズミクロンが一番短く、幅がある感じです。
ズマールとズミタールは、ネジ式のライカのスレッドマウント。バルナックライカ時代のレンズですね。ズミクロンは、スレッドマウントと、M型バヨネットマウントの2つが存在します。
スレッドマウントのレンズをM型のライカのカメラに装着するには、アダプターを使います。今回は、VOIGTLANDERブランドの50mm&75mmレンズ用の変換アダプターを使いました。
ライカM2のカメラに付けると以下ような見た目になります。
ズマールとM2:
ズマールとM2:
ズミクロンとM2:
ズマール、ズミタール、ズミクロンの描写の違い
ズマール、ズミタール、ズミクロンのレンズの描写の違いを比べてみます。カメラはLeica M2で、フィルムはKodak Tri-X。現像はKodak HC-110 (Dilution D)で行いました。撮影場所は、アメリカ、ボストンのパブリックガーデンです。
レンズの描写の違い(解放f2)
まずは解放f2でそれぞれのレンズの写りを比較してみます。
ズマール 1/125秒@f2:
ズミタール 1/125秒@f2:
ズミクロン 1/125秒@f2:
3つのレンズの写りを、拡大して並べて比較すると:
やはり、ズミクロンが一番シャープです。その次がズミタール、最後がズマールの順でシャープです。
レンズの描写の違い(f4)
絞りをf4にしてそれぞれのレンズの写りを比べてみました。
ズマール 1/250秒@f4:
ズミタール 1/250秒@f4:
ズミクロン 1/250秒@f4:
絞りをf4の時の3つのレンズの写りを、拡大して並べて比較すると:
ここでもズミクロンが一番シャープですね。2番目がズミタール、3番目がズマールといったところでしょうか。
レンズの描写の違い(f5.6)
絞りをf5.6にしてそれぞれのレンズの写りを比べてみました。
ズマール 1/30秒@f5.6:
ズミタール 1/30秒@f5.6:
ズミクロン 1/30秒@f5.6:
絞りをf5.6の時の3つのレンズの写りを、拡大して並べて比較すると:
かなり違いますね!
右の木にフォーカスを合わせているんですが、フォーカスが合っている部分はどれも同じくらいシャープです。でも、背景のボケがそれぞれのレンズで違っているようです。ズミクロンがボケが一番少なく、ズミタールが一番ボケが大きいです。ズマールは中間ぐらいのボケ具合。同じ絞りなのにボケがかなり異なるのはおもしろいですね。
まとめ
ということで、ズマール、ズミタール、ズミクロンと3つのレンズを比較してみました。
ズマールは、解放f2では一番ソフトな写りのレンズでした。ズマールは、やっぱりf5.6以上に絞るとベストなレンズだと思います。f8にしてパンフォーカスで撮るというのも良いですね。ズマールは、晴れの日にしっかり絞ってバンバン撮るというスタイルが合っているんじゃないかと思います。
ズミタールは、背景が一番ボケるレンズでした。ボケを生かした写真を撮りたい場合はこのレンズが一番かもしれません。あと、クラッシックな写り、ボケを楽しみたいというのならこのレンズかもしれません。
ズミクロンは、解放からシャープに写すレンズでした。ボケは他の沈胴レンズよりも少なかったですが、その分、写真全体がシャープに見えます。まさに優等生レンズと言えると思います。
どのレンズも個性があって魅力的で、おすすめなレンズだと思いました。
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