読んだはしからすぐ忘れるから!36冊目「かぐわしき植物たちの秘密」37冊目「ヤマンタカ」38冊目「食虫植物」
多彩な働きを見せる植物たち。我々人間にも影響を与えるその植物の香りに焦点をしぼってその仕組みを最新科学の成果も交えて紹介する。
「若返りとダイエットの香り」キンモクセイ、バラ、スズラン、バニラ、グレープフルーツ、ローズマリー、ダイダイ
「色香で惑わす官能の香り」クチナシ、クリ、ウメ、ゲッカビジン、ユリ、イランイラン
「リラックス効果をもたらす身近な香り」ジンチョウゲ、チャ、マツ、クスノキ、イグサ、コーヒーノキ、ヨモギ、リンゴ、ジャスミン
「ウイルスや細菌を撃退する香り」クロモジ、ユーカリ、ライラック、シソ、タケ、カツラ、ヒノキ&ヒバ
「健康を支えてくれる優れものの香り」タチバナ、ニンニク、ピーマン、パセリ&セロリ、サンショウ、カシワ、ショウブ、ラベンダー、ライム
「万能感半端ない香りといえば…」ユズ、レモン、スダチ、カボス、ミョウガ、ミツバ、コショウ、ワサビ、カラシナ
「ざんねんな香りに秘められた真実」シクラメン、ヘクソカズラ、ドクダミ、ラフレシア、ショクダイオオコンニャク、ウツボカズラ、タマネギ、パクチー、イチョウ
「密かに香って、自分や仲間を守る香り」リママメ、キャベツ、ミント、トマト、サクラ
植物の香りというとすぐに「花の香り」と思ってしまいますが、もちろんそれだけではないのですよね。恥ずかしながら本書を読んで「パクチー=コリアンダー」ということを初めて知りました(パクチーはどちらかというと苦手)。植物にまつわる最前線の研究成果を踏まえているので、色々と興味深い話がありました。
また、明治時代の一時期、ユリ(の球根)の輸出量が絹に次いで二番目に多かったことや、アリナミンの製造過程でコーヒーの香りが使われたこと、つい2、3年前ファンケルで発売された「アクティブメモリー」という商品、ハウス食品が開発した切っても涙が出ないタマネギ「スマイルボール」、桜餅を包む葉っぱは主にオオシマサクラが使われている(ソメイヨシノは葉が固い)ことなど、深掘りしたくなることが多かったです。
参考文献
「緑のつぶやき」田中修(青山社)
「つぼみたちの生涯」「ふしぎの植物学」「雑草のはなし」「都会の花と木」「植物はすごい」「植物はすごい 七不思議篇」「植物のひみつ」同上(中公新書)
「クイズ植物入門」「入門たのしい植物学」同上(ブルーバックス)
「葉っぱのふしぎ」「花のふしぎ100」「タネのふしぎ」「植物学「超」入門」「植物の生きる「しくみ」にまつわる66題」同上(サイエンス・アイ新書)
「フルーツひとつばなし」同上(講談社現代新書)
「植物のあっぱれな生き方」「ありがたい植物」「植物にはなぜ毒があるのか」同上(幻冬舎新書)
「植物は命がけ」同上(中公文庫)
「植物は人類最強の相棒である」同上(PHP新書)
「植物の不思議なパワー」同上(NHK出版)
「植物のかしこい生き方」同上(SB新書)
「植物はおいしい」同上(ちくま新書)
「日本の花を愛おしむ」同上(中央公論社)
「植物のすさまじい生存競争」同上(ビジュアル新書)
「植物栽培のふしぎ」同上(日刊工業新聞社)
続いて読了した夢枕獏「ヤマンタカ」は、読まれざる超大作「大菩薩峠」の世界を舞台に、新撰組を名乗る前(まだ何者でもないころ)の土方歳三と、「音無しの構え」で次々と名だたる剣豪たちを斃して行く机竜之介の戦いも含めた交流を描いたもの。格闘小説で培った「戦う者たちの心の動きを精妙かつ大迫力で描く手法」を存分にふるった物語。御岳神社での奉納試合がひとつの山場でありますが、虚無の剣士机竜之介の剣の秘密を明らかにして語られざるこの先の物語への期待を盛り上げて終幕。竜之介の秘密、同じ作者の過去作のあるキャラクターを思い出しました。
そして「大菩薩峠」読まねば!と思いました。できれば都新聞で連載されていた、著者の大幅カットの手が入っていないものを!(論創社から出ていることはわかりました)
最近のお気に入り岩波科学ライブラリーから「食虫植物」読みました。
植物なのに肉食なんて!しかしその特殊能力のわりに、食虫植物はいつだってマイナーな存在だ。その深い深い理由とは。えっ、ベジタリアンもいるの?あの妙な形や「胃腸」はどこから……?ウツボカズラから食虫木まで何でもござれ。気鋭の研究者の道案内で、謎に満ちた進化の迷宮を探検し、その妖しい魅力に心ゆくまで囚われよう。
食虫植物というと何となく恐ろしいイメージがあったけれど、進化史上での立ち位置などよく考えるとかなりニッチでいつなくなってもおかしくない危うい存在なのかもしれませんね。ウツボカズラ型の罠に居候する生き物(アリからコウモリまで!)やちゃっかり捕まった虫を横取りする生き物など他の生物との関係も面白いです。
同位体元素にようるトレーサー実験の成立に貢献したゲオルグ・ヘヴェシ(洪)のエピソード↓
毎週日曜日に振る舞われたパイにトリウムの壊変生成物をぶち込み、後日出された料理から放射性物質を検出することで、料理の使い回しについてしらを切る下宿のおかみさんに動かぬ証拠を突きつけた
が素晴らしい!ゾウムシに新芽をかじられるウツボカズラやアブラムシに吸汁されるモウセンゴケ、イモムシに袋を食い破られるヘイシソウなど、虫に食べられる食虫植物などウロボロスの蛇にように痺れますねえ。また、マレーシアやインドネシアの「ウツボカズラ飯」は怖いもの見たさで一度食べてみたいと思いました。
ドベネックの桶や無限の猿定理という思考実験を初めて知りました。
なお、本書の引用文献(脚注)は岩波のサイトにアップされておるのですが、うーん、ちょっとめんどくさいかな、参照するの。