目で見て口で言へ(演劇篇)18本目「甘いものを食べる。それが一番よい。」19本目「棒になった男」
何回か行っているものの、前回から絶妙に日にちが経っていて、毎回曲がるところを間違えてしまう恵比寿駅チョー近のエビスSTARバーに行きました。
現代の東京。母を亡くした妹が、幼なじみとともに、もう一人の家族である姉に会うために上京する。三年ぶりの再会を果たす姉妹。果たして二人は互いの溝を埋めることができるのか。
何やら因縁のある姉妹と幼馴染の三人芝居。東京でSEとしてバリバリ働く姉は、結婚することになったのでその報告と今後のことについて、直接話をするべく幼なじみ(で現在は仕事でも繋がりのある)ハルオの助けを借りてやや強引に妹を上京させ、待ち合わせのカフェで三人が揃う。その少し前に姉妹の母親は亡くなったのだが、姉は仕事を口実に葬儀にも出ていない(話が進むと、葬儀に出たくないというより、実家に行きたくない、ということがわかります)。
姉が北海道の実家を処分してしまいたい理由、妹がそれを絶対にしたくない理由、そしてそのゴタゴタになぜか幼なじみが関わってくる理由は、話が進むにつれて明らかになってくるのですがーーどうにもその人間関係の拗れ方に現実味が感じられず……。「まあ実際身近にこういう人々がいたらなるべく関わりたくないし、彼らの物語にもあまり興味はない」というのが正直な印象でした。フィクションとしての「ありそうな話だな」感はもう少し欲しかったですが、それをどう出せばよいのかはなかなかに難しいですね。
乱暴にいってしまえば、かなり狭い人間関係の中で恋愛感情とそれに紐付けされた性欲(逆もある)がこんがらがってしまった挙句の姉妹喧嘩(とそれに付き合わされている幼なじみ)だなあ、とたまに飲むビールにふわふわしながらお芝居を見ていました。
お姉さんの嫌味(皮肉)の言い放ち方がアニメ(←かなり偏見が入っています)の敵役に出て来そうだな、と思いました。とにかく精力的に活動されている橋本さん(幼なじみ役)、地味なようでいて意外と難しい役どころでしたね。ケーキの食べ過ぎに注意♪アクティングスペースのすぐそば(しかも客席で役者の座るテーブルを挟んでいる!)なので、これは所作、セリフの言い方(とボリューム)の調整がとても難しい作業ではあるなあ、と思ったことであります。
翌日は千歳船橋のAPOCシアターで、昨年舞台でご一緒した岡田さんご出演の「棒になった男」を見ました。3部構成で、
中に何か(生き物?)が入っているかわからない鞄を挟んだ二人の女性の会話(「鞄」)、働きながらボクサーをしている男の試合の、本人による(試合と内面の)実況(「時の崖」)、子供の見ている前で屋上から飛び降りた男が棒に変わり、その棒を拾ったカップルに話しかけてくる男女(「棒になった男」)ーー
この「鞄」「ボクサー」「棒(になった男)」をひとりの俳優が演じる、という作者の指定通りに、でもその導入部分とか話と話の繋ぎ方などがシームレスで面白いです。二番目の「時の崖」は、特に倒されたところからの独白(実況)が、夢枕獏の格闘小説を読んでいるようで、ああ、あの小説を実写化したらこういう感じになるのか、と思いました。
「棒になった男」はフーテンカップルの存在が何とも懐かしくて(実際には見聞していないのに)最後語りがいきなり客席の我々に突きつけられる部分も、非常に刺激的でした。役作りに関してはストイックにすさまじくされる方だというのが岡田さんの関してのイメージで、今回もそのあたり凄まじかったのだろうなあ、と想像した帰路のワタクシであります。
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