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2024年1月第2週「浮上する夕方」

失恋ウィーク、のはずだった。
大学4年のときに付き合いはじめた相手と結婚していたので、その前の彼氏以来の失恋になる。当時は江國香織『落下する夕方』の失恋描写を読みながら一週間は泣き暮らした。そう、私はさそり座の女。失恋にはとことん浸るタイプだ。

火曜はいつも通り働いたものの、帰りに「お疲れさまー!仕事終わった。今日は……」とLINEで報告するルーティンだったため、バスの中で抑えがきかなくなり、じわじわ滲む涙を拭いつつスーパーに向かう羽目になった。
誕生日にもらったピアス、主を失った水色の歯ブラシ立てと枕。部屋の中にも外にもあちこちに点在する思い出。いろんなものに傷つけられた。

潮目は木曜。
泣いてばかりいてもしょうがないと、ずっと気になっていたフィットネススタジオにピラティスの体験予約を入れた。電話でしか受け付けてない施設で、なかなか腰が重かったのだ。長年のタスクに手を付けられた達成感は思いのほか大きく、これで勢いがついた。

金曜のランチタイムに衝動的にオンライン予約を決め、後から上司の許可をもらって早帰り。初診の婦人科へ。
正塚晴彦(宝塚歌劇団の演出家)に似た医師は一見ドライだが説明は丁寧で、こちらの疑問にもわかりやすく答えてくれた。行きつけの婦人科もずっと探していたから、次からここに行こうと思えるクリニックができたのも本当に嬉しくて、気持ちのいい夜だった。

土曜は変な日で、洗面台の排水口の詰まりを解消しようとして余計悪化させたり、カードの不正請求が発覚して対応に追われたりしていた。どちらも嫌なトラブルだが、結果的にきちんと対処できたので自信になった。

その日の夜から今日までは東京の友人が泊まりに来ていて、ただただ、ご褒美みたいに楽しい時間。
あえて彼にもらったピアスをしたり、枕と歯ブラシ立てを使ってもらったり、友人が帰ったあとの寂しさに備えて思い出の上書き行為をさせてもらったが、そこまでしなくても大丈夫だったかも。
なんならこの失恋をきっかけに生活の膿を出し切った気がしていて、元恋人と失った恋に対して申し訳ない気さえする。たった半年だからか、私が大人になったからか――なんにせよ、立ち直りが早いのはいいことだ。たぶん、彼ははるかに平気だろうが。
少しは後悔してくれていたらいいのになぁ、と思う。そのくらいの座標にいます。

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