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“相乗り”が移動を変える【RING HIROSHIMA】
クルマじゃなくてモビリティ――なんて言葉も聞かれるようになって久しいが、まさしく今は移動手段の変革期。
電気自動車はどうなる? 自動運転は普及する? 高齢化によって進む免許の返納、その後の移動手段は? 過疎地域の交通は誰が担う?……
今回RING HIROSHIMAで採択されたチャレンジ「空港‐福山AIオンデマンド相乗り」もまた、私たちの“足”を変えるひとつのきっかけになりそうだ。
CHALLENGER「株式会社NearMe」髙原幸一郎さん
タクシー相乗りでもっと移動を快適に
まずは空港と市内のドアtoドアから
![スクリーンショット 2022-01-25 14.33.25](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70901504/picture_pc_3b037dd92883c795fb784c7b96939a12.png?width=1200)
私たちが目指すのは社会の「もったいない」を解決するプラットフォームを提供し、いきいきした未来を実現することです。現在はドアtoドアの移動の問題に取り組んでいて、中でも特に空港送迎を行う「nearMe.Airport(ニアミー エアポート)」に力を入れています。これは「スマートシャトル™」と呼ばれる大型タクシーやハイヤーを何人かでシェアして相乗りができるサービスです
株式会社NearMe(ニアミー)代表取締役社長・髙原幸一郎さんが語るのは、相乗りによる移動の効率化だ。ニアミーはAIによって相乗り時の最適なルートを計算し、目的地までスムーズに送迎するサービス、スマートシャトル™を開発。
個々の移動を相乗りという形で束ねることで、タクシーより安価で、指定の時間にオーダーできる&ドアtoドアで移動できるという点で公共交通(バスや鉄道)より便利なシステムを実現した。
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70890032/picture_pc_bdcb2bb47cec785e0e57b85690d5ab52.png)
そんなスマートシャトル™サービスの中でも彼らが注力しているのが空港との送迎だ。現在まで成田空港、羽田空港、関西空港……など11か所の空港に進出。その次なる候補地に選ばれたのが広島空港というわけだ。ただ、対象地域が広島市ではなく福山市になったのは事情があって――。
このRING HIROSHIMAと同時に、観光庁が委託する福山市での実証実験も進めてるんです。つまり単に空港と福山市をつなげるだけでなく、その先にある福山滞在中の観光でも使えないか? スマートシャトル™を利用することで観光客の回遊性・周遊性を高められないかということまで含めて取り組んでいるんです
ということでマッチングされたのが、こちらのセコンド。
SECOND「福山サービスセンターイトウ」伊藤 匡さん
純粋な好奇心でのエントリーが…
これ、今の仕事にも役立つかも!?
![スクリーンショット 2022-01-25 14.26.35](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70901536/picture_pc_696946f086fca9a7a66c1b87d00ff67e.png?width=1200)
伊藤 匡さんは福山に拠点を置く「福山サービスセンターイトウ」の代表。同社は30年以上、旅行サービス手配業を行っており、まさに備後地方の観光のプロ。近隣のホテルや観光施設に強いコネクションを持ち、「瀬戸内SamPo」(https://setouchi-sampo.com/)「郷彩(さといろ)」(http://100ryokan.com/plan/)といったオリジナル商品の開発も進めている。
2人の組み合わせはこれ以上ないマッチングのように見えるが、伊藤さん、最初はビジネス目的ではなく応募したところが面白い。
きっかけは好奇心でしかなくて(笑)。私はこれまでボランティアをやったこともないし、人の役に立つことをやったこともない。ビジネス的な発展はまったく考えず、自分が人間的にステップアップできるかもという想いで応募したら、ニアミーさんのセコンドになることになって。観光分野を考えておられるということで何かしらお手伝いができるかも、と
「この2人、合うんじゃない?」とお見合いのような展開からパートナーシップを結ぶことになった両者。そこから東京にいるチャレンジャーと福山にいるセコンドというリモートタッグの戦いがはじまった。
空港との送迎を発端に、
福山の周遊観光まで視野に入れる
2021.11~12 START! 状況のヒアリング、地元への協力要請
2022.1 スマートシャトル™の一般告知 ←NOW
2022.2 実証実験
そしてスタートした共同作業。ただ、チャレンジャー側はこれまで同サービスを全国11空港で導入済。最初からある程度のノウハウは持っている状態だった。
システムはだいぶこなれてきましたけど、難しいのは地元独自の事情で。たとえば「この事業者さんには挨拶しておいた方がいい」といった情報や、地元ならではのローカルルール。伊藤さんにはそのあたりの話を聞かせてもらいました。あと、今回私たちは福山滞在中の移動にも取り組んでいるので、ホテルや観光協会など関わる人も多くて。その接点にもなっていただきました (髙原)
AIを含む相乗り送迎の技術はすでに完成してるので、僕が口を挟む余地はなかったですね。基本的には担当の方とZoomやメールでやりとりして、地元の事情をお伝えしました。あとは観光協会やホテル関係、カフェなどをやってる知人に説明して、ポスターやチラシを置く段取りを付けたりとか (伊藤)
実際の実証実験は2月にスタート(取材は1月下旬)。ここでは広島空港~福山の相乗り送迎に加えて、鞆の浦や「しおまち海道(JR福山駅から尾道市戸崎港まで続く海岸沿いのサイクリングロード)」を楽しむことのできる「福山市周遊キャンペーン」も展開する。特に福山の場合、こうした観光資源が遠方にあることが多く、スマートシャトル™が機能すれば観光の幅が広がることは間違いない。
![iOS の画像 (6)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/72280191/picture_pc_567b0be275cfd19289b73bec703fe6cd.jpg?width=1200)
伊藤さんのおかげで、今回は回り道なくスムーズに進んでると思います。地元に詳しい人が併走してくれたことで実装へのスピードは上がりましたよ (髙原)
実証実験が成功すれば、ホテルなどがスマートシャトル™を使った送迎プランを販売できると思うんです。自社企画に関しても、今は僕らが車を出して無料送迎してるけど、それが結構な労力で。ニアミーさんと組むことで労力はかなり減らせると思います (伊藤)
![スクリーンショット 2022-01-28 123805](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70890574/picture_pc_bb7642740ca0aae90359c18d891a88c4.png?width=1200)
挑戦者もセコンドも、それぞれ未来へ期待感を持ちながら実証実験に臨むことになりそうだ。
本当に移動に困ってる人の
役に立つ存在として定着したい
今回の案件、空港と街中の送迎に焦点が当たっているが、ニアミーとしては「その先」に向けての一里塚だと考えているという。
これは京都での事例ですけど、スマートシャトル™の導入によって、実際の車両の運行を依頼する交通事業者のDX化が進行するというメリットがあったんです。老舗のタクシー会社が私たちのシステムを取り入れたことで、これまでは人力でやっていた運営を自動化できて、それによりユーザー体験も向上したという。
あと、私たちはこの空港送迎を入口に、地域の方の役に立つ存在として定着するのが目標なんです。いま本当に移動で困ってるのは免許を返納した人や、過疎地域に暮らす人。そういう人たちが毎回タクシーを使えるかといえばそんな余裕はないし、そもそもタクシーの台数も限られている。このタクシーをシェアするというサービスを使えば持続可能な未来が実現できると思うんです (髙原)
一方のセコンドサイドとしても、これは「プラスしかない」体験だと伊藤さんは笑う。
ニアミーさんはスタートアップといっても、実力も実績もあるしっかりした会社。最初は「素人っぽい人が来るのかな」と思っていたけど、ものすごく強いボクサーに当たったというか(笑)。
だからこっちが教えてもらうことの方が大きいですよ。新しい取引先を紹介してもらったり。知り合いにこのことを話したら「なんで伊藤さんそんなこと知ってるの? すごいね!」って尊敬されましたから(笑)。RINGに参加しなかったら、こんなことにはならなかったでしょうね (伊藤)
![スクリーンショット 2022-01-25 14.59.58](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70901577/picture_pc_f14fad22e72d9d9e17b3d66d95addcc3.png?width=1200)
実は髙原さんと伊藤さんは、まだ一度もリアルでの対面がなく、2月の実証実験で初めて顔を合わせる予定。
別々の場所でつながりながら、それぞれの人生に波紋を描き合う――これもまたRING HIROSHIMAの、ひとつのファイトスタイルなのだろう。
(Text by 清水浩司)