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広島県議会本会議にて、被服支廠に関する代表質問・答弁がありました

2月25日、広島県議会本会議の代表質問において、被服支廠に関する質疑が行われました。自民議連・山下智之議員からの質問があり、湯崎知事が答弁しました。

動画はこちら
以下、質疑の文字起こしです。()内は動画の時間です。

自民議連・山下智之議員(36:50-41:50)
質問の最後となる5点目は、旧広島陸軍被服支廠について、安全対策は最優先課題という立場でお伺いします。年末からこの間、「旧被服支廠」というワードを紙面等で見聞きしない日はないほど、特に県民の関心が高いため、改めて事実を示しながらお聞きしたいと思います。広島市南区出汐町にある旧被服支廠は、西側には幅員4メートルの市道を挟んで民家が立ち並び、また近くに二つの県立高校があります。一棟が高さ約15メートル、長さ約90メートルあり、県が三棟所有しています。三棟が連なる景観は、圧倒的な重厚感はありますが、築100年を超え、建物の劣化が進行しています。震度6強の地震により倒壊または崩壊の調査結果を踏まえると、その重厚感は近隣住民や学生などの市道利用者からは脅威にさえなっていると思い得ます。日本は世界でも有数の地震大国であり、いつ起こるか分からない地震災害による倒壊の危険性や脅威の除去に向けては、建物所有者の責務として、遅滞なく取り組む必要があります。

旧被服支廠を巡っては、これまで瀬戸内海文化博物館の設置検討、エルミタージュ美術館分館の誘致検討など、幾度も活用の検討はなされてきたところですが、いずれも実現には至っていません。その最大の理由は、その耐震化に多額の費用が見込まれることや被爆建物であるため、保存・活用を巡っては幅広い意見があるためです。今般知事は、被服支廠が有する価値を認めた上で、安全対策を最優先に考え一棟を保存し、二棟を解体するという方針を示されました。我が会派はこの方針を強く支持するものであります。こうした中、県が方針を示して以降、全棟残してほしいと願う市民団体の署名やイベントなど、活動が活発になったところです。また県が実施したパブリックコメントでも、過去最大の2,400件を超える意見が寄せられ、その関心の高さを伺うことができます。その内容について比況の観点からの意見では、県の方針からは全棟保存は財政負担が大きすぎ、他の政策に使うべきである、とあります。一方で三棟保存を望む方は、他の施策より被爆建物の保存に費用をかけるべき、と全く立場や価値観が異なり、この点だけを見ると相容れない意見となっています。これに加えて混迷を深める原因となっているのが、国会議員や広島市長の全棟の保存を望む発言ではないでしょうか。とりわけ、広島市が保有する広島大学旧理学部一号館は、正面部分だけを残す方針を示しながら、旧被服支廠には全棟保存を求める広島市長の発言に矛盾を抱くのは、私だけではないと思います。

私自身被爆2世であり、個人的には全棟保存を願う方々の心情は理解できます。しかしながら、被爆の実相を後世に受け継いでいくためには、より多くの人が見て共感できるものとして保存することで、その価値が発揮されるものと思います。駐車場もなく、閑静な住宅地に存在している現状において、三棟残したままでは、それは到底無理な話であり、また活用もせず三棟をただ残すだけに巨額の投資をすることは、到底県民の理解は得られません。県議会議員としては、地域住民をはじめ、県に置き去りとした結論を導くことはできません。また、クラウドファンディングなどの話も上がっていますが、県内外に注目されたあの鞆の浦地区の寄付でさえ、この一年間で600万円弱という状況を踏まえると、数十億円規模の寄付を募る難しさは、安易に想像できます。国や広島市の立場を明確にするためにも、旧被覆支廠を無償譲渡することを正式に持ちかけるのも手法の一つかもしれません。そこで混迷を深めることがないよう、国や広島市の責任ある回答を引き出し、安全性を考え、これ以上結論が先延ばしにならないように、取り組む必要があると考えますが、今後どのように対処していくのか、知事のご所見をお伺いします。今後の知事の良識ある決断を期待して、質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
湯崎知事 答弁(1:00:00-1:08:30)
次に旧広島陸軍被服支廠についてでございます。
旧広島陸軍被服支廠を巡っては、平成7年から9年にかけて瀬戸内海文化博物館、平成12年から18年にかけてはエルミタージュ美術館分館誘致の検討を行いましたが、被爆建物であり、保存・利活用に極めて幅広い意見があること、県の財政状況が厳しい一方、施設の規模が大きく、耐震化等に多額の費用が見込まれることなどから、いずれも実現に至らなかったという経緯がございます。

その後被服支廠の保存を願う懇談会から保存要望があったことを踏まえ、平成29年に改めて耐震改修にかかる工法の検討等に係る建物安全性と調査を実施致しました。技術の進歩により、耐震改修費用の試算額を大幅に圧縮できる可能性もあるのではないかとの見込みを持って調査を開始しましたが、震度6強規模の大地震が発生すると倒壊または崩壊する危険性が高く、また建物の構造や劣化状況を考慮すると、当初の予想に反して工事費は増加し、博物館として使用することを想定した場合、内装を含めて一棟あたり33億円、うち耐震改修のみでは28億円という試算が出たところでございます。

こうした中、平成30年6月に発生した大阪北部地震によるブロック塀倒壊事故を契機として、危険なブロック塀等の構造物に対する社会的な関心が全国的に高まることとなり、被服支廠についても、通行者の多い幅員4メートルの市道を挟んで多くの民家が立ち並ぶ立地環境にあることから、西側壁面の安全対策に喫緊の課題として取り組む必要があると認識したところでございます。このため、建物の利活用の検討とは切り離して、安全対策に取り組むこととし、昨年12月対応方針を取りまとめ、公表したところでございます。この対応方針案の取りまとめの過程では、過去の利活用検討における有識者の意見等を再度検証した上で、改めて平和建築分野の関係者等から被服支廠が有する価値に関する意見を伺ったところであり、その中には被服支廠の保存を目的に活動される団体も含まれており、多額の費用がかかることなどから全棟保存は現実的ではなく、残していくためには一部解体もやむを得ないという趣旨のご意見も伺っております。さらに平和建築の分野のほかにも偏りなく幅広い分野から意見を伺う必要があると考え、従来の検討にはなかった地元、不動産鑑定士、ファシリティマネジメントの専門家などからも意見を伺い、国及び広島市とも協議調整を行った上で、対応方針案を公表したところでございます。

今年度お示しした対応方針案は、先程申し上げた過程を経て取りまとめたものでございますが、その内容につきましては、早急に安全対策を講じること、被服支廠が有する被爆建物や建築物としての価値の保全・継承を実現すること、財政的制約をクリアすること、などの点をすべてバランス良く実現させるという方針でまとめたものであり、そのため二棟を解体してもバーチャルリアリティ技術を用いること、解体で生じる部材を保存し、将来の改修に活用することなど、別の形で価値を継承することにも配慮したところでございます。

こうした内容の対応方針案を令和元年12月4日に公表したのち、平和被爆者団体等から要望書や署名が提出され、また広く県民の皆様の意見を伺うために実施したパブリックコメントには過去最大件数の回答が寄せられるなど、県民の皆様の関心は極めて高いものでございました。これまで寄せられた意見の中には保存に関する具体的な意見の他に、もう少し時間をかけて利活用、財源確保策などについて議論を行い判断すべきという意見も多くありました。
また広島市においては昨年12月以降記者会見の席上、市長が二度にわたって被服支廠は三棟保存すべき旨の発言をされておりますが、2月7日に開催した会談におきまして、私から今後の検討に協力していただきたい旨要請したところ、市長からは県民・市民の皆様が納得できるような議論を経て出された結論については、市としても可能な限り協力したいとの回答を頂いたところでございます。
加えて国では、令和2年1月23日の衆議院本会議において、安倍内閣総理大臣から被服支廠に関する県の今後の議論を見守り、国としてもしっかり対応していく旨の答弁があり、2月8日には同様の趣旨の答弁書が閣議決定されました。さらに、県の方針の公表以降、複数の国会議員から全棟保存を求める発言が相次ぎ、関係各省庁から既存の制度等について説明を招集されるとともに、本件に対しても今回の対応方針やこれまでの経緯・沿革等について説明を求められ実際に現地視察に来られるなど、党派を超え関心も高まっております。こうした状況も踏まえ、県議会議長から私に対しもう少し精査する時間が必要である旨の要請を頂いたところでございます。

県と致しましては、これら諸般の状況を踏まえ、引き続き議論を深めていく必要があると判断したところでございます。今後実効性のある方策を打ち出す上で4号棟の所有者であり、かつ被爆者援護法に規定する平和を祈念するための事業の主体である国、広島平和記念都市建設事業の主体として被爆建物の保存に取り組んでおられ、被服支廠についても三棟保存を強く主張されておられます広島市にも、この問題の当事者として責任ある立場で検討に加わって頂く必要があると考えております。その上で、文化財指定の可否や条件、保存の工法等費用、民間での活用や財源調達の可能性、公共で保存する場合の利用目的と主体など、利活用の大きな方向性、保存の規模、それを実現するための財源手当、地域への影響をセットにして、さまざまな観点からさらに議論を深めて参りたいと考えております。なお、安全対策は県民の皆様の生命・財産に関わる喫緊の課題でありますことから、令和2年度におきましても、今年度から引き続いて被服支廠建物の西側壁面を想定した壁面補強調査、設計業務を進めるとともに、改めて利活用の検討に着手することとし、令和3年度当初予算編成時期を一つの目途として整理を行って参りたいと考えております。
その他のご質問につきましては担当説明より答弁させていただきます。

県議会の答弁をしっかり読むことって中々ありませんが、
こうやって私たちが普段から行われている動きに注目することも
議論を進める一歩になるかもしれませんね。

次回は、同じく被服支廠について質問した福知基弘議員と知事の答弁を掲載します。

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