ゆっくり学びを語る人

定年退職した小学校教師が、気ままに学びを語っていきます。 小学校の子どもたちが日々頑張っているようすや、生きづらくなっているようすを知ってもらいたいと思っています。 今やブラックな職業として認知されている学校の先生たちに「無理せんでもえんよー」と熱烈なエールを送りたいです!

ゆっくり学びを語る人

定年退職した小学校教師が、気ままに学びを語っていきます。 小学校の子どもたちが日々頑張っているようすや、生きづらくなっているようすを知ってもらいたいと思っています。 今やブラックな職業として認知されている学校の先生たちに「無理せんでもえんよー」と熱烈なエールを送りたいです!

マガジン

  • 「算数文章題が解けない子どもたち」(今井むつみ他著)を読む

    「算数文章題が解けない子どもたち」は、今の学校教育の「学力テスト」に偏った授業改善の方向を立ち止まらせるものになるかもしれません。「認知的な負荷の軽減」なくして、こうした子どもたちは、解くための土俵にも立てないのです。

  • 学び辛さを抱える子どもに寄り添った「ほっこり授業」のススメ

    「ほっこり授業」は、ゆっくり、繰り返し、誰かがいつもそばにいる授業です。安心できる授業だから、学び続けられます。しかし、個の授業の「しかけ」により、いつの間にか、全ての子が自己をアップデートしていくという、新しい次元の「協働的な学び」の構造になっている授業です。

  • 「自己の存在」を見出すことが「個別最適な学び」になる

    個別最適な学びを語ったら、「自己の存在」を求める子どもの姿が見えてきました。さらに、「自己の存在」を友達の中に見出した時、自己の有用感を感じていたのです。そんな授業のノウハウを詰め込んでお届けします。

最近の記事

「算数文章題が解けない子どもたち」~夏休みの終わりを告げる「全国学テ研修会」~

「全国学力テスト」の学校平均点に一喜一憂筆者は広島在住です。お盆休みに、他県の教師仲間と話をしました。話題はもちろん「全国学力テストの指導改善のレポート」です。(「こうゆう、ややこしいのは主幹の仕事」とぼやいていました。県によって違うんだと思いました。) 筆者のまわりでも、(注:管理職しか自治体内のランキングは知りません)「ベスト3だ!」「平均マイナス○点・・」「よかった平均点」などと、一喜一憂する言葉が飛び交っています。 「やったー」と喜んでいるのは、上位20%の学校ぐらい

    • 第3弾!「算数文章題が解けない子どもたち」~「学習性無力感」からの脱出~

      「学習性〇〇〇」無力感?無視力?放心感?前回からの続きになります。この記事は、広島でプチ話題の本「算数文章題が解けない子どもたち」(今井むつみ他著 岩波書店)の読書感想文です。 正解は、心理学での用語「学習性無力感」です。与えられた学習課題に対して、「自分は無力だ」と感じるからだそうです。そんな子どもに対して、先生ならどう言うでしょう?「もっと勉強したら分かる」「よく考えたら分かる」。そんなアドバイスは、役に立たないことを、同著の調査(たつじんテスト)は示唆していると思いま

      • 第2弾!「算数文章題が解けない子どもたち」~「学習性無力感」~

        広島でプチ話題になってます記事の筆者は広島県在住です。「算数文章題が解けない子どもたち」(今井むつみ他著 岩波書店)は、広島県の一部の教育関係者で話題になっています。 よく話題になるのが「学習性無力感」の児童へのアプローチと「死んだ知識」を「生きた知識」に再生する方法です。 つまり、(広島県の)先生たちの懸念と願望が ・「学習性無力感」の児童を減らしたい ・いつでも使える「生きた知識」を伝えたい とも言えます。 このことを議論できるようになったのも「算数文章題が解け

        • 「算数文章題が解けない子どもたち」を是非読むべき!

          じわっじわっと話題になってます(広島ですが)記事の筆者は広島県在住です。「算数文章題が解けない子どもたち」(今井むつみ他著 岩波書店)は、広島県の一部の教育関係者で話題になっています。(一般の先生たちが話題にしていること自体が稀なのです)    ・ 広島の児童の実態について、ユニークな調査を行っていること  ・ 一般の先生に分かりやい分析方法の解説  ・ 温かいまなざしで単刀直入な言葉で解説している  ・ 外国語を母国語にしている児童の指導者の支持 こんなところが手に取りや

        マガジン

        • 「算数文章題が解けない子どもたち」(今井むつみ他著)を読む
          4本
        • 学び辛さを抱える子どもに寄り添った「ほっこり授業」のススメ
          4本
        • 「自己の存在」を見出すことが「個別最適な学び」になる
          7本

        記事

          「聞く」に敏感な子どもへのアプローチ②「ほっこり授業」でどんどん変わる!

          「聞く」ことに敏感な子どもはとても繊細 いろんな「音・音声」情報に気づいてしまう「敏感」さんは、気ままに見えてとても繊細です。先生の「静かにして」の繰り返しに自己嫌悪を抱き「どうせ、自分なんか」とつい漏らしていることもあります。こうした言葉の裏には、自己肯定感の低さがあると思われます。 耳という感覚器官は脳にとても近いので、他の人の汚い言葉や暴力的な言葉が耳を通して、心を傷つけてしまうのです。「幼児は読み聞かせで心が育まれる」、「電話のなりすまし詐欺に会う」など、耳からの

          「聞く」に敏感な子どもへのアプローチ②「ほっこり授業」でどんどん変わる!

          「ほっこり授業」におまかせ!「聞く」に敏感な子どもへのアプローチ①

          「聞く」ことに敏感な子どもへのアプローチ ここでは、「音・音声」情報に、過剰に反応する傾向のある子どもたちについて語ります。 まず、子どもの脳内での聞こえ方には、いろいろあることを知ってください。(筆者の経験より) 「誰かが言ってるように聞こえたから、思わず…」というように『聞こえない声が聞こえる』こともよくあります。無意識に鼻歌を歌っている子どもも『頭の中で音楽が鳴っていた』というし、語尾の違いに注意せず、「やってあげようか?」と尋ねたつもりが「やって」ととらえて『命令

          「ほっこり授業」におまかせ!「聞く」に敏感な子どもへのアプローチ①

          「聞き逃し」「見落とし」だけでない!「聞く」「見る」に敏感な子どもへのアプローチも「ほっこり授業」におまかせ!

          「多動傾向?」と思い込み、動きを止めようとしてしまう 上の図は、筆者が以前に「見落とし」「聞き逃し」の子どもたちへのアプローチの回で示したものです。 ※この図は、筆者が、「算数が苦手」「学習に集中できない」と思われる児童を観察して共通に見られる行動を分析し、整理したものです。現場目線のざっくりしたものなので、その辺は、ご容赦ください。 今度は、円の下方に「視覚運動系 敏感」と「聴覚音声系 敏感」とあります。 つまり「見ることから情報を得る」のが得意だけど、より細かく見え

          「聞き逃し」「見落とし」だけでない!「聞く」「見る」に敏感な子どもへのアプローチも「ほっこり授業」におまかせ!

          「ほっこり授業」のしかけ③~発表を1人で終わらせない~他者に自己を見出そう

          「発表を1人でおわらせない!」のネタ元 前々回で「種本があります」と書きました。筆者が「目指していた算数の授業は、これだ!」と思ったものです。その後、続編も出版され、授業の様子をスマホで見ることができるようです(ええ、すごっ)。紹介しておきます。すっきり紙面で老眼の筆者にも優しい本でした。 おススメの1冊目 20日間でできる 学び合いスキル30の算数指導 おススメの続編  対話を楽しみ、学びを深める算数指導 著者・出版社   石田淳一著 東洋館出版社 ※取り合えず、アマゾ

          「ほっこり授業」のしかけ③~発表を1人で終わらせない~他者に自己を見出そう

          「ほっこり授業」の柱!他者の中に「自己」を見いだすしかけを作ろう②

          まずは「協働的な学び」のバイアスを外そう! 「他者の中に自己を見出す」「自己の中に他者を見出す」ことは、「子ども相互が関わるしかけ(←協働的な学び)」のある授業でしか、得られない副産物ともいえます。なぜなら、子どもたち自身が「計算ができた」という結果重視の価値観から、「みんなが支えてくれて、計算ができた」というプロセスへの価値が加わるからです。 つまり、この副産物は、これまで「できた・できない」という結果で価値が左右された自己から、「このプロセスを経れば、できないものができ

          「ほっこり授業」の柱!他者の中に「自己」を見いだすしかけを作ろう②

          「ほっこり授業」の柱!他者の中に「自己」を見いだすしかけを作ろう①

          はじめに、子どもの学びづらさを理解していただくために、算数を例にそれらの定義を述べます。算数科の困難さは、文部科学省編著「障害に応じた通級による指導の手引 解説とQ&A(改訂第3版)」で、算数LDの項目で具体的に述べられています。 計算する能力と推論する能力に困難さがあり、表にまとめると次のようになります。 筆者は、この24項目を単元ごと(かけ算とかわり算といった学習のまとまり)に、算数が苦手な子どもに対応させてみました。 それぞれの子どもで、苦手のパターンが見えてきました

          「ほっこり授業」の柱!他者の中に「自己」を見いだすしかけを作ろう①

          ほっこり授業~「自己の存在」を他者の中に見いだす!

          個別最適な学びは「自己の存在」にフォーカスすべき! 筆者は、個別最適な学びと「ほっこり授業」は同じ学びととらえています。 その前に、「個別最適な学び」前身ともいえる「個に応じた指導」について思うことを述べます。 これまで(前学習指導要領時)は、「その子の身の丈に合った学習内容を提供することが『個に応じた指導』だ」のような意味合いが強かったように感じます。 例えば、算数科で「個に応じた指導」を謳ったとき、行政が予算をつける代わりに、現場に求めることは学力テストの平均値を上げる

          ほっこり授業~「自己の存在」を他者の中に見いだす!

          ほっこりできる授業「自己の存在」を求める子どものための3つのキーワード

          知識ではなく「自己の存在」を求めている子ども 子どもから「勉強ができるようになりたい」この言葉が出てくると、すかさず、先生は「いっぱい勉強すると頭がえらくなる」と言い、黙って指示されたことをひたすら続けるように言う・・こんなイメージを想像しませんでしたか? さて、皆さんの幸せのイメージとは、どんなものですか?家族の団らん?好きな趣味に没頭?自然と一体になる? 幸せの時はゆっくり時間が過ぎていませんか? 学校は、せわしいです。今やタブレットで次々と出てくる問題にゲーム感覚で

          ほっこりできる授業「自己の存在」を求める子どものための3つのキーワード

          子どもの「聞き逃し」へのアプローチ②ほっこり授業で解決!

          頑張って「聞こう」とさせなくていいんです もともと「短期記憶」の保持が難しい子どもに、先生が頑張って「聞かせよう」とすると、指導にかなりのエネルギーと時間が費やされます。 「聞く」ことが苦手な子どもは、クラスに1人や2人ではないからです。先生の指導が「音声」に偏っている場合、もっと「聞かない」子の数は増えます。先生が頑張ることで、音声情報がさらに増える悪循環になりがちです。 先生たちにも言い分はあります。「発表した子に、肯定的評価をしなさいといわれました」とか「聞いてな

          子どもの「聞き逃し」へのアプローチ②ほっこり授業で解決!

          子どもの「聞き逃し」へのアプローチ①

          「聞き逃し」は短期記憶とつながっている 学習中における「短期記憶」とは、ウキペディアでは「短期記憶 (short-term memory, STM) とは、記憶の二重貯蔵モデルにおいて提唱された記憶区分の一つであり、情報を短時間保持する貯蔵システムである。」とあります。 さらに、ウキペディアの「ワーキングメモリ」の説明には、「認知心理学において、情報を一時的に保ちながら操作するための構造や過程を指す構成概念である。作業記憶、作動記憶とも呼ばれる。」とあります。 (※ウキペデ

          子どもの「聞き逃し」へのアプローチ①

          子どもの「見落とし」へのアプローチ

          先生と同じように見えていない 以下の子どもたちは、「見ようとする範囲がせまい」ために生じる行動パターンです。小学1年の国語の本は「分かち書き」で記述されてますが、3cmから5cmくらいの長さで区切られています。(もちろん文節で区切られています)目から30cm離れている平面上の「3から5cmの幅」の範囲ならば、文字の形を認知できるのだと考えられます。(教科書の指導書の記述を見ると、文字を追うことを「眼球運動」というらしいです) ここでいう「見ようとする範囲がせまい」と思われ

          子どもの「見落とし」へのアプローチ

          見逃してしまう「助けて」のサイン

          子どもの動きにヒントあり 算数の授業で、子どもが次のような動きをしたとします。 消しゴムを落とす 椅子の上で正座・曲げた足の上に座っている 開いたノートの途中から字を書き始める 正面ではなく、斜めの方向に向かって座っている 消しゴムや定規を雑に置いている 消しゴムがない 現役の小学校教師であれば、クラスにいる数人の子どもたちを思い出していませんか?子どもが無自覚にこの行動をして、しばしば見られる行動ならば、この行動パターンは「サイン」です。 その行動には理由

          見逃してしまう「助けて」のサイン