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ある一曲との再会

2025年最初の投稿からアカウント名を変更しました。
SNSでつながっているわけではないのに、知らないうちに本名検索されて、いろいろ意見をくれる人なんかが出てきて、これはちょっと違うんじゃないかなーって思ったからです。
最近の人って個人名検索するのは普通のことみたいですね。
いつも読んでくださっている方は、引き続きよろしくお願いします。

僕がギターを始めたのは小学校6年生の頃で、一番最初は無名の安いフォークギターを親に買ってもらって弾いていたんですが、中学1年生になってからはエレキギターが欲しくなって、単身お正月に福島県の母親の実家に押しかけて、お年玉をたくさん集めて(母親は9人兄弟で親戚の数がとても多かった)そのお金で今はなきFERNANDESの中古のストラトキャスターを手にしていました。

その頃はハードロックの全盛期で、レインボーにはジョー・リン・ターナーが加入してアメリカ市場への参入を狙っていたし、ナイト・レンジャーやモトリー・クルーなんかもデビューしてきました。デフ・レパードは三枚目のアルバムから「Photograph」を大ヒットさせていたし、VAN HALENは大ヒット曲「Jump」を含むアルバム1984を大ヒットさせていました。僕も彼らのコピーをして「ギターが速く弾ける=ギターがうまい」みたいな価値観で毎日夢中になってギターを弾いていました。

中学2年から3年生にかけて近所の塾に通っていたのですが、その先生の中にギター弾きがいて、当時はエレキギターでリッチー・ブラックモアをコピーしている中学生は比較的珍しかったのか、僕が知らない時代の音楽やギターの話をたくさんしてくれました。髪型はカーリーヘアーで口ひげを生やしてて、後から気づいたんだけど、ボストンのボーカルだったブラッド・デルプが間違いなく好きでしたね。そっくりです笑
何度か先生の部屋にも遊びに行かせてもらって、僕が知らないミュージシャンのレコードを聴かせてくれました。そのせいで僕はボストンやイエス、レッド・ツェッペリン、ジェフ・ベックなんかも大好きな中学生に成長していました。

一番左にいるのがブラッド・デルプ。2007年に55歳(僕と同じ歳)で自殺してしまった。

ここから本題なんですが、その先生から一本のカセットテープをもらったことがあります。先生が好きだった曲の他に、ギター弾きとして知っておいた方がいいと思われる曲なんかも入っていて、何度も何度も聴き返していたのを覚えています。

しかし時代はレコードからCDに移り変わって、カセットテープを聴く機会も激減しました。さらに年を重ねるにつれて進学や就職、結婚や引っ越し、海外赴任などの人生のイベントがあって、いつの間にかそのカセットテープはどこにいったのかわからなくなってしまいました。
カセットテープだけじゃない。その頃の写真や、当時付き合っていた彼女や友達からもらったアクセサリーやライターとかそういう思い出も全てどこかにいってしまいました。

そのカセットテープは何度も何度も聴き返しただけあって、録音されていた曲はなんとなく覚えています。イエスのスティーブ・ハウが弾いていたギターインストルメンタルの「Mood for Day」、同じくイエスの「Round About」、ジェフ・ベックの「Cause We've Ended as Lovers」、ボストンの「More Than Feeling」などの名曲たちは、高校生になってアルバイトが出来るようになってから、稼いだお金をすべて注ぎ込んでレコードを買っていたので音源を手にしていましたが、記憶に残っているだけでどうしても手に入れることが出来なかった一曲があったのです。

パット・メセニーというギタリストのインストルメンタルだったということしか記憶になくて、曲を口ずさむことは出来ても、その曲名が全くわからないという状態でした。

僕は「この曲をもう一度聴きたい!」という思いを40年ぐらい抱き続けていました。頭の中で曲は鳴っているのに、その曲をどうやって探せばいいのか、見当もつかない。僕が中学生だった時代までのパット・メセニーのアルバムを片っ端から買えばどこかで見つかるとは思いましたが、今でこそアマゾンなんかで購入できるような環境がありますけど、これはごく最近の話だし、パット・メセニーはソロの他にパット・メセニー・グループ名義でもアルバムを出していて、タワーレコードなどの大きなCD屋でさえ、簡単に全て手に入るような感じではありませんでした。

そんな思いを抱えたまま、一昨年末までマレーシアに9年間海外赴任していて、その間に音楽の視聴環境は大きく変わりました。自分が知らないような時代の音楽に触れるためにCDを探しに行く必要は全くなくなっていて、自分が生まれる前の楽曲でさえ、配信サービスを活用すれば簡単に手に入る時代になっていました。

もしかしたら配信サービスを利用すれば、その曲に出会えるかもしれないと思って、今年の正月休みに、新たに契約したYouTubeMusicでパット・メセニーのアルバムを古い順に片っ端から聞いていたら、なんと40年ぶりにその曲が突然流れてきたのです!
それも台所で正月用の煮物を作っていたときに。

それはPat Metheny Groupの「American Garage」という曲でした。

心臓がドキッとして、5回ぐらい連続で聞いてしまいました。
なんといっても40年間ずっと聴きたかった曲にやっと巡り会えたのです。

中学時代に大好きだった女性に40年ぶりに会ったとしても、お互いだいぶ変貌しているはずだし、こういう類の感動にはならないはずですけど、音楽は色褪せずに、当時のままの輝きを放っていました。

僕の時代はバイト代やお小遣いを貯めてレコードやCDを買ったり、FMラジオの放送スケジュールを雑誌で調べて※エアチェックをしたりしていたので、好きな音楽に触れるには時間と労力が必要でした。だからこそ、そのアーティストの作品は一生懸命聴くし、作品への理解も深まったんだと思っています。
※エアチェックがなんのことかわからない人はこちらを参照してください。

今の時代はアーティストの才能や汗や苦しみなんかがたっぷり詰まった楽曲が、いとも簡単に(しかも無料で)手に入ってしまうし、曲のサビ以外は飛ばして聴いているような話もありますよね。ギターソロ不要論みたいな話も聞いたことがあります。

僕はこういう環境で音楽と出会い、生きてきたので、今でも音楽は出来るだけレコードやCDで聴きたいと思っているのですが、こんな感動を味わえるのであれば、配信サービスも利用価値はあるもんだなと思ったお正月でした。煮物も美味しく出来た気がします笑

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