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アリセプトそして口腔ケア

 両親を見送って長い時間が経った。いろいろ反省がある。8年前の2016年に亡くなった母については二点書き残したい。一つはアリセプトAricept。もう一つは口腔ケアoral care。
 アリセプト。認知症の薬として有名だ。効果があるともないとも。いや副作用があるとも。昔、老人ホームに入っていた母が服用していたが、姉がこちらに相談なく打ち切ってしまった。効果がなく副作用があるなら、打ち切ってよかった。ただその判断がよかったのか。今も迷いが残る。
 母の認知症は、母なりに言いたいことがあるが、口にうまく出せない。次第に言葉が出なくなる。そういった症状だった。入所したての頃は、たどたどしくだが、はっきり自分の意見を言い歌も歌った。
 また入所して暫くして、車椅子に乗せられるようになった。そこで足のマッサージを毎月入れた。ただこのマッサージ業者は、老人ホームへの交通費を目一杯建てて来た。ほかにもサービスを受ける客がいるだろうし、ほかのホームを回ると思えるが、いつも母のためだけに営業所と往復する計算になっていた。それが事実だったかもしれないが、交通費を水増ししているように感じた。他方、亡くなる直前になったが、口腔を綺麗にする歯医者の予約を毎月入れることにした。8年前のことだが、この口腔ケアはもっと早く気が付けばよかった。ホームでは、おそらく朝晩のケアはあった。ただどこまで丁寧にしてくれていたかは今や不明だ。母は入れ歯が合わなくなって久しかったので、口腔の衛生は大事だったが気が回らなかった。こちらも歯医者がホームで往診してくれたが、マッサージ業者とは異なり交通費は全く建てられていなかった。
 老人ホームに母が入っている間、ついつい自分がホームに通う時間を作り出すことが、自分しかできない親孝行のように思いこむところが私にはあった。というのは、行ったときには、私なら母を補助して歩かせることができた。体の小さな姉はそれができなかった。私にはホームが介護の都合で母を車椅子に載せたことはわかっていた。しかし介助すればまだ歩ける。その歩く時間を大事にしたかったので、確かに通ったこと自体に意味はあった。しかしできなかったことの反省が残る。


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