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徒然考察#1【ディズニー】エンタメ帝王ディズニーがこれからどこへ向かうのか?

ウォルト・ディズニー・カンパニー。
言わずと知れた、世界で最も有名なネズミ ”ミッキーマウス” を創出したウォルト・ディズニーの会社です。
皆さんは、「最近のディズニー どう思います?」
この問は、問われるヒトによって、まったく異なる”答え”が帰ってきます。

「ディズニーランド、最近入場料高くなって、あまり好きではなくなった」
「インサイドヘッド2、最高だったよね。」
「エミー賞受賞した、SHOGUN だけ見たくて、ディズニープラス入った。」
「あいつらに買収されてから、俺たちのスターウォーズが、なくなった。」
「MCU、最近ダメだよね。一時期の勢いが全然ない。」
などなど。

どれも、【ディズニー】なんですよね。
そう、どこまでも巨大化するエンターテイメント帝国。
ディズニーについて、僕なりに徒然に考察してみたいと思います。

ウォルト・ディズニー 

ウォルト・ディズニー。偉人です。
米国イリノイ州、アイルランド系移民、ユニオン・パシフィック鉄道員の子供として生まれています。
第一次世界大戦への従軍をしたのち、漫画家を目指しますが、その後にアニメーションと出会い魅了されます。
彼にはアニメーターとして素晴らしい素養があった。
アニメ制作会社 Laugh-O-Gram Studio社を立上げます。残念ながら経営面で上手くいきかず倒産。しかし夢をあきらめず、映画産業の中心ハリウッドへ居を移します。
兄、ロイとともに、ディズニー・ブラザーズ・カートゥン・スタジオを立ち上げます。ここで、ミッキーマウスの原型となる”オズワルド”という黒いウサギのキャラクターを主人公にしたアニメを、ユニバーサル配給で製作し、興行を成功させます。
しかし、この”オズワルド”が、契約でユニバーサルのIPとなってしまい、加えて、ユニバーサルから多くの優秀なアニメーターを引き抜かれ、倒産寸前になります。
そこで、ウォルトが考え出したのが、”オズワルド”の敵役のねずみ。
これを主人公にすることを思いつきます。
そう我らが”ミッキーマウス”の誕生です!
そして、ミッキーマウスの映画「蒸気船ウィリー」が大ヒットします。
ディズニーランド好きの方は、ミッキー・ハウスの中の映画館でかかっているフィルム映像でご存じではないでしょうか。口笛吹きながら蒸気船を操縦するミッキー。
この”ミッキーマウス”の声、初期はなんとウォルトが演じてました。あの独特の声は、ウォルトがひねり出した声だったんですね。

ここら辺の流れ、とても面白いですよね。
起業家精神で立ち上げた会社のヒット商品(IP)を、大手に契約で奪われてしまうが、そこから新たな商品にピボットして、それが大ヒットする。

ディズニーランド 鉄道マニアの夢からはじまった。

ウォルト・ディズニーは、このアニメ映画の成功をうけて、テーマパーク建設を企画します。元々、子供と遊園地に行った時、自分はいまいち楽しくなかった。そこで”大人も楽しめる遊園地”をつくりたいと思ったそうです。

ここも面白いですよね。はじめから、ディズニーランドは”大人向け”だった。だから、老若男女が何度も訪れるコンセプトが貫かれている。

もう一つ、ウォルトの拘りがありました。
広大な敷地で、”自分の鉄道を走らせたい!!”
ウォルトの当時のオレンジカウンティにある自宅は、とても広い敷地の中に、ウォルトが乗って走ることができる、蒸気機関の鉄道模型がありました。
近隣の住民も招いて、その鉄道に乗せて走らせて楽しんでいた。
しかもどんどん線路を延長していく。トンネルもつくる。奥さんの大切にしていた花壇も壊す。(これには奥さんも激怒したそうです)
ウォルトは、もっと線路を延長したいという欲求に駆られます。

そう、ディズニーランドの名物「ウェスタンリバー鉄道」!
ディズーランド、ウォルトが最も大切にしていたのは、「ウェスタンリバー鉄道」なんです。
乗車されたコトがある方はご存じだと思いますが、あの列車、本気の蒸気機関で動いています。僕もあの本気度には驚きました。何故そこまでする?
多分、本物の蒸気機関だということを、多くのゲストはきっと気付いていません。
そのモチベーションの理由が、ウォルトの鉄道マニアにあります。
当時のウォルトの自宅の鉄道は「キャロルウッド・パシフィック鉄道」と銘打たれていました。お父さんの鉄道へのオマージュだったんです。

ディズニーランド建設はそんなウォルトの夢を乗せてスタートします。
建設地をカルフォルニア州のアナハイムに土地購入をします。
しかし、建設費用がメチャクチャかかります。
当時、アニメで成功をしていましたが、建設費用を賄う意味とプロモーション両方をかねて、ABC放送で「ディズニーランド」という自身が出演する番組をスタートします。

これ、今のスタートアップ起業家が、動画配信系メディアで自身のビジネスを紹介するのに似ていますよね。

ディズニーランドのオープン時は米国では生中継もするほどの話題だったそうです。中継はなんと、ロナルド・レーガン元大統領。勿論俳優時代です。
そして、ディズニーランドは大成功をおさめます。

しかし、ウォルトは、アナハイムの広さには不満でした。もっと拡張したい。しかし、ランド周辺に、マンションなど様々な投資が行われ、拡張ができなかった。

結果、広大な敷地がある、フロリダ・オーランドに目を付けます。
そう、「ディズニーワールド」建設です。
しかし、ココ湿地帯だった。ワニとか普通に住んでいる。
ココをとんでもない費用で、土木工事を行います。いや、都市建設です。
敷地面積はほぼ山手線全周と同規模。
この頃のウォルトは、都市の理想像をこのオーランドで実現したかった。1964年に開催されたニューヨーク万博にディズニーはパビリオン出展をするのですが、このコンセプトを、EPCOT=実験的未来都市。として、ディズニーワールドで実現をします。
このEPCOTは、将にミニ万博のようで、世界の民族文化を建築え具現化して都市を作っています。
僕もディズニーワールドは一度訪れたことがありますが、本当に広大!
全部を堪能するには、一か月くらいかかるのではと思います。
本当に”都市”。移動はモノレール。敷地の殆どは自然林と川がひろがり、そこに6つのパークが点在しています。
また、来訪してみたい!

ディズニーアニメ 驚異の”白雪姫”から凋落、復活へ。

「ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ」
ここが、ディズニーのアニメーションの総本山です。
「蒸気船ウィリー」の成功の後、テクニカラーで製作された「シリー・シンフォニー・シリーズ」、音楽とアニメが融合した作品を制作します。
そして、1938年、名作「白雪姫」が誕生します。
世界初の長編アニメ映画です。
この映像、一度見ていただきたいのですが、今でも手書きで滑らかな動きは、驚異的です。この作品で多くの優秀なアニメータが育成されます。
興行的にも大成功。当時で800万ドル、今のドル換算では1.5億ドル。
この成功の後、「ピノキオ」でアカデミー賞を受賞、ミッキーと音楽が融合する「ファンダジア」、これもアカデミー名誉賞受賞。
これらを支えたのが、「ナイン・オールドメン」と言われる、伝説的アニメーターです。彼らがアニメーターを育成し、アニメ黄金期を支えます。
この後、第二次大戦に突入する米国。
ディズニー社も長編アニメから離れますが、1948年、「シンデレラ」で復活します。その後、「不思議の国アリス」、「ピーター・パン」、「わんわん物語」が公開されます。
その後、60年代~80年代まで長く、停滞期に入ります。
その中でもクリエイターは育っていきます。そこがディズニーの凄み。
1985年「コルドロン」、これ私も未見でまったくヒットしなかった。
しかし、この製作陣が凄い。ピクサーCCOジョン・ラセター、「Mrインクレディブル」、「ミッションインポッシブル3」監督のブラッド・バード、そして「ナイトメーア・ビフォア・クリスマス」、「シザーハンズ」、「アリスインワンダーランド」のティム・バートン。

この停滞期の抜け出すのが、1989年「リトルマーメイド」。
ここでミュージカルアニメーションとうジャンルを作り上げます。
これを支えたのが、新しいスタジオ「ウォルト・ディズニー・フィーチャー・アニメーション・フロリダ」。ここで、ピクサーが作ったCGをアニメ制作の技術を取り込むチャンレンジが行われます。
この手法が更に発展し、名作「美女と野獣」に結実、アカデミー作品賞受賞します。その後「アラジン」、「ライオンキング」と興行的にも大ヒット作が続いていきます。

しかし、その後また衰退期が訪れます。
「ヘラクレス」、「ムーラン」とギリシア、中国と世界観を広げるとともにマーケットを広げる試みをしますが興行的に失敗。
一方、ドリームワークス「シュレック」、ピクサー映画など、CGアニメーションが成功します。この頃、手書きのアニメーターのコスト上昇し製作費が売上に見合わなくなる状況が発生し、次第に赤字体質へと転落します。

その後、2005年、ボブ・アイガーが、会長兼CEOとなり立て直しを図ります。

コンテンツ・コングロマリットへの野望

ボブ・アイガー この人はCEOにつくまでに3つのビジョンをたてていました。
①良質なコンネンツの充実
②テクノロジーの最大限の活用
③真のグローバル企業となる

この3つのビジョンをもとに、コンテンツ・コングロマリットへの道を爆走します。

まず、ディズニーの大黒柱、アニメーション部門の立て直しです。
ディズニー・フィーチャー・アニメーションの社長とチーフクリエイティブオフィサーCCOに、最高のアニメ作家・ジョン・ラセターを据えます。
ラセターは、宮崎駿を師と仰ぎ、アニメの本質を理解するクエイター。
彼が主導して、アニメーション部門の文化・体質改善が図られます。
経営層主導ではなく、”クリエイター主導なスタジオ”へと文化・体質を変革します。
クリエイティブにおいても、手書きとCGの適切な融合をはかります。
そして「ボルト」「プリンセスと魔法のキス」とスマッシュヒットを飛ばし、大ヒット作 2010年「塔の上のラプンツェル」、2013年「アナと雪の女王」に結実します。

次にCGアニメスタジオ ピクサー買収。
スティーブ・ジョブズがトップを務めており、買収交渉を開始します。アイガーとジョブズの間には信頼関係がありました。
ボブ・アイガーは、コンテンツ保有する個人との関係性を重視して買収交渉を行います。
結果、74億ドルの買収を成功させます。
そして生まれたのが、「トイ・ストーリー3」。CGアニメの傑作です。
その後も、コンスタントに良作を出し、近年では、「インサイドヘッド」という大傑作を輩出しています。

次に狙う”良質なコンテンツ”は、、”マーベルスタジオ”。
ディズニーの世界観を、米国の歴史的ヒーロー譚のマーベル・ユニバースへ拡張を始めます。

マーベルスタジオ買収

MARVEL STUDIO
DCと並ぶ、米国コミック文化の代表格。
今でこそ有名な「アイアン・マン」ですが、08年に公開された時は、キャラクターとしてもマイナーで、「スパイダーマン」や、DCの「スーパーマン」、「バットマン」のほうが、圧倒的に有名でした。
それが、いまや「MCU=マーベル・ユニバース」という一大叙事詩となり、映画のひとつのジャンルに近い地位まで上り詰め、逆にDCが苦戦をしており、08年前の状況から大きく変化しました。

アイガーが買収を始めるのは、この「アイアンマン」が公開された直後の2009年です。当時43億ドルの買収。これは驚きです。
当時の状況はスマッシュヒットした「アイアンマン」はありましたが、今のMCUの姿はありませんでした。
確かに、マーベル・コミックスとしてのIPはあるのですが、映画権でいえば、「スパイダーマン」はソニーピクチャーズ、「Xマン」は20世紀FOX。つまり、既に人気のあるコンテンツは他社が権利保有している。
残るIPでいえば、当時まだ映画としては未知数の、キャプテンアメリカ、マイティソー、ブラックパンサー、などです。
つまり、アイガーは、マーベルIPの可能性に掛けた。
そして、ディズニーという世界観の拡張、つまり顧客の拡大を図ります。
結果は皆さんのご存じの通り、大成功です。

ここからは私の推察も入りますのでご容赦ください。
いきなり、メジャーIPで権利もややこしい、「スパイダーマン」に着手せず、権利コンセンサスが容易い、「アイアンマン2」からスタートします。
その後、「マイティソー」、「キャプテンアメリカ」という、MCUビック3と呼称されるIPを映画化。ソーは、英国の名監督ケネスブラナーが担当して、ギリシア神話・悲劇的なテイスト。キャプテンアメリカは、戦争英雄映画のテイスト。しっかり映画化で目指すジャンルを決めている。
これが僕は秀逸だと思います。単なるコミックの映画化ではなく、今までの映画ジャンルの歴史を、ヒーロー譚として再構築している。

そして、”ユニバース”。

これは、コンテンツ産業の中の”発明”です。
今では、様々なエンターテイメント・コンテンツで、この”ユニバース”化が起こっています。DCユニバース、シン・ユニバース。
単独作品が、他の作品と同じ世界観の中で展開することで、より大きな物語になる。観客は、作品を観るほどに、その世界観に没入する。
そのコンセプトは、2012年「アベンジャーズ」に結実します。
今まで単独作品だった、アイアンマン、ソー、キャプテンアメリカ、ハルク、そこに新たなキャラクターであるブラックウィドー、ホークアイが加わり”アッセンブル”する。
僕も当時映画館で鑑賞して、メチャクチャ盛り上がりました。昔からキャラクターに馴染みのある米国ではそれ以上だったと容易に想像がつきます。
結果、大ヒットです。

その後、過去の映画ジャンルを再構築するように拡張をしていきます。
SFと70年代ポップス映画「ガーディアンズオブギャラクシー」
人生リスタート映画「アントマン」
ポリティックスサスペンス映画「キャプテンアメリカ シビルウォー」
魔法使い映画「ドクターストレンジ」

そしてこの後、ディズニー映画の方向性を決定的にするコンテンツが登場します。

2018年「ブラックパンサー」

2010年代、米国で黒人人権問題が”再燃します。
頻発する白人警官による黒人への不当な暴力。これがブラックライブスマター”運動として盛り上がりを見せ、社会問題としてクローズアップされておりました。
この背景の中で、監督ライアン・クーグラをはじめ、出演者、製作スタッフが黒人で製作されたのが、「ブラックパンサー」。
米国ヒーロー映画の歴史では画期的で、しかも大ヒットします。
サウンドトラックも、ラッパーの頂点、”ケンドリック・ラマー”が全曲担当し、このアルバムも大ヒット。一種のムーブメントになります。
今まで映画コンテンツの常識を覆し、白人至上主義ではなく、多様な民族的文脈のコンテンツが商業的に成功する、というファクト認識を業界に与えます。

この成功を受けて、マーベル・ユニバースは、文化的多様性を目指します。
女性差別をヒーロー譚で読み解く「キャプテン・マーベル」
アジア移民とアイディンティを描く「シャン・チー」
神話的な民族多様性の物語「エターナルズ」
メソアメリカの神話を描く「ワカンダ・フォー・エバー」

これらのクリエイティブを統括するのが、ケビン・ファイギ。
彼がこの世界観を構築して、全体をまるでシンフォニーのように指揮します。結果、バラバラであるような物語がひとつのユニバースに統合されている。

そのひとつの到達点が、18・19年「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー/エンドゲーム」。
11年間に渡って製作を続けてきたユニバースが、この2作品に紡がれているのは圧巻です。そして興行収入もケタ外れの数字をタタキだします。

ルーカスフィルム買収

ディズニーは世界観の拡張を留めません。

アメリカ合衆国は、歴史的に壮大な実験国家と言われます。
英国での宗教改革に押される形で、キリスト教ピューリタントが新天地での世界構築を目指して、北米大陸にやってきます。
そして、世界でも最速でジョン・ロックの社会契約説を取り込み、生存・自由・幸福の追求を唱えた、1776年独立宣言を行います。
その精神により、労働市場が加速し、資本主義を勃興させて、今の国家隆盛に繋がります。
しかし、その隆盛のウラ側では、ネイティブアメリカンを虐げ、騙し、土地や権利を獲得した黒歴史があります。
米国は国家としての歴史がたった250年弱。過去から連続する歴史がなく、民話・説話・神話がありません。

国民国家を支える、文化的土壌が極めて浅い。
その根無し草のような精神を支えたのが、西部開拓のフロンティアスピリットとアメリカンドリーム。誰もがチャンスを掴める。
しかし、60年代に起こったベトナム戦争の敗戦で、この精神支柱が崩れます。50年代の楽天的なアメリカが、傷つき疲弊する。
そこに70年代現れたのが、西海岸のヒッピームーブメント。その精神支柱は、オリエンタル的神秘主義。禅やヨガが、麻薬とセットで流行します。

そこに、ジョセフキャンベルの神話構造を持ち、オリエンタルな精神世界をもった、スペースオペラ映画が爆誕します。

1977年「スターウォーズ」!

若き創造主ジョージ・ルーカスが、低予算で作ったこの映画が、米国のサブカルチャーに与えた影響は絶大でした。神話的構造、禅、などの思想が盛り込まれ、当時のヒッピー文化とリンクしました。

その後、Ⅴ「帝国の逆襲」Ⅵ「ジェダイの帰還」で3部作が完結し、時を経て00年代にプリクエルと呼称させる、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲが、ジョージ・ルーカスの独立資本!で製作されます。
このシリーズは、映画史上最高製作金額のインディペンデント映画と呼ばれています。ルーカスが配給会社20世紀フォックスに一切口を出させないための独裁制を敷くために、自分の製作会社ルーカスフィルムで金を出しました。
スターウォーズは、映画興行収入も巨大ですが、それ以上に関連するキャラクターグッズ利益やIP利益が巨額です。
これを全て、ルーカスフィルムが取得します。

この、ルーカスフィルムを、ディズニーが2012年40億ドルで買収を行います。すごいなボブ・アイガー。

ルーカスフィルムのIPには、スターウォーズ以外にも、「インディ・ジョーンズ」もあります。加えて、ILM=インドストリアル・ライト&マジック、というスターウォーズ製作で培った特殊効果技術を持った映画界有数のエンジニアリング集団とその多様な技術を保有しています。

このIP、アセット、キャラクターグッズなどの販売収益を獲得し、新しいスターウォーズシリーズ製作に乗り出します。

これを統括するのがキャスリーン・ケネディ。
このヒトは、スティーブン・スピルバーグの助手としてキャリアをスタートして、スピルバーグとルーカスの共同製作「レイダース」に製作として参加しております。長くスピールバーグともに仕事をし、12年ルーカス・フィルムの社長就任しております。

彼女は思想的に”ポリティカル・コレクトネス”への意識が非常に高く、そこは直近のディズニーの思想との相性が良い。
特に、スターウォーズが男女格差があると主張しております。
結果、ディズニー資本で製作された2015年スターウォーズⅦ「フォースの覚醒」は、主人公を、イギリス女優デイジー・リドリーが演じます。また主要メンバーの一人は、黒人俳優ジョン・ボイエガが演じます。
17年Ⅷ「最後のジェダイ」では、シリーズ初のアジア女優ケリー・マリー・トランが重要な役柄を演じます。
一気に性別・民族的多様性が広がり、19年Ⅸ「スカイウォーカーの夜明け」で新3部作は幕を閉じます。

動画配信「ディズニー+」への拡大

さあ、ディズニーアニメ、ピクサー、MCU、スターウォーズ、まさにコンテンツ・コングロマリットが完成したディズニー。
次にボブ・アイガーが目指したのが、動画配信です。

2019年「ディズニー+」がスタートします。

保有したコンテンツに加えて、ナショナルジオグラフィック、20世紀フォックス、サーチライト・ピクチャーズなどの配給映画、スターチャンネルの配信コンテンツも加わります。

この動画配信と合わせて、MCU、スターウォーズのオリジナルドラマシリーズが企画されます。
巨大なファンダムがいる両コンテンツで、一気に動画配信契約に誘因する戦略です。

MCUでは、映画よりも更に尖ったジャンル設定がなされています。
50年代風のアメリカ・シットコム劇「ワンダ&ビジョン」
米国の政治的分断を指摘した「ファリコン&ウィンターソルジャー」
キャンセルカルチャーを批判した「ロキ」
パキスタン分離独立の歴史を素地にした「ミズ・マーベル」
リアルとフィクションの第三の壁を超える「シー・ハルク」
概ね鑑賞しましたが、確かにどれも尖ってます。

スターウォーズでは、素晴らしいクリエーターが出現します。

デイブ・フィローニ。
スターウォーズのアニメシリーズ「クローンウォーズ」「反乱者たち」のクリイエター、プロデューサーを務めてました。
彼がそのクリエイティブで名声を得る作品「マンダロリアン」。
スターウォーズ世界で、惑星マンドロアから生まれた賞金稼ぎ。
彼が、ある経緯で、ヨーダと同じ種族の幼い子供グログーを助け、一緒に旅をするという、完全に日本の"子連れ狼”のスターウォーズ版。

この作品が、キャサリーン・ケネディが主導した新3部作よりも圧倒的にファンの「これぞ、スターウォーズだ」と支持を得て、大人気となります。
他にも、「アソーカ」「オビワン・ケノービ」「キャシアン・アンドー」などの映画キャラクターフォーカスしたスピンオフドラマが製作されます。

事業スタート時の契約数目論見は、2024年までに9000万人契約でした。
20年のコロナ禍もあり、自宅での動画視聴もあり、結果2024年第二四半期には、1億5000万人。当初目論見からすると大きく伸ばしました。そして事業収支では、初めて5億ドルの黒字に転換しております。しかし、競合するネットフリックスの伸びには届いないようです。

ここでひとつ、凄いトピックが現れました。
「SHOGUN」です。真田広之さんがプロデューサーを務め、日本人の演者、文化、史実を忠実に再現して、24年度のエミー賞を総なめしました。
これ、日本文化コンテンツとしては歴史的快挙レベルです。
そもそも、米国では英語以外の言語コンテンツは受け入れらない、というのが常識でした。米国の映画館でかかる他国作品はすべて英語吹替がデフォルトです。
それが、動画配信で日本語のコンテンツが大ヒット。
これは、動画配信が、コンテンツの国境を無効化し、字幕で見る文化をコロナ禍で米国に浸透させた結果と考察されています。

行き過ぎたポリコレと軌道修正

MCU、スターウォーズ で見てきたように、民族的・文化的多様性をディズニーのコンテンツは推し進めてきております。
ディズニー実写映画でも、「リトルマーメイド」の主役アリエルが黒人女性俳優となり、話題になりました。

ディズニーがポリティカル・コレクトネスを重視した背景は、ウォルト・ディズニー・カンパニーのミッション「世界中の人々を楽しませ、知的好奇心を満たし、ひらめきと感動をお届けする」に依拠しています。
加えて、ボブアイガーのビジョン、"真のグローバル企業になる"に根ざしています。

米国文化からスタートしたディズニーが、欧州、日本、アジア、中国と、コンテンツ提供領域を拡大に伴い、その世界観が白人至上主義的では、共感性が低いこと、そして世界全体が多様性に対する倫理観が上がっていることを鑑みて、その世界観をアップデートした結果が、ポリコレ重視となりました。

一方、観客からは、”行き過ぎたポリコレ”を指摘されるようになります。

これは僕の理解ですが、民族的・文化的多様性が否定されているのでなく、物語としての必然になっておらず、多様性自体が目的化しているコトが、批判されているように思えます。
「SHOGUN」のように、その国に本物の文化・習俗をリスペクトする認知の変容は現れております。
要は、民族的・文化的多様性が、物語の中で必然性があり魅力的に描かれているのかが、大切なのではと思います。

ディズニーに、2020年に退任したボブ・アイガーが22年に戻ってきました。23年のインタビューでは、「キャラクターがメッセージ性に偏りすぎ、エンターテイメントの基本に立ち戻る」といった発言をしております。

MCUでは作品を連発しすぎて、「MCU疲れ」というワードがファンの間で囁かれていました。興行的にもエンドゲーム移行、下降線でした。
ここで、MCUの作品製作体制が見直され、作品の量よりも、ストーリーの質に拘った方向へ舵を切られました。

最新のMCU作品「デッドプール&ウルヴァリン」。
デッドプールは、R指定の過激なジョークにあふれたマーベルコミックスのヒーロー映画で、20世紀フォックス資本で2作品製作されました。
3作目、初のディズニー資本でのマーベルスタジオ映画として製作されました。
公開前、ファンの間では、ディズニーのポリコレ重視では、あの過激なジョークは抑制されてしまうのでは、囁かれておりました。
公開されると、その内容は前作にも増して、過激で下品なジョークで溢れており、僕も劇場で過去最高に大笑いしました。
そして、20世紀フォックスで製作されたメジャーコンテンツ「Xマン」の人気キャラクター・ウルヴァリンの登場。
今までのディズニーMCUの流れからは、間違いなく変化点となった一作で、しかもとても高評価。これからのコンテンツに期待が持てる流れです。

最後に

長文になってしまいました。
ディズニー。改めて記述してみて、やはり凄い企業です。
その起点が、ウォルトディズニーという一人の情熱です。
その情熱、夢に触発されてヒトが集まる。
そこから出てくるアウトプットが本気であればあるほど、それに触発されるヒトが出てくる。その中に次世代を担う人材が生まれる。
夢が紡ぎ続けられ、バトンが渡されていく。
時代の価値観に合わせて、コンテンツは変わっていくけど、そこから生まれる笑い、感動、夢、希望へのヒトの欲求は変わらない。
そんな感想を持ちました。

初めて、10000字を超えました。
ここまで駄文にお付き合い頂き、本当に感謝です。
再訪をお待ちしております。




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