自ら進んで営業の道へ
初めて建築に興味を抱いたのは中学生時代。
そしてそのまま高校から大学の建築学科へと進み、就職活動を経て住宅会社での内定を頂いたのだが、建築士がすべてだとは考えたことがなかった。
建築士はただの国家資格であり、国家資格だけでご飯は食べられない。国家資格を存分に活かすことのできる人間力や営業力こそが、自分の人生において必要スキルなのだと。
そう考えた結果、内定を頂いていた住宅会社の人事部に連絡し、すでに決定していた設計部門から営業部門へと仕事の場を変更して頂いた。この柔軟なご対応を頂いた会社こそが、今の自分の根っこを作ってくださったのだと20数年経った今でも感謝している。
そして約7年の営業部門での修行を終え、設計部門へと異動となったのが30歳を迎えた年だった。現在45歳にしてたった15年しか設計経験のない、いわゆる遅咲きの建築士のデビューとなった記念すべき年である。
こちらが処女作となった物件のレストルームである。
設計者として右も左もわからないまま、少ない時間ではあったが無心で考えたレストルーム。壁と天井の納まりは底目地とし、サッシの位置と高さに拘り、人造大理石カウンターと造作家具のカラーバランスを何度も検証し、エコカラットの割付を完璧にするために数㎜空間を狭くする、などなど様々な検証を行った。
この際にいくつかの失敗も経験できた。
間接照明の光の強さや左右バランスによる光のラインが強すぎ、造作家具を開閉した際の便器との扉の接触、など。
この経験が自分のスタートだった。