【毎週ショートショートnote】最後のマスカラ
「やば、マスカラ切れてた!」
化粧をしていた洋子が大声をあげた。
「タクちゃん、買ってきて」
「どれ買えばいいか分からないよ」
「コレ持ってって」
空き容器を渡された。
「洋子はマスカラなんか使わなくても充分綺麗だよ」
「くだらないこと言ってないで早く行ってきて?」
真顔で言われて超怖かった。
午後から映画に行く予定だが、あまり時間がない。近所のドラッグストアまで走った。
「コレと同じヤツください」
店員に空き容器を渡した。
「あー人気のヤツですね。お待ちください……1個だけ残ってました!」
「ソレください!」
急いで帰宅して洋子に渡す。
「ありがと」
間に合うかな、映画。
「何コレ!」
洋子を見ると片方のまつげがオレンジ色だった。
「なんでオレンジ色?」
「最後の1個だったんだよ」
でも。
「意外と似合うよ。もう片方も塗ってみて……ほら、意外と似合う!かわいい」
グフッ。
「意外と意外とうるさいよ」
腹を殴られたが、洋子は笑顔だった。
映画は間に合いそうだ。
(410文字)
※こちらの企画に参加させていただきました
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