春とどうでもいい男達 #シロクマ文芸部
「春と風」と聞いて鼻がムズムズしていたところに、目の前の男の間抜け面を見たら弛緩してくしゃみが出た。
くしゃみの飛沫をモロに顔に浴びた男は怒って、私の鼻にジャブを放つ振りをしたが、ジャブは私の鼻にクリーンヒット。
鼻血が出た。
こうなるともう止まらない。
私は鼻血を垂れ流しながら男に抱きつこうとした。
男は一瞬ひるんだが、後ろ回し蹴りで私の右太ももを蹴った。私はバランスを失い、うつ伏せに倒れる。よせばいいのに素早く回転して男との距離を取って立ち上がると、鼻血を大量に吹き出して頭がクラクラ。
男は冷静に私の左足にローキックを決め、私は崩れ落ちた。
少しずつサイレンの音が近づいてくる。
「おい!警察呼ばれたぞ」
私は倒れたまま、男に声をかけた。
「お前が鼻血出すから」
「鼻を殴っておいて何を言う」
「鼻、弱過ぎだろ。くしゃみしやがって」
パトカーが目の前に止まった。
「何やってんだ、お前達!喧嘩はやめろ」
「してません」
私達はユニゾンで答えた。
「血を流して殴り合っていると通報があったぞ」
「殴り合ってません。鼻血は予定外でした」
引き続き、ユニゾンで答える私達。
「予定外?なんなんだ、お前達は」
「友達です」
「……署まで同行願えますか?あ、先に鼻血止めてもらえますか?パトカー汚れるんで」
「コイツが悪いんですよ、鼻殴るから」
「あ、コイツが俺の顔に向かってくしゃみしたんです。腹立つでしょう?」
警官が「私はどっちでもいいです」というので、私達は黙ってパトカーに乗った。
車中、ダメ元で「私達、いつもこうなんですよ」とハモってみたが、警官はもう返事をしなかった。
(665文字)
※シロクマ文芸部に参加しています
今回のお題、私には難しかったです😓