洞窟の奥はお子様ランチ #毎週ショートショートnote
今度ばかりは駄目かもしれない。
これまで幾多の秘境に挑み、どんな窮地に陥っても何とか乗り越えてきた。いつしか冒険王と呼ばれるようになって慢心していたのだろう。いま私は充分な食糧も持たずに洞窟の奥深くまで入り込み、空腹で意識朦朧となっていた。
「冒険王?冒険王じゃありませんか?」
誰かの声がする。
目の前に小太りの男がいた。
冒険王が腹ペコで死にかけていることなど、人に知られてはならない。
「人違いだ。何か食べるものはないか?」
「ありますよ。お子様ランチでいいですか?」
「お子様ランチ?何でもいい!少し分けてくれ!」
「こちらへどうぞ」
小太りの男に案内されると、石でできたテーブルの上にお子様ランチがあり、湯気がたちのぼっていた。
もう我慢できない!
あっという間にお子様ランチを平らげてしまった。
「おいしかったー!」
「ハッハッハ、では私の依頼を受けてもらいましょうか、冒険王」
子供の姿に変わってしまった私は、依頼を受けるしかなかった。
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※こちらの企画に参加させていただきました