【毎週ショートショートnote】告白水平線
母親がうるさく言うのでお見合いすることにしたのだけど、いい人に巡り逢えたかも。
年も近いし、話も合うし、お給料もいいみたいだし、今のところ言うことなし。
3回目のデート、どこに行こうかって彼と話していたら「見せたい物があるからウチに来ない?」だって。
少し早い気がしたけどOKした。
見せたい物って何だろう。
当日、彼の家に行ったらホームシアターのある部屋に通された。見せたい物って映画かな?
「気に入ってもらえるといいけど」
彼がデッキの再生ボタンを押す。
スクリーンに映像が映し出された。
水平線に向かって男がひたすらボートを漕いでいる。ただ延々と。それだけの映像。
ボートを漕ぐ音がいいリズム過ぎて、身を任せていると何度も気を失いそうになる。
コレ、ヤバい、寝る、絶対。
「どう?これを観せるの、結衣さんが初めてなんだ」
「な、なんか嬉しい」
「僕ね、好きな人とこの映像を一日中眺めるのが夢だったんだよ」
気のせいか、水平線が少し歪んで見えた。
(410文字)
※こちらの企画に参加させていただきました
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