深煎り入学式 #毎週ショートショートnote
ちょっと遠くの国の、ちょっと昔の話。
珈琲好きの三兄弟がいた。
どのくらい好きかと言うと、珈琲の神様がご褒美をあげたくなるほどだった。
「お前たち、明日は入学式なんだろ?俺が思い出に残る入学式にしてやるよ」
「やったー!どんなやつ?」
一番下のオチョイが神様に聞いた。
「お前は小さいから浅煎りだ」
オチョイが入学式に行くと、かわいい女の子に出会って甘酸っぱい恋をした。
次は次男のチチョイの番。
「オチョイと同じのがいい。アイツ、ニヤニヤしてた」
「そうはいかない。お前は中煎りだよ」
チチョイが入学式に行くと、かわいい女の子と友達になった。
最後は長男のハチョイの番。
「神様、俺のはどんなの?」
「深煎りだよ。大人になりな」
ハチョイが入学式に行くと、ずっと好きだった女の子が同じ学校に入学していた。告白しようと校門で待っていると、その子はハチョイが大嫌いな幼馴染と笑いながらやってきて、手を繋いで帰って行った。
「いやいや、俺の苦過ぎるだろ!」
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※こちらの企画に参加させていただきました