【毎週ショートショートnote】カフェ4分33秒
大学の近くに新しいカフェがオープンしていたので行ってみることにした。
「いらっしゃいませ。あら、白井先生じゃないですか?」
「どこかでお会いしましたか?」
「10年ほど前にピアノ専攻にいた宮田です」
「ああ、宮田さん!申し訳ない。見違えるほど素敵な女性になっていたので」
「もう先生ったらお上手ですね」
「ピアノはやめてしまったのかな」
「趣味で細々と続けています。いまは夫とこのカフェを」
「そうか。幸せそうで良かった」
「メニューをどうぞ」
「ありがとう……この『4分33秒』というのはジョン・ケージの?」
「はい、そうです。面白いでしょう?」
「2,000円は高いが頼んでみるかな」
「ありがとうございます。お待ちください」
宮田さんがコーヒーカップを持って戻ってきた。
「お待たせしました。ごゆっくりお楽しみください」
コーヒーカップの中身は空っぽだった。
どういうこと?
『4分33秒』だから?
何を味わえばいい?
宮田さんは綺麗な顔で微笑んでいた。
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※こちらの企画に参加させていただきました