ソフトウェア開発の見積りはどうするの?(IPAソフトウェア調査3)
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ソフトウェア開発の見積りは?
ソフトウェア開発の見積りはどのようにするのでしょうか。どうすれば発注元に納得してもらえるのでしょうか。
IPAの調査「2023年度ソフトウェア開発に関するアンケート調査」(*) によれば、1社が複数の見積りを採用しています。どのような見積りを複数採用しているのかを見ていきます。
(*) この調査は2023年12月から2024年1月にかけて、私が担当していたアンケート調査です。
なお今年度も実施中(2024年度ソフトウェア動向調査、1/31まで)です。
見積りはいろいろ
このIPA調査では会社単位での回答が多く、また複数の見積り方法を採用している回答が多くなっています。また類推法の回答は次節で紹介します。
1位. WBS積算法
IPAの調査によれば、一番多いのがWBS積算法(ボトムアップ見積法、積上法)で483件、全体の2/3(66%)が採用しています。
このようにWBS積算法が一番多くなっています。これは使い勝手のいい見積りと言えます。
しかしWBSの詳細を求められたり、作業削減の代わりに値引きを求めたりされると悩んでしまう見積り方法です。
2位. ファンクションポイント法(FP)
二番目に多いのがファンクションポイント法(FP)で287件、全体の4割(39%)が採用しています。
意外にも多かった見積り方法です。3位のSLOCとほぼ同じように採用されています。
しかし簡易的なFP、たとえば画面数や帳票数、機能数だけでの簡易的なものを採用しているものが多いかもしれません。
3位. ソースコード行数(SLOC)
次に多いのがソースコード行数(SLOC)による見積りで251件、全体の1/3(34%)が採用しています。
案外、この見積り方法が少ないという感想です。プロジェクトの生産性や信頼性を評価するときには多く使われているSLOCですが見積りには一定程度しか使われていません。
4位. 価値・パフォーマンス
価値・パフォーマンスに基づく見積りは238件、全体の1/3(32%)が採用しています。
これが本来的な見積り方法です。
少ないように思えますが、実は意外と多かったというのが私の感想です。
これはアンケート調査の複数選択肢にあったので、本来的な見積り方法として、(実際にどうかは置いておいて)選択したかもしれません(個人の感想です)。
5位. ストリーポイント(SP)
アジャイル開発(スクラム)のストリーポイント(SP)による見積りは148件、全体の2割(20%)が採用しています。
アジャイル開発の割合が60%(ソフトウェア開発はアジャイル?それともウォーターフォール?参照)であるのと比較して、この見積り方法が20%と少ないというのが気になります。
たぶんWBSがアジャイルでも結局は最強です。たぶん。
0位. 類推法
類似の開発プロジェクトをベースに見積りを行う類推法は529件、全体の72%となり、1位のWBS積算法よりも多くなっています。
しかし類推法は単独の見積り方法というよりも、他の方法と組み合わせて、類似システムの見積りをカスタマイズするという方法です。このため、ランキングの審査から外しました。
でも多く使われています。説得力があります。実は陰の実力者です。
ということで今日辺りの結論「見積りは説得力」以上です。