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JEITA/JAIST北陸セミナー2024「DXとソフトウェアデファインド」(3) ソフトウェアデファインド(SD)とは

2024年9月20日開催の「JEITA/JAIST北陸セミナー2024」で講演した「ソフトウェアデファインドともうひとつのDX」を紹介していきます。
今回は前回のDXの次の章となる「ソフトウェアデファインド(SD)とは」です。
前節:(2) DXとは 次節:(4) DXとSDの関係


ソフトウェアデファインド(SD)とは

ソフトウェアデファインド(SD)とは

ここでは「ソフトウェアデファインド(Software Defined, SD)」の紹介をします。SDは最近、流行っている概念です。それがどんなものかを見ていくことにします。

SDの定義

SDの定義

ソフトウェアデファインド(SD)とは、「対象となる機能をソフトウェアで定義する」ことです。メカやエレキのハードウェアを部品として使い、これらの部品の機能を組み合わせ、これらの個々の機能をソフトウェアで制御することで、全体の機能を定義するものです。

これにより、対象の機能だけでなく、その使われ方も含んだエコシステム全体をソフトウェアで価値を定義することができます。ソフトウェアでエコシステムの価値を定義することがSDの眼目になります。

狭義のSD

もともとのSDの意味は、自動車やネットワーク、コンピュータなどの物理的対象の主要な機能をソフトウェアで定義するものでした。そしてこれが、世間一般で言われているソフトウェアデファインドです。

従来はメカやエレキのハードウェアで機能を定義し、その拡張部分をソフトウェアで作り込んでいました。それを主従逆転させ、ハードウェアを部品としてソフトウェアが主となって、全体の機能を定義することを目的としています。

例えば、自動車を対象にしたSDV(Software Defined Vehicle)では自動車のハードウェアの機能を定義するだけでなく、運転や交通を含むエコシステム全体の価値を定義することになります。

ここでの一言は「SDは物理的対象だけでなくエコシステムの価値を定義する」になります。

もちろん、これは理想的なSDであり、そうなっていない途中のものもありますが、徐々にソフトウェアの比重が増してきています。今後もさらにソフトウェアが重要になってくるでしょう。

広義のSD

狭義の物理的対象のSDを、物理的対象から組織や社会まで広げた広義のSDがあります。広義のSDではソフトウェアの基本的な考え方である「柔軟さ」や「アジリティ」で、従来の凝り固まった組織の運用や社会そのものを変革し、柔軟な組織やSDGsなどの新しい社会へ移行することを目指します。

SDの概要と利点

SDの概要と利点

上記の図は前節で紹介したSDの概要を図示化したものです。狭義のSDでは物理的対象にし、広義のSDでは組織や社会を対象にしています。SDの手段はソフトウェアでデータを制御することで、これによって対象の機能や価値そのものをソフトウェアで定義します。

SDの利点は、従来のハードウェアや固定化された規則や運用でなく、ソフトウェアや柔軟な運用で、対象の機能や価値を定義することで得られる柔軟さやその結果から来るアジリティの高さにあります。

SDの対象

ソフトウェアデファインドの対象

ここではソフトウェアデファインドの対象を見ていきます。SDのレベル1としては、物理的対象として自動車やそのエコシステムである交通サービスを対象にしたSDV(Software Defined Vehicle)やコンピュータネットワークを対象にしたSDN(Software Defined Network)、コンピュータシステムを対象にしたSDC(Software Defined Computing)、ストレージを対象にしSDS(Software Defined Storage)など色々なものがあります。

広義のSDであるレベル2のSDは単体の組織を対象にするSDとなります。会社を対象にするSDC(Software Defined Company)や行政組織を対象にしたSDG(Software Defined Goverment)などがあります。

SDのレベル3は、対象が単体の組織でなく、社会や私たちの生活を対象にする広い概念になります。これには社会を対象にしたSDS(Software Defined Society)や日常生活を対象にしたSDL(Software Defined Life)などがあります。

これらの対象をひとまとめにしたものをSDx(Software Defined x)と記述しています。しかし一般的にはSDxと言えば、物理的対象にしたレベル1のものを指しますので文脈に注意して読んでください。

狭義のSDの例

狭義のSDの例

前節で名前を挙げた狭義の例を上図で説明しています。繰り返しになりますが、SDVは単に自動車のハードウェアをソフトウェアで代替するだけでなく、移動手段としての自動車を含む交通システムのエコシステム全体をソフトウェアで定義するものです。これにより交通システムの価値をユーザに提供できることになります。

この他のSDxも同様で物理的対象だけでなくエコシステムを再定義することがポイントになっています。

狭義のSDの利点と欠点

狭義のSDの利点と課題

狭義のSDの利点は、柔軟な対応早期リリース、これらによるアジリティの向上があります。機能やサービスを柔軟に、状況によって臨機応変に対応でき、ユーザに早期に価値を提供できます。例えば、障害があってもOTA(On The Air)の機能により、ソフトウェアによって早期に修正可能です。

一報、SDの欠点は利点の裏返しになりますが、たとえば、柔軟さを間違えて、中途半端に未完成品をリリースすることが欠点として挙げられます。そしてこれによって、SDは中途半端だという悪評が広まってしまうことがあります。「後で修正すればいい」という考えは危険です。

この利点と欠点を理解して、SDを進めていきましょう。そしてこの考えを組織や社会にも適用できるようにしていきましょう。きっと明るい未来が待っています。たぶん。

・・・という結んで「SDとは」の章は終わることになりました。ここまでありがとうございました。

参考:
JEITA/JAIST北陸セミナー2024 中小製造業のDXとソフトウェアデファインド

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