JEITA/JAIST北陸セミナー2024「DXとソフトウェアデファインド」(4) DXとSDの関係
2024年9月20日開催の「JEITA/JAIST北陸セミナー2024」で講演した「ソフトウェアデファインドともうひとつのDX」を紹介していきます。
今回は前々回のDXと前回のSDの関係です。
前節:(3)SDとは 次節:(5) SDとDXの参考事例
もうひとつのDXと鍵になるSD
今回は前々回で紹介したDXと前回で紹介したソフトウェアデファインド(SD)との関係を紹介します。SDはDX推進の鍵となる考えです。それを以降でみていくことにします。
DXとSDの関係
DXはデジタル技術によって対象を変革することです。一方、SDはソフトウェアで対象の機能や価値を定義することです。この両者は類似している点が多くあり、また逆に異なる点もあります。
DXの鍵となるのはデジタルデータであり、それを制御するのはデジタル技術であり、その中心はソフトウェアです。SDはソフトウェアが中心であり、そのソフトウェアでデジタルデータを制御するのが役目です。これらの点で両者は類似しています。
さらに両社は、デジタル技術による変革とソフトウェアで定義する変革と言う点と、ともに価値を創出または増加させるという点でも、類似しています。
一方、DXではデジタル技術で変革という点と、SDでソフトウェアで定義という点では、デジタル技術とソフトウェアのように主客をどのように置くかで異なっていますが、これは定義や解釈の範囲内の違いとも言えます。
またDXは変革こそが本筋であることを明示していますが、一方、SDではソフトウェアで定義するという従来のハードウェア定義の世界からは変革になっていますが、それを明示していない点と、変革の適用範囲が制限されているという点で異なっています。
ここではDXを主体的に扱いますので、「SDはDXの一手段」という結論にしたいと思います。もちろんこれは恣意が入っています。
DXとSDの合わせ技
DX推進手段のひとつとしてSDを導入する利点は多くあります。たとえばデータはDX推進の鍵になりますが、このデータを効果的に処理するためにSDが有効です。SDであれば対象のデータを柔軟に効率よく処理することができます。まさにソフトウェアが強い武器にできるものです。
DXで製品やサービスに新しい価値を付加するのが大きな眼目のひとつですが、SDでは柔軟に製品やサービスの機能を定義でき、これによって新しい価値を定義し創造することができます。
DXは変革が本筋ですが、SDはソフトウェア中心になることであり、ソフトウェアの柔軟な性質により、変革がしやすく、変革が起こりやすくなっています。
DXの変革は通常では多大な投資コストが必要になりますが、SDによりソフトウェアで対象の機能を定義すれば(定義できれば)、変革のコスト自身は低下するでしょう。これはハードウェアで制御するよりもソフトウェアで制御する方が低コストになることからです。
そして一番大事なことは、DXもSDも結果的にアジリティに繋がります。DXでアジリティは大きな武器になりますが、SDによりそれが実現できます。これはハードウェアよりもソフトウェアの方がアジリティ的に優れているからです。
SDによるもうひとつのDX
もうひとつのDXである消極的DX推進、その多くは予算が少ないであろう中小企業のDXでは、このSDが受け入れられやすいものです。SDでは対象をソフトウェアで定義してしまえば、低コストで変更が可能になります。また少しずつ変更することも可能で、これは受け入れにくい変革レベルではなく、受け入れられやすい改良、カイゼンレベルの変更ができます。
これらはDXの本筋である変革ではありませんが、もうひとつのDXでは受け入れられやすいものです。現実的なものになります。
しかしSDはそうではありません。SDはソフトウェアだから低コストだと思われいますが、実際には初期コストは高くなります。SDではハードウェアの変更が必要になり、これがコスト高の原因になります。
SDは少しずつ変更していことが可能で改良レベルの運用が可能だと思われていますが、最初にソフトウェアで製品やサービスを定義することは大変革になります。この後は改良レベルかもしれませんが、最初は大変革になります。
しかしこれを逆に考えて、SDが低コストで改良レベルだと思われていることを利用して、まずはSDで進めて、実際に多大な投資コストと大変革をすることになっても後戻りできないようにするというのがあります。きっとこれがもうひとつのDXで正解になります。きっと。
・・・という本音も入れて「もうひとつのDXと鍵になるSD」の章は終わることになりました。ここまでありがとうございました。